子どもを守るために知っておきたい ママのためのお天気講座

イラストレーターで気象予報士のこはるゆきのさん #2 9月にも接近、上陸する台風対策

構成・取材:時政 美由紀

大雨や暴風をもたらす台風。近づく前にしっかり対策しましょう。
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豪雨や台風による災害、高温多湿による熱中症など、お天気による、いわゆる気象災害が増えています。身のまわりの危険はお天気にかかわることが多いということですね。

そこで、子どもを守るためにも、ママがお天気のことを知っておく必要があります。

気象予報士でイラストレーターでママでもある、こはるゆきのさんに「子どもを守るために知っておきたいお天気知識」を全3回にわたってお聞きしていきます。

また、 忙しいママの暮らしに空を見上げる時間を作ったり、空や雲、夕焼けを眺めることもこはるさんは提案しています。

お天気を知識として知るだけでなく、空を見ることで、ほっとしたり、心が癒されたり、暮らしがより楽しくなったりするからです。

そして、さらにお天気への理解を深めることができ、子どもを気象災害から守ることにつながっていきます。

2回目は「9月にも接近、上陸する台風対策」です。1回目は、こちら。

8月とともに、9月が1年でもっとも多い

2022年9月、台風14号、15号が日本各地に被害をもたらしました。毎年この時期、台風がもたらす被害は大きく、深刻です。

「台風が日本に接近、上陸するのは、8月とともに、9月が1年でもっとも多いんです。そして、10月や11月にも日本に上陸したことがありますので、これからも安心はできません」と、こはるさん。

台風の接近、上陸を避けることはできませんが、「台風」のことを理解していれば、被害が拡大しないための対策は立てられるはず。こはるさんに台風について教えてもらいました。

交通機関への影響も大きい。

最大風速が約17メートル以上

そもそも台風とは、何を指して「台風」と呼ぶのでしょう?

熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びますが、このうち北西太平洋(赤道より北で東経180度より西の領域)または南シナ海に存在し、なおかつ低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s(34ノット、風力8)以上のものを「台風」と呼びます。
(気象庁ホームページより引用)

「熱帯低気圧の中でも、最大風速が約17メートル以上になったものを言います。つまり、“風がすごく強い”ということです。逆に約17メートル未満だと、『熱帯低気圧になった』ということです」

気象ニュースで「台風が熱帯低気圧になりました」と言っているのは、端的に言うと「風速が台風の基準を下回った」ということなのですね。また、台風が「温帯低気圧」に変わることもありますが、これはどういうことでしょう。

「温帯低気圧になったということは、構造が異なる別の低気圧になったということ。温帯低気圧に変わってから発達して風が強くなることもあるので、安心というわけではありません」

台風接近とともに荒れる海。

台風の進路を表す“予報円”に注目

台風の進路に注意しながら、通過した後も完全に気を抜かず、気をつけることも大切なようです。

「台風情報で白い円は“予報円”と言い、台風の中心が進むと予想される範囲を表しています。予報円が大きくなると台風が大きくなると勘違いをされている方もいるようですが、予報円が大きいということは、台風の進路が定まっていないということ、と理解してください」

予報円の大きな台風は最新の情報で常に確認が必要、ということですね。

「台風情報の見方で、さらに意識してほしいことがあります。それは、強風域、暴風域、暴風警戒域です」

強風域
台風や発達した低気圧の周辺で、平均風速が15m/s以上の風が吹いているか、地形の影響などがない場合に、吹く可能性のある領域。通常、その範囲を円で示す。
暴風域
台風の周辺で、平均風速が25m/s以上の風が吹いているか、地形の影響などがない場合に、吹く可能性のある領域。通常、その範囲を円で示す。
暴風警戒域
台風の中心が予報円内に進んだときに、暴風域に入るおそれのある領域。
(気象庁ホームページより引用)

「台風情報では、強風域は黄色の円、暴風域は赤色の円、予報円の外側を囲む赤い線は暴風警戒域を表しています。自分の地域が強風域や暴風域に入るのかどうかも確認してほしいと思います」

予報円、強風域、暴風域、暴風警戒域。
(気象庁ホームページより)

側溝や排水溝の掃除をして、水はけをよくする

いざ、台風が上陸するとなると具体的にはどうすればいいのでしょうか?

「台風は、水不足を解消する恵みの雨をもたらすこともありますが、ひどくなれば、洪水、浸水となり、暴風、高波、高潮……と多くの被害が出てしまいます。ただ、事前に来ることがわかるので対策を打つことができます」

確かに、地震やゲリラ豪雨などと違って、台風がいきなり来ることはないので、備えておくことはできます。

「家のまわりの側溝や排水溝の掃除をして、水はけをよくしましょう。また、飛ばされそうなものは固定するか、室内に入れてください。植木鉢やサンダル、ガーデン用のテーブル、いすなどですね。園芸用の道具なども外に置きっぱなしにしないでください」

外に置いてある自転車は固定したほうが安心ですね。

「窓は雨戸やシャッターがあれば下ろして、なくてもカーテンを閉めておくようにしましょう。飛んできたものが窓にぶつかってガラスが割れたとしても、ガラスの飛散を防ぐことはできます」

ミルク、水、おむつなどを余分に備えておく

台風情報が出ると、接近する前から悪天候になったり、外出がままならない場合もありますが……。

「2~3日外出できないケースも考えて、小さいお子さんがいる場合は、ミルク、水、おむつなどを余分に備えておくと安心です。避難場所へ避難しなくてはいけない場合も出てくるかもしれません。非常持ち出しグッズを確認し、数日生活に必要なもの、食料・水・非常用トイレなどを揃えておきましょう」

停電した時のために、懐中電灯も用意し、明かりがつくか確認しておいたほうがいいですね。

「光が広い範囲に届くランタンや、手があくヘッドライトがおすすめです。アウトドアショップやホームセンターなどで購入できますので、用意しておきましょう。携帯電話の電源確保も忘れないでいただきたいです」

非常持ち出し袋を確認しましょう。

台風同様、“線状降水帯”にも注意

「“線状降水帯”という言葉をよく耳にするようになったと思います。台風と同じように警戒していただきたいのが、線状降水帯です」

まさに、雲(積乱雲)が線状に連なり、数時間にわたって強い雨が降る、という線状降水帯。激しい雨が降ることで起こる土砂災害、浸水、洪水は大きな被害をもたらします。

「線状降水帯の予測は難しいのですが、気象庁では線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけを行っています。また、気象庁のホームページで見ることができる“キキクル”では、常に土砂災害、浸水害、洪水害の危険度がどこでどのくらい高まっているのかを確認できます。情報を得ることで避けられる被害もありますので、大雨の時は、キキクルを有効活用していただきたいです」

気象庁「キキクル」。黄色、赤、紫、黒の順に警戒レベルが上がる。
(気象庁ホームページより)

10月も台風の接近、上陸の可能性があるので、今後とも注意が必要です。

こはるゆきの プロフィール
兵庫県在住。2歳児のママ。気象予報士として広島県などで気象キャスターを経験。現在は子ども、親子向けのお天気講座の講師をしながら、イラストレーターとしても活動。
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イラスト/こはるゆきの 取材・構成/時政美由紀

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ときまさ みゆき

時政 美由紀

構成・取材

1965年兵庫県生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、出版社勤務を経て、2010年、編集・出版企画 ㈱マッチボックスを設立。出版社時代から現在に至るまで企画・編集した書籍・ムックは300冊以上。女性のライフスタイル全般、料理、子育てなどの実用書を中心に活動。2018~2021年、茨城新聞「論壇」にて連載。自著に『50歳から結婚してみませんか?』(朝日新聞出版)。

1965年兵庫県生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、出版社勤務を経て、2010年、編集・出版企画 ㈱マッチボックスを設立。出版社時代から現在に至るまで企画・編集した書籍・ムックは300冊以上。女性のライフスタイル全般、料理、子育てなどの実用書を中心に活動。2018~2021年、茨城新聞「論壇」にて連載。自著に『50歳から結婚してみませんか?』(朝日新聞出版)。