「子どもの喘息」喘息の原因や受診・注意すべきポイントは? 原因を専門医がくわしく解説

アレルギー専門医・南部光彦先生に聞く「子どもの喘息」 前編 ~喘息の原因と受診のタイミング~

小児科専門医・アレルギー専門医:南部 光彦

呼吸困難を見極めるポイント

──喘息の症状が悪化するとどうなりますか。

南部先生:喘息では、咳や「ゼーゼー、ヒューヒュー」と鳴る呼吸の症状が出て、さらに悪化すると呼吸困難に陥ることがあります。そのためお子さんの状態を見極めることが重要です。

まず、喘息の発作が出ると、呼吸が苦しくなります。息は吸えるけれども吐きにくい状態になるため、いつもよりも息を吐く時間が長くなります。そして息を吐くときに「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった音が鳴ります。呼吸数も多くなり、普段は1分間に30回程度の呼吸が、50~60回程度に増えます。さらに症状が悪化すると呼吸困難になるので、注意が必要です。

──呼吸困難の状態の見分け方はありますか?

南部先生:呼吸をするときに、みぞおちがへこんでいるかどうかを見てください。陥没呼吸といって、呼吸が苦しくなると息を吸うときにみぞおちがへこみます。

同じように、肋骨と肋骨の間、喉仏の下などもへこむので、そこで呼吸の状態を確認することができます。他にも、鼻を膨らませて呼吸をしていたり、肩を大きく上下させながら呼吸をしていたりする様子があれば、呼吸困難の可能性があります。

──子どもの呼吸の状態を確認することが重要なのですね。

南部先生:子どもの背中に耳を当ててみると、呼吸時に「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった音が鳴っているのが聞こえることがあります。かろうじて聞こえていたのが、耳を当てなくても聞こえるようになれば、それは喘息の状態が悪化しているということです。

また、呼吸の状態を把握することに加えて、お子さんの様子を観察してください。ごはんが食べられない、水分が摂れない、横になって眠れない、話ができない、遊べないなど、日常生活で普段できているはずのことができない状態であれば、かなり体がつらい状態です。

動き回っていれば安心にも思えますが、かえって気管支を刺激し、一気に症状が悪くなることもあります。その前に状態を見極めて、医療機関を受診しましょう。

呼吸困難の症状が出たとき

──夜中に呼吸が「ゼーゼー」していたり、咳が続いたりする場合は、医療機関を受診したほうがよいでしょうか。

南部先生:もし呼吸困難の症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。平日の日中であれば、かかりつけの病院やクリニックへ。土日や夜間であれば休日対応の診療所へ。ご自身で判断できない場合は、「#8000」に電話をかけると、受診が必要かどうか、どの医療機関を受診すればよいかを聞くことができます。

「#8000」に連絡する際には、陥没呼吸があるか、呼吸数は増えているか、吐く時間が長くなっているか、といったポイントを伝えると、より正確に判断してもらえると思います。呼吸困難の症状が強い場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。

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次回後編では、喘息の検査や治療法、家庭での対策について、引き続き南部先生に伺います。

取材・文/安藤梢

子どもの喘息は全2回。
後編を読む。
(※後編は2024年5月22日公開。公開日までリンク無効)

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なんぶ みつひこ

南部 光彦

Mitsuhiko Nanbu
小児科専門医・アレルギー専門医

なんぶ小児科アレルギー科 院長。小児科専門医・アレルギー専門医。 京都大学医学部を卒業後、京都大学医学部附属病院、兵庫県立塚口病院(現・兵庫県立尼崎総合医療センター)の小児科に勤務。米国アイオワ大学への留学を経て、1995年に天理よろづ相談所病院へ。小児科部長、小児アレルギーセンター長を務める。 2017年になんぶ小児科アレルギー科を開設。『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020』の統括委員会委員。 https://nambu-cl.jp/

なんぶ小児科アレルギー科 院長。小児科専門医・アレルギー専門医。 京都大学医学部を卒業後、京都大学医学部附属病院、兵庫県立塚口病院(現・兵庫県立尼崎総合医療センター)の小児科に勤務。米国アイオワ大学への留学を経て、1995年に天理よろづ相談所病院へ。小児科部長、小児アレルギーセンター長を務める。 2017年になんぶ小児科アレルギー科を開設。『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020』の統括委員会委員。 https://nambu-cl.jp/

あんどう こずえ

安藤 梢

Kozue Ando
医療ライター

医療ライター。 病院や医師の取材を中心に、医療系の雑誌、Web、広報誌、企業のオウンドメディアなどで、インタビュー&ライティングを担当。 https://and-kozue.com

医療ライター。 病院や医師の取材を中心に、医療系の雑誌、Web、広報誌、企業のオウンドメディアなどで、インタビュー&ライティングを担当。 https://and-kozue.com