“マイ・タイムライン”とは、災害が起きたことを想定して、“わたし”が、いつ、どのような行動を行うかを時系列で整理したものです。
「台風が接近しているので災害に備えて!」と言われても、準備をしていなければ何をしていいのかわかりません。
そうならないために、何もまだ起きていないうちに、マイ・タイムラインを作っておきます。いざという時の行動をどうするか、家族を守るためにも、今からできることをやっておきましょう。
マイ・タイムラインリーダーとして、小・中学校やセミナーでマイ・タイムラインの作り方を教えている防災士の堀中里香さんに詳しくお聞きしました。
マイ・タイムラインを作る前に調べよう
「地域のハザードマップ」と「逃げキッド(マイ・タイムライン 検討ツール)」(「作る準備をしよう」編を参照)を準備し、以下の順番で調べていきます。
①住んでいる場所と家庭の状況について確認 ②川の水が氾濫するまでの流れを確認をしていきましょう。
①住んでいる場所と家庭の状況について確認しよう
住んでいる場所を確認しよう
「まず、自分の住んでいる場所が、浸水する危険があるかどうかを確認することから始めます。洪水や氾濫、水害に遭いやすい場所かどうか、地域の状況をよく知ることが重要です」(堀中さん)
ハザードマップを見ながら、“洪水浸水想定区域図”で、自分の住んでいる場所の“浸水深”と“浸水継続時間”を調べます。また、“家屋倒壊等氾濫想定区域”かどうかも確認しましょう。
“浸水深”とは、「洪水や内水氾濫によって、市街地や家屋、田畑が水で覆われることを浸水といい、その深さ(浸水域の地面から水面までの高さ)」(国土交通省)のことをいいます。
“浸水継続時間”とは、「洪水時に避難が困難となる一定の浸水深を上回る時間の目安を示すものである。浸水継続時間の目安となる浸水深は 0.5mを基本とし、この浸水深以上が継続する時間を表示するものとする」(国土交通省)という時間です。
浸水継続時間が長いと、命は助かってもその後そこで生活するのが難しくなります。例えば、キッチンが水没していれば食事が作れませんし、水が使えなければトイレもお風呂もままなりません。浸水してしまった後のことも考えて、安全な場所に避難をするようにしてください。
“家屋倒壊等氾濫想定区域”とは、「家屋の倒壊・流失をもたらすような堤防決壊に伴う激しい氾濫流や河岸侵食が発生することが想定される区域」(国土交通省)のことです。
「ハザードマップに“浸水深”“浸水継続時間” “家屋倒壊等氾濫想定区域”が明記されていない場合もありますが、住んでいる地域が浸水の危険性が少ない場所であるという意味です。しかし、数値は想定された雨量をもとに計算されたもので、昨今の気象の変化による想定外の被害もありますので 、『うちは大丈夫!』と過信しないで、“水の被害”について意識しておくことが大切です」
現在のハザードマップは一級河川の氾濫をメインに作られていますので、中小河川には対応していないものがほとんどです(2021年2月に中小河川でもハザードマップの作成が義務付けられることになりました)。ハザードマップに色やマークがついている家はもちろん、近くに小さい川や用水路などがある家も注意する必要があります。
家庭の状況を確認しよう
「ひとり暮らし、子どもがいる、高齢者と同居している、ペットを飼っている……など、家庭の状況によって、防災の行動パターンも違います。あらかじめ、家庭の状況を把握しておくことがとても大切です」
マイカーの有無、ペットを飼っているかどうか、家族が持病薬を飲んでいるかどうか、避難に支援が必要な人がいるかどうか(例えば、高齢者、障がい者、乳幼児、妊婦など)、親戚など避難を受け入れてくれる場所があるかどうか、などです。
「いざという時に避難を受け入れてくれるかどうか、親戚や友人に確認するきっかけにもなります。親戚や友人にお願いしてみる、また、こちらも受け入れるという意思表示をするというのにもいい機会ではないでしょうか」
②川の水が氾濫するまでの流れを確認しよう
台風発生から川の水が氾濫するまで
「台風が発生してから、どういう経過をたどって近くの川の水が氾濫するのかを確認しておきましょう。家の近くに大きな川がある場合は、その上流があるわけですから、どのあたりを流れているかを調べておくことも大切です。この時、全国のハザードマップが見られる“わがまちハザードマップ” (https://disaportal.gsi.go.jp/)で調べれば、上流を確認できるので便利です(「作る準備をしよう」編を参照)」
上流がどのあたりを流れているかを調べる必要があるのは、自分の住んでいる場所の降雨量だけでなく、上流にどれだけ雨が降っているかが川の水量に大きく影響するためです。
「自分の住んでいる場所の降雨量が少ないからといって油断をしないでください。上流に雨がたくさん降ると、数時間後、数日後に下流に水が押し寄せ、氾濫や堤防決壊などの被害が出る可能性があります」
川の水位の調べ方
「川の水位が気になるからといって、実際に川に行かないでください。川を見に行って被害に遭うということがあるからです。川の水位もインターネットで確認できますので、絶対に川へ行ってはいけません」
“川の防災情報”で検索すると、国土交通省の「川の防災情報」(https://www.river.go.jp/index)で川の水位を調べることができます。知りたい川の名前を入力すると、カメラがどこにあるかが出てくるので、見たいカメラをクリックと、リアルタイムで川の状況を見ることができます。
「他にも、“キキクル”という気象庁のページや、“ヤフー防災速報” のアプリも便利です。“マップ”という機能を使えば、河川の情報が色分け(赤は危険、黄は異常、グレーは平常)されて表示されますので、危険度が一目瞭然でわかります。情報を得る方法は複数あるほうが安心ですので、ダウンロードしておくことをおすすめします」
※続きは、『“マイ・タイムライン”って知っていますか?(「作ってみよう」編)』をご覧ください)
堀中里香(ほりなか りか)
プロフィール
防災備蓄収納マスタープランナー、防災士、整理収納コンサルタント。「あなたのいえのかたづけこびと、そだてませんか」をモットーに、日常は整理収納、非常時は防災備蓄で、安全で安心な暮らしをサポートする。防災を考慮した整理収納サポートや、オンラインの整理収納×防災備蓄セミナーが好評。整理を習慣づける週一オンライン部活動『みんなでおかたづけクラブ』も行っている。NHKひるまえほっと出演。ブログ『かたづけこびとのみつけかた』 https://ameblo.jp/karikanariho/
時政 美由紀
1965年兵庫県生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、出版社勤務を経て、2010年、編集・出版企画 ㈱マッチボックスを設立。出版社時代から現在に至るまで企画・編集した書籍・ムックは300冊以上。女性のライフスタイル全般、料理、子育てなどの実用書を中心に活動。2018~2021年、茨城新聞「論壇」にて連載。自著に『50歳から結婚してみませんか?』(朝日新聞出版)。
1965年兵庫県生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、出版社勤務を経て、2010年、編集・出版企画 ㈱マッチボックスを設立。出版社時代から現在に至るまで企画・編集した書籍・ムックは300冊以上。女性のライフスタイル全般、料理、子育てなどの実用書を中心に活動。2018~2021年、茨城新聞「論壇」にて連載。自著に『50歳から結婚してみませんか?』(朝日新聞出版)。