子どもに公共の場で静かにしてほしいときや、パパやママが家事をしたいときなど、スマホで動画を見せて乗り切ったという経験はありませんか? 乳幼児にスマホを見せるときの注意点について、20年以上にわたる子育て相談の実績がある、臨床心理士の帆足暁子さんに解説してもらいました。
公共の場ではよく言い聞かせてから見せること
乳幼児は周囲の状況や親の都合に関係なく、泣いたり騒いだりするもの。困ったときにスマホで動画を見せたりアプリで遊ばせたりすると、静かにしてくれて助かりますよね。ただ、その是非については、「公共の場」と「家庭」をわけて考えましょう。
まず、電車やレストラン、病院の待合室などの公共の場は、周囲の人に対する配慮が必要です。今は昔のように「子どもは泣くのが仕事よ」「お互い様だから」という認識が低く、子どもが騒げば親は肩身の狭い思いをしがちです。今の時代性を考えると、公共の場では親子も周囲の人も嫌な思いをしなくて済むように、スマホを見せて静かにしてもらうのが現実的な方法でしょう。
見せるときは「電車の中は静かにしていなくちゃいけないから、特別にスマホを見せるよ」と、子どもが0歳でも、事情をしっかり言い聞かせてから見せてください。子どもが理解して自ら静かにできるようになるのはまだ先ですが、毎回言い聞かせることがとても大切です。
家庭では極力スマホを見せない
一方、家庭ではできるだけスマホを子どもに見せないでほしいと思います。
スマホは視覚や聴覚にどんどん楽しい刺激を与えてくれるもの。スマホを日常的に見ている子はその魅力に引き込まれ、動画などをずっと見続けるようになります。そして、親も「興味を持っていて楽しそう」と、その状況を容認しがちです。しかし、それは決してよいことではありません。
スマホのコンテンツは刺激的なので、親とコミュニケーションするよりも、子どもにとって魅力的なのです。言葉はコミュニケーションツールなので、「言葉でコミュニケーションしたい」という意欲が高まらないと言葉の習得は進みません。「最近は子どもの言葉の発達が遅くなってきている」という報告もあり、スマホなどとの因果関係が疑われています。
また、日常的にスマホを見せることで依存症になる心配もあります。私が受けた相談でも、依存が強くなって1歳後半でスマホを「見せて!」と騒ぐ子や、2〜3歳で1時間以上泣き叫ぶ子もいました。
依存傾向が見られたら「肯定的無視」を
子どもにスマホへの依存傾向が見られたら、親は早めに対処しましょう。
「スマホが見たい」と泣いたり騒いだりしても、絶対に根負けしてはいけません。このときに見せてしまうと、子どもは「泣き続ければ必ず自分の思い通りになる」と学習してしまいます。「子どもが泣くと、親が折れる」というのは、「子どもが命令し、親が従う」ということ。親子関係の逆転であり、親子関係の崩壊を意味します。さらにこの状態が続くと、「泣いてダメなときは暴れる」ようになることも。
親が根負けしないためには、子どもにやってほしくない行動を理解してもらう「肯定的無視」が有効です。
子どもを叱るのではなく、シンプルに「今日は、スマホはダメだよ」と伝えたら、子どもが落ち着く時間を作るために、親はその場を少し離れましょう。気持ちを切り替えやすくなるように、「じゃあ公園に行こうか」などと誘ってもOK。それで「行かない!」と泣き続けるなら、「残念だな。じゃあ行く気になったらママに教えてね」と伝え、ママはフラットに過ごしましょう。子ども自身が「泣いてもムダだ」と気づいて諦めるのを待つのです。