「成長痛」とは異なる成長期の足の痛み 「スポーツ障害」を専門医が解説

整形外科医・石神等先生に聞く「成長痛」 #2  スポーツ障害の原因と見極め方

いしがみ整形外科クリニック院長:石神 等

成長期の激しい運動が原因の「スポーツ障害」とはどのような症状なのでしょうか?  写真:TOMOTA3306/イメージマート

「いしがみ整形外科クリニック」院長・石神等先生に聞く、子どもの「成長痛」について。

連載2回目は、成長期に激しい運動をすることで起きる「スポーツ障害」についてです。

成長痛との違いや、原因、見極め方、またスポーツによって症状が違うなど、詳しく解説していただきました。

(全3回の2回目。1回目を読む

代表的なスポーツ障害とは?

──前回「成長痛」は、身体的な成長から起こるものではなく、心のストレスによって引き起こされることが多いということと、成長痛の見極め方について解説していただきました。

今回は、激しいスポーツをして痛みが出てくる「スポーツ障害」について、まずは成長痛とスポーツ障害との違いを教えてください。

石神等先生(以下、石神先生):どちらも成長期に現れる足の痛みですが、スポーツ障害は、小学校高学年から中学生のスポーツを熱心に行っているお子さんが発症します。

運動しているときに痛みがあり、レントゲンでも明らかな異常が見つかります。成長痛を発症する子どもに目立った男女差はありませんが、スポーツ障害は圧倒的に男の子に多い疾患でもあります。

また、スポーツ障害にはいろいろな疾患があるのですが、特に成長期に多くみられるのは「シーバー病」と「オスグッド病」です。

かかとの疾患「シーバー病」

──では、シーバー病からお聞きします。どのような疾患なのでしょうか。

石神先生:シーバー病は、かかとの疾患で、「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」とも呼ばれています。かかとの骨(踵骨)の端っこについた小さな骨(骨端核)がはがれたり、踵骨と骨端核をつなぐ軟骨が炎症を起こしている状態です。

骨端核はアキレス腱とくっついており、激しい運動によりアキレス腱に何度も強く引っ張られることで、骨端核や軟骨に負荷がかかってしまうのです。

オンライン取材中の、石神等先生。

石神先生:どんなスポーツでも起こり得る疾患ですが、特に長く走ることが多いサッカーや野球、ジャンプを多くするバスケットボール、裸足で競技を行う剣道や体操をしている子どもに起こりやすくなっています。

偏平足や内反足(ないはんそく)・外反足(がいはんそく/内くるぶしが内側や外側に倒れている状態)のお子さんは特に注意が必要です。

ひざの炎症「オスグッド病」

──続いて、オスグッド病についても教えてください。

石神先生:オスグッド病はひざの炎症で、運動をしているときに痛みが出たり、ひざのお皿の下が腫れてくる疾患です。

太ももの前面にある大きな筋肉(大腿四頭筋:だいたいしとうきん)は、膝蓋腱(しつがいけん)を介して、すねの骨(脛骨:けいこつ)とつながっています。

負荷の大きい足の曲げ伸ばしを繰り返すことで、大腿四頭筋が成長過程である脛骨の一部の軟骨を引っ張りすぎてしまい炎症が起こるのです。

オスグッド病もスポーツ全般で発症しますが、特にジャンプなど屈伸が多いバレーボールやバスケットボール、ダッシュやキックをする野球やサッカーをしているお子さんによく見られます。

大人になって痛みがぶりかえすことも

──病院ではどのように診断するのでしょうか?

石神先生:どんなときに痛むのかを聞いたうえで、患部を触ったときの痛みや熱感、腫れがあるかを確認します。どちらもレントゲンや超音波検査で異常が見つかれば診断が確定します。

──成長期の子どもに多いのはどうしてでしょうか?

石神先生:成長期は骨の成長に筋肉や腱の成長が追い付かず、つっぱって硬くなりがちです。またこの時期の子どもの骨は、新しく骨になるための成長軟骨や骨端核がたくさんあり、強度が弱い状態です。柔軟性がなく未熟な身体に過度な負荷をかけると、このような炎症につながってしまうのです。

成長期の足の痛みは「そのうち治る」と思いがちですが、無理は禁物です。特にオスグッド病は進行性のスポーツ障害なので、痛みや腫れを放置すると、長期の運動休止や外科的な治療が必要となる可能性があります。

中には大人になってスポーツをしているときに痛みがぶり返すことも。いつもの練習が痛みで思うようにできない場合や、日常生活に支障をきたすようなときは、早めの受診をおすすめします。

───◆─────◆───

今回は、成長期のスポーツ障害として代表的な2つの疾患「シーバー病」と「オスグッド病」について解説していただきました。

痛みがあると、練習の効果やモチベーションが下がり、日常生活でもストレスがたまりがちです。成長期の一次的なものだと軽視せず、適切な治療やケアで早く痛みを取り除いてあげられるといいですね。

次回3回目では、成長痛とスポーツ障害のケアや再発防止の方法について、引き続き石神先生に伺います。

取材・文/北 京子

子どもの成長痛に関する記事は全3回。
1回目を読む。
3回目を読む。
(※3回目は2024年8月23日公開。公開日までリンク無効)

いしがみ ひとし

石神 等

Hitoshi Ishigami
いしがみ整形外科クリニック院長

日本整形外科学会認定専門医。 東京都出身。日本大学医学部卒業後、同整形外科入局。2005年埼玉県立小児医療センター、日本大学医学部附属板橋病院、川越の三井病院整形外科などを経て、2017年5月に川越市に「いしがみ整形外科クリニック」を開業。 人工関節手術の最新技術にも定評がある。また、日本骨粗鬆症学会認定専門医として、骨粗鬆症の治療にも力を注いでいる。 https://ishigami-seikei-cl.com/ishigami/

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日本整形外科学会認定専門医。 東京都出身。日本大学医学部卒業後、同整形外科入局。2005年埼玉県立小児医療センター、日本大学医学部附属板橋病院、川越の三井病院整形外科などを経て、2017年5月に川越市に「いしがみ整形外科クリニック」を開業。 人工関節手術の最新技術にも定評がある。また、日本骨粗鬆症学会認定専門医として、骨粗鬆症の治療にも力を注いでいる。 https://ishigami-seikei-cl.com/ishigami/

きた きょうこ

北 京子

Kyouko Kita
フリーライター

フリーライター。 藤沢市在住。食の月刊誌の編集者を経て独立。食を中心に、SDGs、防災、農業などに関する取材・執筆を行う。 3児の母。自然の中で遊ぶこと、体を動かすこと、愛犬とたわむれることが好き。

フリーライター。 藤沢市在住。食の月刊誌の編集者を経て独立。食を中心に、SDGs、防災、農業などに関する取材・執筆を行う。 3児の母。自然の中で遊ぶこと、体を動かすこと、愛犬とたわむれることが好き。