おもちゃに義足や養蜂!? 「ダイバーシティトイズ」は共生社会をめざす

おもちゃ業界が育む「ジェンダーフリー」と「ダイバーシティ」#3

ライター:遠藤 るりこ

これからの時代のおもちゃのあり方

この3記事で取材協力頂いた6社に、改めてこれからのおもちゃのあり方や考えについてうかがいました。

おもちゃの持つべきニーズは、昔も今も変わらないものだとバービーのマテル社・今泉さんは言います。

「おもちゃの持つ役割は、子どもの健やかな成長、五感の発達、知育、情操教育、身体的な成長をサポートしていくことです。それは、海外も日本も同じで、ずっと変わらない部分だと考えています。ただ、多様性の高まりやICT教育の普及といった時代とともに変化していく部分もありますよね。

そういった時代の変化を企業としてうまくとらえ、変わる部分と変わらない部分を、バランスをとりながらミックスし、世の中におもちゃを通じてメッセージを発信し、子どもたちの健やかな成長に貢献していきたいと思います」(マテル社・今泉さん)

ねじハピを発売しているピープル株式会社(以下ピープル社)では、子どもの発達の過程にある「ジェンダー観の芽生え」について、これからも見守っていきたいと話してくれました。

「おもちゃは小さいうちからのジェンダー観について、子どもに多くの影響を与えるものだと考えます。子どもたちが自分の好きなおもちゃで遊べるような環境づくり、いろいろな選択肢を作ってあげることについて、もっと知見を深めて取り組んでいけたらと思います」(ピープル社・川端麻美さん)

メルちゃんを発売する株式会社パイロットコーポレーション(以下パイロット社)は、「お人形遊びは、時代を反映し変化し続けていくもの」だと語ります。

「実際の人間のコミュニケーションに似た遊びである人形遊びは、子どもにとって小さな社会活動です。この人形遊びという場で、子どもはもちろん、大人である私たちも多様性について学び、一緒に取り組んでいく必要があると感じます」(パイロット社・土井菜摘子さん)

シルバニアファミリーの株式会社エポック社(以下エポック社)が特に重要だと感じるのは、「子どもたちの遊び方を大人目線で規定しすぎないこと」だと、言います。

「今から2〜30年後の社会を作るのは今の子どもたちです。その子どもたちにダイレクトにメッセージを伝えられるのは、ほかでもないおもちゃだと思います。

おもちゃ業界が子どもたちの将来に影響を及ぼす力を考えると、2〜30年後を見据えた取り組みを今からしていくことが重要なのではないかな、と考えています」(エポック社・岩崎さん)

オリジナルのほか、海外のおもちゃの輸入代理店でもあるボーネルンド社の西山さんによると、ここ数年、世界的に地球環境に配慮した素材で作られたおもちゃが増えているようです。

「デンマークの『I’m green』シリーズは、原料に農薬不使用のサトウキビ・バイオプラスチックを使用しています。こういった素材のおもちゃは、遊びながら子どもたちに環境の大切さを伝えるきっかけにもなると考えています。

購入する親御さんたちも、未来の地球環境のことや、そこで働く人々の労働環境にまで配慮したエシカルなものを選びたいという視点を持った方が増えています」(ボーネルンド社・西山さん)

また、レゴⓇブロックには、環境保護を自然と学べるような工夫をした商品もあり、レゴジャパンの「SDGs」に対する意識も伺えます。

「フレンズたちの遊びの舞台となるハートレイク・シティは、持続可能な都市を建設し続けています。ツリーハウスには風力発電のエレベーターなどが登場します。

また、持続可能な暮らしを実現するために、ハチを育ててハチミツを集めたりする養蜂のセットが入っています。子どもたちが自然と多様性や環境保護に対しての意識を高めることができるのです」(レゴジャパン・橋本さん)

レゴⓇフレンズシリーズの「レゴⓇフレンズ フレンドシップ ツリーハウス」では、ツリーハウスを通して風力発電や養蜂を知ることができる。 写真提供:レゴジャパン

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
人生のスタート時期である子ども時代に触れるおもちゃ。子どものために、どのようなおもちゃを選び、手に取るのか。

その選択ひとつが、未来の社会のさまざまな課題を解決する、小さな糸口となるかもしれません。

取材・文/遠藤るりこ


《取材協力》
マテル・インターナショナル株式会社
ピープル株式会社
株式会社パイロットコーポレーション
株式会社エポック社
株式会社ボーネルンド
レゴジャパン株式会社

※多様性で変わるおもちゃ最新事情は全3回です。
#2 バービーやシルバニアファミリーが「性別の役割から解放」されたワケ
#1 人気「ジェンダーフリーおもちゃ」で女の子もDIY! 大人の固定概念を覆す

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えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe