“発達特性のある新1年生“のトラブル 親が学校と協力する方法を専門家が解説

発達障害の専門家が語る「発達特性のある子どもの小1プロブレム」#3~学校との協力体制の作り方~

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

子どもの言動に困り果ててしまったら、ぜひ支援のプロに相談を。発達障害の診断を受けていなくても、頼れる人はたくさんいます。  写真:アフロ

保育園・幼稚園を無事卒業し、春にめでたく小学1年生になったわが子。ところが新学期早々から教室に入れない、他の児童とトラブルを起こす等々、次々と困りごとが起こることもあります。中には、入学後のトラブルで初めて発達障害を疑うこともあります。

トラブルが起きたとき、親は学校にどう協力を求めたらよいのか。

先生(学校)との関係の作り方を、具体例を交えながら、療育の専門家で言語聴覚士・社会福祉士の原哲也さんに教えてもらいました。

※第3回/全3回(#1#2を読む)

原哲也(はら・てつや)PROFILE
言語聴覚士・社会福祉士。一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。1966年生まれ。国内外の障害児施設などで勤務後、2015年「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立・これまでに5000件以上の相談に対応。

療育の制度や手続き、進学や就職の見通しまで、発達障害の子育てに必要な情報を1冊にした原哲也さんの著書『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)。  Zoom取材にて

宿題でつまずいたら先生に交渉を

発達障害にはさまざまな特性があり、代表的なものとしては、コミュニケーションが苦手、強いこだわり、落ち着きのなさなどがあります。また、特定の感覚に対する感覚過敏などを伴うことも多くあります。

これからお話することは、いわゆる「グレーゾーン」の子どもにも、発達障害の診断を受けている子どもにもいえることです。

私が関わってきた発達特性のある子どもは、入学後、さまざまなことでつまずきます。

例えば宿題。
発達特性のある子どもは、「宿題をやらなきゃ」とはわかっていても、きょうだいがやるゲームの音、テレビ画面からの視覚刺激、両親の話し声など、さまざまな環境刺激に反応し、やる気がそがれてしまう。

そうした場合は、極力、静かで気が散らない部屋で宿題をやらせます。それも、おやつを食べたら宿題をしてその後にテレビを見るなど、【場所・時間・行動】を固定するとよいですね。このように親が対策を取るのはとても大事なことです。

それでもできない場合、宿題の量や難易度に問題がある可能性があります。大人にとっては「わずかな量」にしか見えなくても、子どもにとっては「多すぎる量」かもしれないのです。

そんなときは、先生に交渉するのも一案です。

その子ができる最小限の量にしてもらえないかと頼んでみる。またいくら量が減っても難しすぎたらできないので、その子が簡単にできるところから始めてほしいとお願いします。そうして、がんばったらできたという達成感と、ほめてもらえるという喜びを、子どもに実感させてあげましょう。

そもそも子どもはただでさえ学校でストレスを抱えています。帰宅して家でも宿題のことで親子喧嘩をしていたら、息を抜く場所がありません。

学校の先生が、好ましくない関わりをしたために子どもが困った状態になったり、パニックを起こすこともあります。以下の3例はいずれも私が保育所等訪問支援で学校に行き、目にした1年生の姿です。

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