「日野すみれ塾」がなかったら高校に行けなかった
「日野すみれ塾」を卒業した女子高校生も、感謝祭に参加。塾には小学生から中学生まで通い、高校生になった今も、わからないことがあれば聞きに来ます。
「『日野すみれ塾』で初めて、塾のような場に参加しました。みんなで勉強するのが新鮮だったし、ボランティアの先生には1対1で教えてもらえて、嬉しかったです。学校の帰りに寄れる場所というのも、よかったですね。
学校は、生徒が何十人もいるけれど、先生は1人。わからないことがあっても、聞きにくい。でも『日野すみれ塾』は、生徒と先生がフラットな関係で、先生は優しい人ばかり。特に高校入試の直前1ヵ月は、ずっと勉強に付き合ってくれました。
塾の先生たちが向き合ってくれたから、勉強するようになりました。意識が変わったんです。それまで、勉強は面倒なもので、自分だけでは、できなかったから。最初のころは、すみれ塾の宿題もサボっていたぐらいで……。
正直、この塾がなかったら、高校には行けていないと思います。本当に感謝しています。塾でもらった文房具は、今も大事に使っています」(すみれ塾を卒業した高校生)
塾での体験を、「九死に一生を得ました」と表現し、ユーモアを交えて話す様子は、コミュニケーションが苦手だったようには思えません。「日野すみれ塾」の先生たちとの関わりで、対人関係も変わっていったのでしょう。
この高校生が特別なのではなく、無料塾に来る子で、ノートや文房具を持っていない子は、珍しくありません。学校で聞かれても、「ない」と言えず、「忘れた」と言います。
「『日野すみれ塾』は、活動費の中で文房具を買っています。保護者に、『お子さんのノートがないですよ』とできていないことを指摘するより、できる人が用意すればいい、との気遣いです。学校のテストを、種類別に整理して入れられるファイルも支給しています。
ここを卒業した子には、いつ来てもいいよと言って、ゆるく細く、つながっています。大学生になれば、カフェに行くとか、自分で勉強できるかもしれませんが……。小中学生だけでなく高校生にも、こうした居場所が必要な子がいます」(代表の仁藤さん)
地域のサポーターやボランティアなど、感謝祭を訪れた人に声をかけ、活動の説明をしたり、感謝を伝えたりしていた仁藤さん。実は、仁藤さん自身も貧困家庭に育ち、壮絶な体験をしていました。
2回目は、代表・仁藤さんがヤングケアラーだった子どものころのお話を紹介します。
取材・文/なかのかおり
2回目 無料塾の代表・3児のママは貧困家庭で育ったヤングケアラーだった
※3回目は10月5日公開(公開日までリンク無効)
3回目 「勉強の価値がわからない」という親 貧困の連鎖を断ち切る無料塾の挑戦
なかのかおり
ジャーナリスト。早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。
主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』が2022年10月22日発売。
なかの かおり
早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。 主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』、『家庭訪問子育て支援ボランティア・ホームスタートの10年「いっしょにいるよ。」』など。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』が2022年10月22日発売。 講談社FRaU(フラウ)、Yahoo!ニュース個人、ハフポストなどに寄稿。 Twitter @kaoritanuki
早稲田大参加のデザイン研究所招聘研究員。新聞社に20年あまり勤め、独立。現在は主に「コロナ禍の子どもの暮らし」、「3.11後の福島」、「障害者の就労」について取材・研究。39歳で出産、1児の母。 主な著書に、障害者のダンス活動と芸能界の交差を描いたノンフィクション『ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦』、『家庭訪問子育て支援ボランティア・ホームスタートの10年「いっしょにいるよ。」』など。最新書『ルポ 子どもの居場所と学びの変化: 「コロナ休校ショック2020」で見えた私たちに必要なこと』が2022年10月22日発売。 講談社FRaU(フラウ)、Yahoo!ニュース個人、ハフポストなどに寄稿。 Twitter @kaoritanuki