「子どもの近視」が増加中 点眼薬・コンタクトレンズ・光療法… 進行を抑制する4つの最新治療法を専門医が解説

眼科医・五十嵐多恵先生に聞く「子どもの近視」 #3 ~近視の進行を抑制する最新治療~

眼科医:五十嵐 多恵

近視を抑制する最新治療とは?  写真:Hakase/イメージマート
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一度伸びてしまった眼軸は戻ることはありませんが、実は近視の進行を抑制するための治療法は数多く開発されています。

「しかし、残念ながら日本ではすべて自由診療ですが、その効果は海外ですでに実証済みのものも多くあります」とは、東京都立広尾病院眼科医長の五十嵐多恵先生。

子どもの近視連載3回目は、近視の進行抑制の最新治療について、五十嵐先生に教えていただきました。

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近視の進行抑制治療 日本では「自由診療」で受けることが可能

──今回は近視の最新治療についてお聞きしたいと思います。子どもが近視になってしまったら、もう元に戻すことはできないのでしょうか?

五十嵐多恵先生(以下、五十嵐先生):伸びてしまった眼軸を元に戻すことはできないので、近視になってしまった目を治すことはできません。しかし、近視がそれ以上進行するのを防ぐための治療法はさまざまなものが開発されています。

海外では、近視の進行を抑制するために有効だと分かっている治療法がいくつも開発されています。例えば、点眼薬やコンタクトレンズ、光を使った治療法などです。これらはすでに治療実績があって有効性も確認されていますが、残念なことに日本ではそのどれも承認されていません。

つまり、日本で近視の進行抑制治療を受けようと思ったら、現状ではすべて自由診療になってしまいます。ですので、自由診療であるという前提で、4つの効果的な治療法をご紹介したいと思います。

治療①低濃度アトロピン点眼

五十嵐先生:1つ目は、低濃度アトロピン点眼による治療です。これは、世界で最も広く使われている治療法です。アトロピン点眼は、古くから小児の近視進行抑制に有効であることが知られてきましたが、副作用の問題から実際の治療に使うのは難しいと考えられてきました。

しかし、2012年にシンガポールで行われた研究で、1%のアトロピン点眼を100倍に薄めた低濃度(0.01%)点眼で、約60%の近視抑制効果を得ながら、副作用の問題がほぼ解消されることがわかり、一気に注目を浴びるようになったのです。

0.01% 、0.025%、0.05%点眼など、さまざまな濃度のアトロピン点眼があり、どの濃度が最適かは現在研究が進められているところです。

日本でも多くの眼科の病院や診療所で、低濃度アトロピン点眼による近視の進行抑制治療が行われています。日本では承認されていない薬なので、医師が輸入して患者に処方する自由診療です。

使い方は、1日1回、または2回、寝る前などに点眼するというもの。自由診療で行う場合は、低濃度アトロピン点眼薬1本当たり2,500~4,000円が、毎月のお支払いなるかと思います。

ただ、低濃度アトロピン点眼については日本でも薬事承認を得るための臨床試験(治験)が行われているため、早ければ2025年にも国内で承認された薬が出るかもしれません。

治療②オルソケラトロジー

五十嵐先生:オルソケラトロジーとは、角膜矯正用の特殊なハードコンタクトレンズをつけることで角膜上皮を変化させて、近視の進行を抑制する治療法です。夜つけて寝ることで、角膜が変化し、その状態が日中も維持されるので、日中は裸眼で過ごすことができます。

オルソケラトロジーはこれまでの研究によって、日本人では近視進行抑制効果が長期でも30%は期待できるなど、長期の成績と安全性が確認されています。ただし、子どもにオルソケラトロジーを実施する場合は、専門医による慎重な処方が必要です。

オルソケラトロジーも自由診療によって行われている治療法で、先ほどの低濃度アトロピン点眼より費用は高額。初年度はレンズ代や診療費などを含めて15~30万円程度、2年目は検査料などで年間3~6万円程度かかることが多いですね。

治療③多焦点ソフトコンタクトレンズ

五十嵐先生:多焦点ソフトコンタクトレンズは、もともと老眼矯正のための遠近両用コンタクトレンズとして知られています。海外ではすでに子どもの近視進行抑制のためにさまざまな多焦点ソフトコンタクトレンズが開発されていて、有効性が示され始めています。

また、オルソケラトロジーと比べて刺激が少ないことから装着しやすいのが特徴です。ただし、日中に装着するためゴミが入ったときなどに自分で取り外しできるような年齢が対象なので、中学生以上など比較的高い年齢の子どもが対象になっています。

通常のコンタクトレンズと同様、診察自体は保険診療が可能で、コンタクトレンズの費用は6,000~9,000円/月になるかと思います。

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