
【赤ちゃんの初おでかけ】「生後1ヵ月過ぎから外出OK」は根拠なし! 外出の開始時期と注意点〔医師が解説〕
令和の「子どもホームケア」#8~赤ちゃんとのおでかけ~
2025.05.25
小児科専門医:森戸 やすみ
遠出は移動手段のメリット・デメリットを比較
旅行や帰省など、遠方への外出の開始時期も、医学的な根拠による答えはありません。公共交通機関の月齢制限も法律では定められておらず、電車やバスは生後すぐから利用できて、JALやANAなどの航空会社では生後8日以上としています。
ただ、これは赤ちゃんの安全を保証するものではないので、利用する際は、赤ちゃんの健康状態や移動時間を十分に考慮して検討しましょう。
電車かクルマか移動手段で悩んだときは、それぞれのメリット・デメリットを考えて比較するとよいと思います。例えば電車は、比較的時間どおりに移動できること、新幹線ならトイレや多目的室に近い席にすれば、おむつ替えがしやすいことがメリットとして挙げられます。
反対にデメリットは、人が多く感染症にかかりやすいこと、赤ちゃんが泣いたときに周りの目が気になることでしょうか。混雑時を避けて利用するのがポイントですね。
対してクルマのメリットは、荷物が多くても運びやすく、マイペースに移動できること、授乳やおむつ替えに合わせて休憩がとりやすいこと。
デメリットは、渋滞があると予定より時間がかかること、チャイルドシート(ベビーシート)を正しく使用していないと「乳幼児揺さぶられ症候群」の危険性があることなどです。
6歳未満の乳幼児とクルマ移動する際は、道路交通法により、チャイルドシートの使用が義務付けられています。未使用だと違反になるばかりか、万が一、交通事故にあったときに大変危険です。
チャイルドシートは説明書どおりに設置し、正しく使用しましょう。赤ちゃんの首が安定しないときは、隙間にタオルなどを詰めると「乳幼児揺さぶられ症候群」の予防につながります。タオルがずれて赤ちゃんの口をふさがないように十分注意してください。
そのためにも、赤ちゃんとふたりきりでの移動は極力避け、保護者の誰かが赤ちゃんの隣にいられる状態がいいですね。
また、赤ちゃんとの外出時にクーファン(簡易ベビーベッド)を使用するケースが見られますが、クーファンは移動用ではありません。赤ちゃんの体を固定できないため落下事故も多く、手で持ち歩くのは大変危険です。
出先での一時的なベッドとして使用するのはもちろんよいのですが、赤ちゃんを寝かせたまま移動するのは絶対にやめましょう。
赤ちゃんとの外出はママパパの気分転換にも
赤ちゃんの外出には、さまざまなメリットがあります。ひとつは、皮膚に紫外線を浴びることでビタミンDを生成できること。
ビタミンDには、骨の形成に不可欠なカルシウムの吸収を助ける働きがあります。母乳に含まれるビタミンDは少なく、胎内にいるときにお母さんからもらった分もだんだんと減っていきます。
離乳食が始まったら、魚や卵、きのこ類など、ビタミンDが豊富な食材を取り入れながら、おでかけの際に適度な日光浴をするといいですね。
また、風や光を感じたり、鳥や動物の声を聞いたり、暑かったり寒かったり、外の世界に触れて五感が刺激されると、脳の発達をうながすことができます。生後3~4ヵ月になれば、光の刺激によって概日リズム(体内時計)も整うようになるでしょう。
赤ちゃんとの外出は、ママパパにも大いにメリットがあると思います。生後間もないうちはどうしても家にこもりがちですが、寝不足が続く中で何もしゃべらない子と24時間ふたりきりというのは、いくらかわいいわが子でも精神的につらいものです。ときどきはおでかけして誰かとおしゃべりするなど、上手に気分転換していただきたいですね。
【子どものホームケアの新常識 その8】
赤ちゃんとの外出は、季節や時間帯を選んで感染症に注意すれば、生後1ヵ月未満でもOK。
取材・文/星野早百合
●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数。

星野 早百合
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
森戸 やすみ
小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。
小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。