おうち時間に楽しもう! ”非認知能力”を育てるアナログゲーム遊び 成長編
『子どもと育ち研究所』主任研究員・宍戸信子さんインタビュー 第1回
2021.02.20
子どもと育ち研究所・主任研究員:宍戸 信子
「非認知能力」とは「生きる力」
まずは「非認知能力」とはどんな力のことなのか教えてください。
「”非認知能力”とは、人とやりとりすることで身につくコミュニケーション能力や、くじけそうなときに立ち戻る忍耐力、思いやり、自分を好きになる自己肯定感や向上心といった、遊びや自然との関わりで育まれる”生きる力”のことです。最近では学習などで得られる”認知能力”よりも前に”非認知能力”を育むことが必要だと言われていて、世界中の幼児教育の現場から注目を集めています」
早い段階から読み書きをはじめようとするお父さん、お母さんは多いと思うのですが、学習とはまた違った経験で身につく力なのですね。
「もちろん、テストの点数などで測ることができる”認知能力”も、お子さんのためには必要です。多くの親は「賢い、頭のいい子になってほしい」と思われていると思います。ただ”認知能力”だけがあれば賢くなれるのかというとそうではありません。”認知能力”をどう使っていくかを決める力が”非認知能力”なので、特に小さなお子さんは遊びを通して”非認知能力”を伸ばすことが大切なのです」
大切なのは遊びの世界で失敗すること
”非認知能力”を伸ばすためにはどのような遊びがよいのでしょうか?
「私がおススメしたいのがアナログゲームです。遊びの世界では成果を自分で決めることができます。「もっとこうなりたい」と何度も挑戦することもできれば、「もういいや」と諦めてしまうことも自由。負けたことが悔しくてゲームを投げつけてしまったとしても、遊びの中でなら許されます。こうした失敗が許される世界のなかで、ワガママを言っても大丈夫だということや、失敗してもリカバリーできることを経験し、めげない心が育っていくのです」
失敗して悔しくて泣くといったように、感情を発散させる機会も大切ですよね。
「そうですね。失敗する中で、「これは恥ずかしい」、「これはいやだ」、「これはしてはいけない」ということを学び、自制心も身についていきます。また、その学びから「もっと上手になるにはどうすればいいのか」と考えるようになり、向上心や問題を解決する力が育っていくのです」
デジタルゲームとアナログゲームには大きな違いがある
アナログゲームで遊ばせたいと思いつつも、身近にあるデジタルゲームをついやらせてしまったというパパママも多いと思います。デジタルゲームとアナログゲームとの違いはどんなところにあるのでしょうか?
「多くのデジタルゲームの場合、自分が動くのではなく、ボタンを押したことによって画面が動きます。その”ボタンを押す”という1の力に対して、起こる展開や得られる情報量がとても多いですよね。対してアナログゲームは、自分で動かした分の展開と情報量しかありません。
たとえばすごろくだったら、コマをひとつ進めるとひとつしか進めない。コマを置くときも、2歳くらいの子はそっと置けずに転がってしまうけれど、5歳くらいになるときちんと置けるようになっていきます。こうして自分の手を動かさないと何も起こらないのが、デジタルゲームとアナログゲームの大きな違いです。
また細かく多くのパーツで構成されているアナログゲームの場合は、パーツをなくさないように管理しないといけませんし、片づけも大変です。この片付けも自分で手を動かす体験のひとつ。”非認知能力”として身についていきます」
片づけに関しても、親や兄弟・姉妹などと一緒にやることで”非認知能力”が育まれていくんですね。
「片付けも競争したりすると楽しいし、早く終わりますよね。人と関わってルールのなかで勝敗を競うところが”非認知能力”を伸ばす大きなポイントなんです。デジタルゲームの場合、遊んでいるときに画面の中のゲームの世界は自分の顔色を伺ってくれません。ですが、アナログゲームは遊ぶ相手が顔色を伺いながらペースに合わせてくれることもあります。
ただし、勝ち負けがかかると自分の予想外のことをされることだってありますよね。成長につれて、相手にも都合や思い、考えがあるということに気づいていく。そうやって他者と関わることによって、さまざまな感情が引き出されて社会性が身についていきます。ポイントは大人も一緒に遊んで楽しむことです」
大人と一緒に遊ぶことがどうして大切なのか、一緒に遊ぶときにはどうしたらいいのか。大人が一緒に遊ぶときに気をつけていただきたいことについて、遊び方編でお聞きします。
取材・文 石本真樹
宍戸 信子
『子どもと育ち総合研究所』主任研究員。京都府生まれ。平安女学院短期大学保育科卒業。幼稚園教諭・保育士。幼稚園教諭として保育に没頭後、辻井正氏の主宰する「おもちゃライブラリー」での障害児療育活動やおもちゃによる保育活動、ヨーロッパの保育との出会いを通して、保育・幼児教育を学び直す。ピラミッドメソッド・ティーチャーとチューターの両資格獲得。2002年~2003年、オーストリアのオルフ研究所にて、「創造的な音と動き―オルフ教育」のインターナショナルコースに参加。「子ども・遊び・保育素材」「幼児期の保育・教育とは」「音・動き・造形-創造的な表現活動」などを研究・実践する。さらに現在は、保育・教育現場から依頼される様々なテーマに対しての研修や保護者や福祉の支援者などへの働きかけ、遊びを使ってのワークショップなども務める。
『子どもと育ち総合研究所』主任研究員。京都府生まれ。平安女学院短期大学保育科卒業。幼稚園教諭・保育士。幼稚園教諭として保育に没頭後、辻井正氏の主宰する「おもちゃライブラリー」での障害児療育活動やおもちゃによる保育活動、ヨーロッパの保育との出会いを通して、保育・幼児教育を学び直す。ピラミッドメソッド・ティーチャーとチューターの両資格獲得。2002年~2003年、オーストリアのオルフ研究所にて、「創造的な音と動き―オルフ教育」のインターナショナルコースに参加。「子ども・遊び・保育素材」「幼児期の保育・教育とは」「音・動き・造形-創造的な表現活動」などを研究・実践する。さらに現在は、保育・教育現場から依頼される様々なテーマに対しての研修や保護者や福祉の支援者などへの働きかけ、遊びを使ってのワークショップなども務める。