「子どもの爪嚙み」頻度より大事なのは「いつ嚙んでいるのか」を知ること

小児科医・ふらいと先生「子どもはなぜ爪を嚙むの?」 #2 爪嚙みへの親の寄り添い方

新生児医・小児科医:今西 洋介

子どもを観察することで、爪を嚙んでしまう原因が見えてくると今西先生は言いますが……。  写真:アフロ

「ふらいと先生」の名でTwitterのフォロワー13万人以上の、新生児医・小児科医の今西洋介先生に聞く「子どもの爪嚙み」。

1回目では、「親が過度に気にしすぎず、見守ることが大事」とお話しいただきました。ただ、それはもちろん何もせずに放っておいていいということではありません。

2回目では、子どもの爪嚙みへの寄り添い方について。家庭内で親がすべきこと、また受診が必要か否かのチェックポイントもお聞きしました。


(全3回の2回目。1回目を読む

新生児医・小児科医
今西洋介(いまにし・ようすけ)

新生児科医・小児科医、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師を務めた。
SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会問題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。
Twitter(@doctor_nw)のフォロワー数は13.2万人。

子どもが爪を嚙んでいるタイミングを知ること

──前回では、爪嚙みは成長とともに治ることが多いため、親は見守っていても大丈夫とお話しされていました。

しかし、見守ると言っても、何もせずに放っておくこととは違うと思います。親がすべき本来の「見守り」とは、具体的にはどういうことでしょうか?

今西洋介先生(以下、今西先生):まずは、子どもがどういうタイミングで爪を嚙んでいるのか、その子の行動の特性を理解することが大事です。頻度よりも、いつ爪を嚙んでいるのかを観察してみてください。

よくあるのが、算数など苦手な勉強をやっているときや、気が進まない習い事の前に嚙んでいる、など。親御さんには噛んでしまっている、そのパターンを見極めてほしいですね。

──実際パターンに気づいたとき、どう対処すればいいのでしょうか? 爪を嚙んでいるからと言って、勉強をやめるわけにはいかないですし……。

今西先生:勉強をやめさせるのは現実的ではありませんが、習い事なら本当にやりたいと思っているのか、話し合うきっかけにしてもいいのかもしれませんね。

ただ基本的には、前回お話しましたとおり、出血などがなければ過度に反応する必要はありません。「苦手なものがあるときに、爪を嚙む子なんだ」と、親御さんが気づいてあげていることが重要です。

──我が子の状況や個性をきちんと知っておくことが大事ということですね。

今西先生:親御さんが「爪嚙みを早くやめさせたい」と思う気持ちもわかりますが、「やめなさい!」と𠮟ると、逆に子どもが緊張して、余計に悪化することもあります。無理やりやめさせようとするのはあまりおすすめできませんね。

受診の目安は爪嚙み以外の行動がある場合

──前回のお話では、出血等がなければ受診は必要ないということでしたが、それ以外で受診したほうがいいチェックポイントはありますか?

今西先生:最も注意して見てほしいのは、爪嚙み以外の行動が出ていないかどうかです。爪嚙み単独なら特に問題はありませんが、「神経性習癖」というのはチックや歯軋り、夜驚症、睡眠障害など他の症状を合併することが多いです。

逆に言えば、チックがある子に爪嚙みが出ることが多いので、まずはチックや夜驚症がないかをチェックすることが重要です。

他にも症状があるのに爪嚙みだけを熱心にやめさせたとしても、他の症状が悪化してしまうというケースもあります。

──たとえば、爪嚙みしか症状がないとして、無理やりやめさせたことで何かしら他の症状が出る可能性も高いのでしょうか。

今西先生:その可能性はあります。結局、症状だけを無くしたとしてもストレスの元がなくならない限り、何かしらの形で症状が出てしまいます。

症状だけにフォーカスするのではなく、親御さんはストレスに一緒に向き合ってあげること。こういうときに心理的負担を感じやすいんだなと知っておき、そのストレスに親がどう対処してあげるかが重要です。

──ちなみに、そういうときの受診先はどこが相応しいのでしょうか?

今西先生:小児科でよいかと思います。外科は傷の治療は得意ですが心理的アプローチには長けていません。

まずは小児科で、チックや夜驚症などがないか、心理的なアプローチが必要かどうかを判断してもらってください。

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子どもがなぜ爪を嚙んでいるのか、その原因を発見して、理解してあげることが重要だとわかりました。

そして、見逃してはいけないのは、爪嚙み以外の症状です。爪嚙みだけにフォーカスせず、子どもの状態を広い目で見極めるのが必要と言えるでしょう。

3回目では爪嚙みをやめさせる実践方法について、引き続き今西先生にお聞きします。

取材・文/宇野安紀子

子どもの爪嚙み連載は全3回。
1回目を読む。
3回目を読む。
(3回目公開日は2023年6月24日公開。公開日までURLのリンク無効)

いまにし ようすけ

今西 洋介

Yosuke Imanishi
小児科医・新生児科医

小児科医・新生児科医、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師を努めた。 NICUで新生児医療を行う傍ら、ヘルスプロモーションの会社を起業し、公衆衛生学の社会人大学院生として母親に関する疫学研究を行う。 SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会問題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。趣味はNBA観戦。 最新著書『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社) Twitterのフォロワー数は14万人。 Twitter @doctor_nw

小児科医・新生児科医、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師を努めた。 NICUで新生児医療を行う傍ら、ヘルスプロモーションの会社を起業し、公衆衛生学の社会人大学院生として母親に関する疫学研究を行う。 SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会問題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。趣味はNBA観戦。 最新著書『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社) Twitterのフォロワー数は14万人。 Twitter @doctor_nw