子どもの痛み 「成長痛」はさする 「スポーツ障害」はアイシング 「ホームケア」を専門医がわかりやすく説明

整形外科医・石神等先生に聞く「成長痛」 #3 成長痛とスポーツ障害のホームケア 

いしがみ整形外科クリニック院長:石神 等

「ストレッチは、『スポーツ障害』の予防になります」とは、「いしがみ整形外科クリニック」院長・石神等先生。  写真:years/イメージマート

「いしがみ整形外科クリニック」院長・石神等先生に聞く、子どもの「成長痛」について。

今回は、「成長痛」と「スポーツ障害」のホームケアについてです。家庭内ではどのようなケアをしてあげればいいのでしょうか? 

それぞれの対処法について、詳しく解説していただきました。

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「痛い」という事実に寄り添ったケアを

──前回では、成長痛とスポーツ障害の違いや、見極め方について解説していただきました。今回は対処法についてです。成長痛は放っておいてもよくなっていくものなのでしょうか?

石神等先生(以下、石神先生):ストレスや疲れが原因なので、特別な治療は必要ありません。ただ、成長痛は決して仮病ではありません。まずは「痛い」という事実を認めて、気持ちに寄り添ってあげることが大切です。

──日常生活で気を付けることはありますか?

石神先生:特に生活や運動を制限する必要もありません。日中、痛みを訴えることはほとんどありませんが、お子さんが不安そうにしている場合は、園や学校の先生にも「成長痛という診断を受けている」ことを伝えておくとよいかもしれません。

また、原因を特定して取り除くことは難しいので、どうしたら痛みが少しでも和らぐか、お子さんと一緒にいろいろ試してみるのがよいと思います。一般的には以下のようなケアをしてあげると落ち着くことが多いようです。

成長痛のホームケア

成長痛のホームケアは、以下の7つになります。

① マッサージしてあげる、足をさする
② 湿布をはる
③ 足をクッションや布団などで高くする
④ しっかり睡眠をとる
⑤ お風呂などで温める
⑥ 抱っこをするなどスキンシップを図る
⑦ 太ももやふくらはぎの筋肉が伸びるようなストレッチをしてあげる

石神先生:それでも強い痛みが治まらなければ、カロナールなどの痛み止めを処方することもあります。

成長痛は、新しい環境に慣れ、心や身体が成長することで、自然と痛みの程度や頻度は減っていきます。あまり心配せず、おおらかな気持ちで向き合ってあげてください。

オンライン取材中の石神等先生。

スポーツ障害の治療法

──スポーツ障害である「シーバー病」や「オスグッド病」はどんな治療が必要ですか?

石神先生:どちらも運動後にはしっかりとアイシングすることが大事ですね。

また、ストレッチによって、筋肉の柔軟性を高めることも重要です。痛みがあると、その足をかばって不自然な動き方をして、余計に筋肉が凝り固まってしまいます。運動の前後だけでなく、お風呂上がりなど日常的にストレッチを行うと良いと思います。

シーバー病ならアキレス腱、オスグッド病なら足全般をのばしましょう。お風呂で温めたり、マッサージで患部の周りのかたくなったところをほぐすのも有効ですね。

さらに痛みや腫れがある場合は、当クリニックでは、湿布や鎮痛剤を処方したり、低周波治療や温熱療法を行います。日常生活では、松葉杖を使って患部への負担を軽くする、ステロイド注射(局所麻酔)を投与して炎症をおさえる場合もあります。

──サポーターなども効果はありますか?

石神先生:シーバー病の場合はクッション性の高い靴のインソールやアーチパッドをつけると良いと思います。オスグッド病も膝下の負担を軽くする専用サポーターがあります。症状に合わせて、通院先の先生と相談して選んでください。

スポーツ障害は練習を休んだほうがよい?

──治療のために運動を休まなくてはなりませんか?

石神先生:それほどひどくなければ、練習量を減らすだけでもよいと思います。ただ、歩くだけで痛みがあるなど、日常生活に支障が出ている場合はしばらく休むことも必要です。

痛みを我慢して今までどおりの運動を続けると、オスグッド病は手術が必要になる場合もあります。くれぐれも無理をしないようにしてください。

適切なケアや治療を続ければ、シーバー病や軽度のオスグッド病なら1~2ヵ月で、症状が進行しているオスグッド病でも約3ヵ月程度で通常の練習メニューをこなせるようになります。

──再発を防ぐために気を付けたほうがよいことはありますか?

石神先生:ストレッチは続けたほうがいいですね。スポーツ障害が男の子に多いのも、身体がかたいことが理由の一つだと思います。日頃から柔軟性を高めておくと、他のケガの予防にもつながりますよ。

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「成長痛」と「スポーツ障害」はどちらも成長期特有の足の疾患ですが、原因もケアの仕方も異なることがよくわかりました。

子どもが毎日元気に過ごせるよう、痛みがひどく続くような場合は、まずは整形外科を受診してみてください。

取材・文/北 京子

子どもの成長痛に関する記事は全3回。
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いしがみ ひとし

石神 等

Hitoshi Ishigami
いしがみ整形外科クリニック院長

日本整形外科学会認定専門医。 東京都出身。日本大学医学部卒業後、同整形外科入局。2005年埼玉県立小児医療センター、日本大学医学部附属板橋病院、川越の三井病院整形外科などを経て、2017年5月に川越市に「いしがみ整形外科クリニック」を開業。 人工関節手術の最新技術にも定評がある。また、日本骨粗鬆症学会認定専門医として、骨粗鬆症の治療にも力を注いでいる。 https://ishigami-seikei-cl.com/ishigami/

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日本整形外科学会認定専門医。 東京都出身。日本大学医学部卒業後、同整形外科入局。2005年埼玉県立小児医療センター、日本大学医学部附属板橋病院、川越の三井病院整形外科などを経て、2017年5月に川越市に「いしがみ整形外科クリニック」を開業。 人工関節手術の最新技術にも定評がある。また、日本骨粗鬆症学会認定専門医として、骨粗鬆症の治療にも力を注いでいる。 https://ishigami-seikei-cl.com/ishigami/

きた きょうこ

北 京子

Kyouko Kita
フリーライター

フリーライター。 藤沢市在住。食の月刊誌の編集者を経て独立。食を中心に、SDGs、防災、農業などに関する取材・執筆を行う。 3児の母。自然の中で遊ぶこと、体を動かすこと、愛犬とたわむれることが好き。

フリーライター。 藤沢市在住。食の月刊誌の編集者を経て独立。食を中心に、SDGs、防災、農業などに関する取材・執筆を行う。 3児の母。自然の中で遊ぶこと、体を動かすこと、愛犬とたわむれることが好き。