

子どもの描く絵は、常識にとらわれない自由な色づかいで、とってもユニーク。
しかしそれは本当に、子どもながらの感性からくる色づかいなのでしょうか。
他の人と色の見え方が異なる「色覚異常」という症状があります。
男性のうちの5%、つまり20人に1人は、生まれつき「色覚異常」を持っていると言われています。
子どもが「色覚異常」かもと疑う行動とは? また「色覚異常」とわかった場合、どのように対応することが適切なのでしょうか。
47年間「色覚異常」の研究を重ねてきた眼科の名医、市川一夫先生にお話を伺いました。

市川一夫
医学博士。愛知医科大学卒業。名古屋大学大学院医学研究科博士課程外科系眼科学修了。社会保険中京病院眼科医長、主任部長を経て現在眼科顧問。中京眼科視覚研究所所長・グランドセントラルタワーTokyoアイクリニック主任執刀医。1994年、中京病院を中核とするクリニックグループを支援する株式会社中京メディカルを設立し、眼科専門医の指導育成に尽力する。ライフワークともいえる色覚研究歴は47年。
「色覚異常」の人はピーマンとパプリカが見分けづらい
Q.「色覚異常」とは、どのような症状を指しますか。
市川:色を認識する力が弱く、色の見え方が通常の人と違う症状のことを「色覚異常」と呼びます。
色がまったく認識できないと誤解される方が多いのですが、色の判別が困難な人はごく少数で、⼤半の⼈は⾊の判別がしづらかったり、他の人となんとなく違うと感じていたりします。
Q.色覚異常は、生まれつきのものですか。
市川:症状のでるすべての人が、生まれつきではありません。
遺伝などが原因で、生まれつき色覚異常を持っている場合を「先天色覚異常」、網膜や視神経、脳などの病気や怪我、また加齢によって起こる場合を「後天色覚異常」と呼びます。
お子さんに症状が見られる場合、先天色覚異常の可能性が高いでしょう。
Q.色覚異常には、具体的にどのような症状が見受けられますか。

市川:「赤緑色覚異常」の人は、赤と緑の見分けがつきにくいと感じます。
例えば信号機の赤と青(実際の緑)が同じような色に見える、ピーマンとパプリカの区別がつかない、トマトが熟したと判断しづらい、などが挙げられます。
赤緑色覚異常の人は、赤と緑だけでなく、オレンジと黄緑、茶と緑、青と紫、ピンクと水色なども見分けにくいと感じることがあります。
お子さんが、茶色い植木鉢に咲いた赤い花を、すべて緑色に塗るなどの行動をした場合、「赤緑色覚異常」を疑ったほうがいいでしょう。
また先天性の「青黄色覚異常」の人もいます。非常にまれですが、青と緑、白と黄色、紫とピンクなどが見分けづらいと感じます。
その一方で、⻘⻩⾊覚異常は後天性の場合もあり、他の病と合併して引き起こされることが多く、以前と⾒え⽅が変わるため、本⼈が⾃覚しやすい異常です。
しかし加齢による後天色覚異常は徐々に見え方が変わるため自覚しにくく、青色の炎が小さく見えることが高齢者の着衣着火の原因の一つとされています。
色覚異常を見分けるチェックシート
︎⬜ 黒板に書かれた赤いチョークの文字が見づらい
︎⬜ 肉が焼けているかどうかわからない
︎⬜ レタスの葉で傷んでいる部分がわからない
︎⬜ 紅葉していることに気づけない
︎⬜ 充電のLEDライトが赤から緑に変わったことに気づかない
︎⬜ トイレの男性と女性のマークが、黒と赤、青とピンクで分けられていたとき、わかりづらいと感じる
※このチェックシートは、すべての色覚異常がわかるものではありません。詳しくは眼科医にご相談ください。