子どものアトピー性皮膚炎 「発症と診断」をアレルギー専門医が解説

アレルギー専門医に教わる「アトピー性皮膚炎」

小児科専門医:堀向 健太

アトピー性皮膚炎は怖い病気と思われることが多いためか、子どもがアトピーかもしれないと心配するお母さんお父さんは少なくありません。ただ実際には、どんな病気でどのように捉えればよいのかは意外に知られていないのではないでしょうか。そこで、アレルギー専門医で子どものアトピー性皮膚炎の治療経験も豊富な堀向健太先生に、詳しく教わっていきます。アトピー性皮膚炎はいつごろから発症し、どのように診断がつくのかについて伺いました。

実は多い! 赤ちゃんの肌トラブル

写真:アフロ

新生児の1ヵ月健診で相談される心配事の上位に来るのが「皮膚のトラブル」です[1]。赤ちゃんの肌はすべすべもちもちしているというイメージがあるからか、ブツブツが出るとびっくりされることも少なくないのですが、生後2ヵ月くらいまでは皮脂の分泌量が多く、湿疹や赤みなどができやすいのです。

湿疹を見て「もしかして、うちの子アトピーかもしれない」と心配される方もいます。ただ、生後1ヵ月の時点でアトピー性皮膚炎を発症することはまれです。アトピー性皮膚炎は乾燥により皮膚のバリア機能が落ちたことで発症することがほとんどで、皮脂が皮膚を覆うことで乾燥や刺激から守ってくれているうちは起こりにくいのです。

1ヵ月健診での皮膚のトラブルは多くの場合「乳児湿疹」という診断がつきます。ちなみに乳児湿疹とは乳児期の皮膚トラブルの総称で、新生児ざ瘡(そう)や脂漏性(しろうせい)皮膚炎、接触皮膚炎などを指し、適切なスキンケアを行えば徐々に良くなることがほとんどです。

お風呂でベビー用のソープやシャンプーで顔や頭皮の汚れをしっかりと(でもやさしく!)洗ってあげてください。シャンプーなどの成分が残ると湿疹の原因になるため、十分にすすぎ、お風呂から出た後は保湿剤を塗っておきましょう。

乾燥が気になりだす生後3ヵ月以降が要注意

写真:アフロ

では、乳児期の皮膚トラブルはあまり心配しなくていいのかというと、そうとも言えません。日本でアトピー性皮膚炎の患者さんは約10人に1人くらいいるのですが[2]、その多くが乳児期の比較的早い時期に発症しています。6ヵ月までに発症した人が全体の約45%、1歳までに発症した人が約60%というデータもあります[3]。実際に、子どものアトピー性皮膚炎を心配して受診したお母さんやお父さんに「いつ頃から症状が気になり始めましたか?」と伺うと、「生後数ヵ月くらいからです」と答えることが少なくありません。実はこの時期は、それまでたくさん分泌されていた皮脂が減少する時期と、ちょうど重なっています[4]。

先ほど説明したように、生後数ヵ月間の乳児の皮膚は皮脂が多く分泌されているのですが、その後は急激に減りはじめ、生後数ヵ月くらいは皮脂の分泌量が少なくなります。つまり今までとは逆に、乾燥による皮膚トラブルが起きやすい時期であると言えるでしょう。そのひとつが、アトピー性皮膚炎です。

私たちの皮膚の一番外側にあり外部と接している「角層」と、さらにその表面にある皮脂と汗が混ざり合った天然のクリームである「皮脂膜」は、皮膚内部の水分を保ったり、外部からの刺激を防いだりする役割があります。まさにバリアのように、皮膚を守っているというわけです。皮脂が減るとその役割が十分果たせなくなります。また、角層の厚みは大人でも0.01~0.03mm程度くらいしかなく、子どもの皮膚は生理的に未発達でその機能は不十分です[5]。つまり、子どもの皮膚はバリア機能が弱く、刺激に敏感になるのです。

もし乳児湿疹だと診断された後、お風呂や保湿に気を付けていても湿疹がなかなか良くならなければ、一度病院に相談してみることをお勧めします。

アトピー性皮膚炎に特徴的な3つの症状

写真:アフロ

病院へ行かれる前に、ひとつお伝えしておきたいことがあります。それは、乳児のうちはアトピー性皮膚炎かそうでないかを見分けるのが難しい場合があるということです。そのため、医師がすぐに診断を下さない場合もあるかもしれません。

せっかく病院で診てもらったのに「アトピー性皮膚炎かどうかはまだわかりません。少し様子を見ましょう」と言われてしまうと、かえって不安になってしまうかもしれないし、すぐに治療をスタートして早く治してあげたいと思う気持ちもよくわかります。でも、慎重に見極めてきちんとした治療をしたほうが、後々よい結果につながることもあるでしょう。

もちろん、医師に相談しながら治療に望むことが重要なことにはかわりありませんが、診断がつくまでずっと不安なままでいるのもつらいでしょうから、私たち医師も診断の参考にしている、アトピー性皮膚炎の特徴をいくつかご紹介しましょう。

1) 特徴的な場所に湿疹がでる
アトピー性皮膚炎の症状が出る場所は、発症した年齢によって変わります。乳児の場合は、まず頭や顔に湿疹が出て、だんだん体や手足に広がっていきます。もう少し大きい子どもの場合は、首の辺りや肘の前や膝の後ろなどに湿疹が出ることが多いです。また、症状は左右対称に出ることが多いです[2]。

2 湿疹が長く続いたり、ぶり返したりする
乳児湿疹であれば、スキンケアを丁寧に行うことで数ヵ月以内に改善することがほとんどです。一方アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返し症状が続きます。お風呂や保湿に気を付けながら2ヵ月くらい様子を見ても、かゆみのある湿疹がなかなか良くならない場合は、アトピー性皮膚炎である可能性が高いといえます。

3) かゆみがある
アトピー性皮膚炎の一番の特徴がこのかゆみです。乳児湿疹であればかゆみはまずみられないので、かゆがっているようであれば、アトピー性皮膚炎であることが疑われます。

ただし乳幼児は言葉で伝えることができないため、さまざまなサインを見逃さないようにしたいものです。例えば、だっこした時に、お母さんやお父さんの服に顔をこすりつけるのは、頬っぺたがかゆいからかもしれません。また、寝かせたときにもぞもぞしたり、体をくねらせたりするのは、背中を布団にこすりつけることでかゆみを解消しようとしているとも考えられます。もちろん、手で顔や頭を掻いたり、左右の足をこすり合わせたりするなど、直接的な動作として見られることもあります。

これらの症状に加えて肌の様子を見ることが診断に有用です。検査の結果も参考になるでしょう。乳児湿疹の段階から治療を考えることも少なからずありますが、もちろんアトピー性皮膚炎であると診断がつけば、より積極的に治療を行うことになります。

ただ、覚えておいていただきたいのは、乳児期に発症したアトピー性皮膚炎は、適切な治療を行えばかなりの割合で良くなるということです。診断がついたからといって「アトピー性皮膚炎になってしまった……(あるいは、子どもをアトピー性皮膚炎にさせてしまった……)」と落ち込む必要はありません。

正しい情報を得てきちんとした治療につなげることが、お子さんにとってもっとも必要なこと。アトピー性皮膚炎を必要以上に怖がりすぎず、医師と相談しながら治療にあたってくださいね。

[1] 日本小児心身医学会雑誌 21(2): 240 -245 2012
[2] アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018 (日本皮膚科学会) https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopic_GL2018.pdf (2021年11月5日アクセス)
[3] Illi S, et al. The natural course of atopic dermatitis from birth to age 7 years and the association with asthma. J Allergy Clin Immunol 2004; 113:925-31.
[4] 真喜屋 智子. 皮膚 顔に湿疹ができたのですが. 周産期医学 2015; 45:1626-7.
[5] 石田 耕一. 【子どものスキンケア】子どもの健常な皮膚を維持するためのスキンケアの概念. チャイルド ヘルス 2007; 10:308-15.

ほりむかい けんた

堀向 健太

Kenta Horimukai
小児科専門医

日本アレルギー学会専門医/指導医/代議員。小児科専門医/指導医。さまざまな医学サイトで執筆するほか、TwitterやInstagramでは「ほむほむ先生」として子どものアレルギーに悩むお母さんやお父さんに向けて出典の明らかな医学情報を発信している。 Twitter https://twitter.com/ped_allergy Instagram https://www.instagram.com/homuhomu_allergist/ Note https://note.com/ped_allergy/

日本アレルギー学会専門医/指導医/代議員。小児科専門医/指導医。さまざまな医学サイトで執筆するほか、TwitterやInstagramでは「ほむほむ先生」として子どものアレルギーに悩むお母さんやお父さんに向けて出典の明らかな医学情報を発信している。 Twitter https://twitter.com/ped_allergy Instagram https://www.instagram.com/homuhomu_allergist/ Note https://note.com/ped_allergy/