「子どもの喘息」喘息の原因や受診・注意すべきポイントは? 原因を専門医がくわしく解説
アレルギー専門医・南部光彦先生に聞く「子どもの喘息」 前編 ~喘息の原因と受診のタイミング~
2024.05.21
小児科専門医・アレルギー専門医:南部 光彦
呼吸をするときに「ゼーゼー、ヒューヒュー」と音が鳴る、咳が止まらない、といった喘息の症状。これらの症状は、子どもが風邪を引いたときにもよく見られることから、医療機関を受診したほうがよいのか悩むママパパも多いのではないでしょうか。
特に寒暖差の激しい季節の変わり目は、子どもが体調を崩しやすく、症状が長引く場合も。
そこで今回は、喘息の原因や症状、受診のタイミングについて、なんぶ小児科アレルギー科院長で、アレルギー専門医の南部光彦先生にお聞きしました。
(全2回の前編)
南部 光彦(なんぶ・みつひこ)
なんぶ小児科アレルギー科院長。小児科専門医・アレルギー専門医。京都大学医学部附属病院などを経て、1995年に天理よろづ相談所病院へ。小児科部長、小児アレルギーセンター長を務める。2017年になんぶ小児科アレルギー科を開設。『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020』の統括委員会委員。
喘息の発作が起こる原因は?
──小児喘息とはどのような疾患でしょうか。
南部光彦先生(以下、南部先生):喘息は、呼吸をするときの空気の通り道である気道が狭くなり、呼吸が苦しくなる状態をくり返す疾患です。
喘息になると、気道がさまざまな刺激によって収縮して狭くなります。そのため呼吸時に「ゼーゼー、ヒューヒュー」という音がしたり、症状が悪化すると呼吸困難になったりする場合もあるので注意が必要です。また、咳が出ることも多いです。
──喘息を引き起こす原因について教えてください。
南部先生:喘息発作の原因の一つは、アレルギーの原因物質であるアレルゲンが関係しています。人によって発作を引き起こす物質は異なりますが、主なアレルゲンはダニやペットの毛・フケ、カビなどです。風が強い日には、屋外でアルテルナリアというカビが飛散し、その影響を受けることもあります。
また、頻度は少ないですが、小麦粉などの細かい粉を吸い込んで喘息が出る子どももいます。飛んできた花粉は粒子が大きいので、吸い込んでも鼻や喉に引っかかり、喘息の発作は起きにくいと考えられますが、細かく砕けた花粉を吸い込んで発作が出ることも。
発作の原因には、アレルゲンのほかにも刺激によって引き起こされるものがあります。
刺激物質が起こす喘息発作
──どのような刺激で喘息発作が起こるのでしょうか。
南部先生:タバコや香水、ホルムアルデヒド、排気ガス、黄砂、PM2.5、花火の煙などのような環境中の刺激物質によって喘息発作が起こります。
運動誘発喘息では、冬場にマラソンをしていて症状が出ることがあります。これは急に冷たい空気を吸い込むことで、気道が刺激され発作を誘発するものです。
喘息の人の気道は慢性的な炎症があるため、アレルゲン以外のちょっとした刺激でも敏感に反応し、発作をくり返すのです。
そのほか、子どもが喘息発作を起こすきっかけで最も頻度が高いのは風邪です。インフルエンザウイルスやRSウイルス、ヒトメタニューモウイルスのほか、鼻風邪ウイルスであるライノウイルスでも喘息発作が起こります。
季節の変わり目に喘息発作が出やすいと言われることがありますが、喘息と天候や気圧との因果関係は今のところはっきりとは分かっていません。ただ、季節の変わり目は風邪を引きやすいため、結果的に喘息の発作が起こりやすいと考えられます。
気管支が敏感な体質が喘息を発症しやすい
──喘息を発症するのは、体質によるものでしょうか。
南部先生:喘息を発症しやすい体質はあります。一つは、気管支が敏感な体質。たとえばご両親に喘息がある場合は、お子さんも遺伝的に気管支が敏感であることがあり、ちょっとした刺激に反応しやすくなります。ただ、喘息の発症は、そのほかさまざまな因子の影響も大きいため、両親が喘息でも必ずお子さんが発症するわけではありません。
もう一つはアレルギー体質です。ほとんどの子どもの喘息はアレルギーと関係しています。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎など、他のアレルギー疾患があるお子さんはアレルギー体質であることが多く、喘息にもなりやすいのが特徴です。気管支が敏感な体質とアレルギー体質、両方が影響することが多いです。
成長するにつれて喘息発作が減る
――「成長するにつれて、自然と喘息が治った」ということを聞いたことがあります。
南部先生:アレルギー体質がないお子さんは、成長するにつれて喘息発作を起こさなくなります。乳児期から1~2歳くらいまでの喘息は、多くが風邪などのウイルス感染が原因です。そのため、数日は咳が出たり、呼吸がゼーゼーと苦しくなったりしますが、1週間程度で治まります。
その後、また風邪を引いたときに喘息の症状がくり返されることはありますが、多くの場合は成長とともに喘息の症状は落ち着いていき、3歳くらいでほぼ治ります。そのころになると、身体も強くなり、免疫もできて風邪を引きにくくなるため、自然と治っていくのです。
とはいえ、インフルエンザウイルス、RSウイルス……と、次々に感染症にかかると、喘息の症状が出続けることがあるので、咳が長引いたり、短いスパンでくり返し喘息発作が起こったりする場合は、小児科を受診しましょう。