精神科医が伝授! 発達障害ママの子育てをラクにする7つの解決策

発達障害ママの子育て #2~トラブルの対策編~

精神科医・司馬クリニック院長:司馬 理英子

【困りごと5:決まった時間に宿題をさせるなど、子どもに習慣づけが難しい】

【対策5】毎日のタスクを大切なものに絞る

毎日決まった時間に宿題を見るなど習慣づけが苦手な人もいます。すべての時間をきっちり決める必要はありませんが、3つくらいは決めたほうがいいでしょう。

むしろ、3つに絞り、そこを軸に段取りを決めてみては。例えば、1:ご飯を食べる時間、2:宿題をする時間、3:寝る時間、など。

そして子どもには、「あと30分で宿題の時間だよ」「あと5分だよ」といった声がけを。本当は自分だってテレビを見たいかもしれないし仕事のメールをチェックしたいかもしれない。

それでもそこは我慢して自分が決めた「3つ」だけは習慣的に行う。すると、親子ともにラクになるはず。

【困りごと6:誰かに相談や助けを求めることが苦手】

【対策6】家族には自分の苦手分野とその対策を伝える

発達障害であることをママ友はおろか、一緒に子育てをするパートナーにも言えない人は珍しくありません。では、パートナーに打ち明けたほうがいいかどうかというと、相手や状況によります。

「大変だったんだね。じゃあ手伝うよ」と理解を示して助けてくれる人もいれば、「話が違うよ。何で結婚前に言わなかったの?」「子どもの忘れ物が多いのはキミが原因だったんだね」「単なる甘えだよ」などと思いもよらない言葉が返ってくることも。まだまだ発達障害への理解が乏しく、優しくない社会だと感じます。

発達障害という言葉は出さずに、「私は忘れっぽいから、頼みごとはあとで見返せるようにLINEに残しておいてくれると助かる」などと、自分の特性とリクエストをセットにして伝えるのも一つの方法です。

【困りごと7:「適当にやればいい」「手を抜くことも大事」といったあいまいな指示、アドバイスに苦しむ】

【対策7】アドバイスは具体的かつ紙に書かれた形で

子育てに行き詰まり、気づけば親子2人で同じパターンを続けている……。そんなときは、第三者に体験談やアドバイスをもらうと、袋小路から抜け出せるかもしれません。

相談することで、「子どもが今は特定の物事にこだわっているけれど、あと1~2年経つとそのこだわりもなくなる。だから今は待つときなんだ」と先の見通しが立てられたり、「具体的にこういうやり方をすると切り替えがうまく行く」といった対応方法を得られたりすることもあるでしょう。

一方で、アドバイスをもらっても、それがあいまいな指示だと理解できない人は非常に多い。また発達障害の人は、口頭で言われたことをその場で理解して自分の中に落とし込むことにすごく時間がかかる面もあります。

特にASDは、「ビジュアル・シンカー(目で見て考える人)」と言われているように、耳で聞くより目で見た内容のほうが理解しやすいということは知られています。

また、ADHDは集中力が持続せず最後まで聞けない、その場では理解できても記憶として定着しないことが多い。そのため、アドバイスは具体的で先が見通せる形で、なおかつ文章化された形でもらうことが理想です。

例えばメールやチャットなどで文字のやりとりをする、資料をもらう、可能であれば医師にポイントを書いてもらう、などです。書かれていることはリマインダーとして役立ちますから。

目の前の今を楽しむことを積み重ねる

以上の方法は、万人に役立つかは分かりませんが、もし自分に合うと思ったらぜひ取り入れてみてほしいと思います。

困りごとへの正解(対策)はひとつではありませんが、めざすべきところはあります。それは、夜は悩みすぎずに眠り、朝は元気に起きられる毎日を過ごすことです。

母親は毎日やるべきことが山ほどあり、処理に追われてしまうのは仕方ないこと。ただ、家事が多少おろそかになっても、子どもとかかわる時間を持つことはとても大事なことです。

子どもが小さいうちは、「ピカピカなキッチンにしたい」、「子どもの宿題は正確に!」といった目の前のタスクを完璧にこなすことより、ぜひ今日の“今”を“一緒に”安心して楽しんでほしいのです。

例えば宿題も「今はこんなおもしろいことを習っているんだね」などと会話をしながらやってみましょう。心と心で通い合う時間をできるだけ多く持つと、その分、親子の絆は強くなります。

そうしたことを重ねていくうちに、子育ても少しずつうまくいくと思うのです。

取材・文/桜田容子

女性の発達障害に長年たずさわってきた精神科医の司馬理英子先生。新刊『女性の発達障害 困りごとにどう向き合うか』(講談社)では、発達障害について基礎から解説し、生きづらさの原因や、家族と過ごしやすくなるための助言が詰まっている。
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しば りえこ

司馬 理英子

Rieko Shiba
精神科医・司馬クリニック院長

精神科医。司馬クリニック院長。医学博士。岡山大学医学部、同大学院卒業。1983年渡米し、アメリカで4人の子どもを育てる傍ら、ADHDについて研鑽を深める。 97年、ADHDをなじみ深いキャラクターになぞらえて解説した『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)を出版し、話題に。同年、東京都武蔵野市に発達障害専門のクリニック「司馬クリニック」を開院。中学生までの男女と、大人の女性の治療を行っている。 『ママのピンチを救う本 わが家やみんなADHD!?』(主婦の友社)、『女性の発達障害 困りごとにどう向き合うか』(講談社)など著書多数。

精神科医。司馬クリニック院長。医学博士。岡山大学医学部、同大学院卒業。1983年渡米し、アメリカで4人の子どもを育てる傍ら、ADHDについて研鑽を深める。 97年、ADHDをなじみ深いキャラクターになぞらえて解説した『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)を出版し、話題に。同年、東京都武蔵野市に発達障害専門のクリニック「司馬クリニック」を開院。中学生までの男女と、大人の女性の治療を行っている。 『ママのピンチを救う本 わが家やみんなADHD!?』(主婦の友社)、『女性の発達障害 困りごとにどう向き合うか』(講談社)など著書多数。

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。