子どもの「睡眠時無呼吸症候群」の原因? 「舌の位置」の想定外の重要性を〔専門家が解説〕

口呼吸との関係も? 舌が下がることの危険性と生活習慣 #2

これが正しい位置! 舌が上がる確認方法

それでは、舌の位置はどこにあるのが正しいのでしょうか。

「舌先は上前歯の裏側のつけ根のあたりに位置し、奥舌がしっかり上がっていて上あごにべたっとついている状態がベストです。無理やり強い力を舌だけに入れるというより、舌全体を真っすぐ上に押し上げるイメージです」(石塚先生)

ただし、舌先だけが上あごについている状態はよくないと話します。

「舌先だけが上あごについている状態だと、お口を閉じにくくなってしまうことがあります。また、舌先で上や下の前歯を押している状態になりやすく、歯列の悪さにもつながります。矯正してもいつまで経ってもなかなか歯並びが治らない人は、舌の位置に問題があるかもしれません。

さらに、舌先だけに力が入っていると、舌の裏の静脈がうねうねして浮いてきますが、それは抵抗して戦っている状態なんでね。そうすると、交感神経が優位になってしまいます。常にその状態でいると、自律神経にまで影響を及ぼしかねません」(石塚先生)

舌は上にあるのが普通であり、きちんと上がるようになったら、力を入れなくても「自然にそこにある状態」になるのだといいます。そのために、まずは舌が上がるとはどういう状態なのかを知ることが重要です。

これが正しい舌の位置! 出典:『「なんとなく不調」がスッキリする! 舌はがし健康法』より

「舌先で上あご(前歯の裏あたり)を左右にさすり、舌先のあるべき位置を確認してから奥舌をペタっと上あごに貼りつけます。舌が上がるというのがどういう状態なのかわかりにくい方は、指しゃぶりがオススメです。

親指の第2関節あたりまでを深く口にくわえて、指をしゃぶってみてください。舌がぐっと上に上がる感じがわかると思います。

ただしこれは、指しゃぶりの習慣になってしまう危険があるので、子どもさんにはオススメできません。大人の場合は、お風呂場などで指しゃぶりをしてみるといいですね。吸い上げてくっつくイメージがわかると思います」(石塚先生)

舌を上に持ち上げる力をつけるために、こんな方法もあるといいます。

「舌全体を上あごにつけて、勢いよくはがして音を鳴らすトレーニング方法です。これは、矯正医や歯科医の間では『ホッピング』と呼ばれています。

舌先だけをはがすのではなく、舌全体を上あごからはがすイメージです。大きな音を出す必要はありません。軽く『タンッ』という音が出れば十分です。

舌先だけで鳴らすと『タランッ』という大きな音になるので、違いはわかると思います」(石塚先生)

また、舌が下がっていないかを確認する方法として、お子さんが寝ているときにこっそり唇を開けて舌の位置を見てあげてほしいといいます。

「舌が上がって口が閉じられていることが大切です。寝ているときに口が空いていたら要注意です。舌が下がっている子は、舌が上にいくことをわかっていないので、たとえば歯磨きをする前に口蓋を指でマッサージして刺激を与え、『ここだよ』と教えてあげるといいですね」(石塚先生)

舌にはさまざま情報が詰まっていると話す石塚先生。舌の状態からわかる身体の不調についても話します。

「舌の表面に付着する、白い苔のようなものを舌苔(ぜったい)と呼びますが、この舌苔が付着して舌が白くなっている場合は、胃腸が弱っていることもあります。特に夏場は冷たいものの摂りすぎで胃腸に負担がかかるので注意が必要です。

また、これは高齢者に多いのですが、舌がぼてっとむくんだようになっている場合があります。

循環の悪さからくるものですが、やはり夏場などに水分の摂りすぎが原因で、代謝しきれずにむくんでしまうんですね。そうなると、低位舌でなくても舌に圧痕(あっこん)がつきやすくなります」(石塚先生)

ほかと比べてそれほど大きな筋肉ではない舌ですが、身体にとって非常に重要な筋肉だということがわかりました。

次回は、口周りや舌の筋力を鍛えるために、乳幼児から気をつけたいことや、親子で楽しみながらできるストレッチなどを紹介します。

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石塚 ひろみ(いしづか ひろみ)
歯科医師。オウル歯科院長。オンラインサロン『舌の学校』主催。日本大学歯学部卒業後、都内のクリニック勤務を経て、田中歯科を継承。2015年、名称をオウル歯科に変更し移転開業。一番身近な歯科医院として歯科治療に邁進し、地元住民から親しまれている。近年は、舌の機能の重要性を広める活動も精力的に行っており、歯科関係者以外からも多数の相談や要望を受けている。

【書籍】
『なんとなく不調がスッキリする~舌はがし健康法(晶文社)』
【執筆協力】
『病気をもつ子供と家族のための「おうちで暮らす」ガイドブックQ&A』
その他、雑誌・新聞等多数掲載

取材・文/伊藤千鶴

『舌が下がることの危険性と生活習慣』の連載は、全3回。
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