小中学生で「妊娠」 真っ先にやることとは? 子どもに教えたい恋愛の境界線「バウンダリー」【専門家が解説】
ソーシャルワーカー・鴻巣麻里香さんに聞く「小中学生の恋愛バウンダリー」【3/4】~恋愛の定義と子どもの妊娠~
2025.01.17
精神保健福祉士・スクールソーシャルワーカー:鴻巣 麻里香
子どもには普段から「あなたはあなた」と線をひく
恋愛でもっとも大切なバウンダリーは、「望まないことはしない」ということ。相手の望まないことをすると、相手のバウンダリーが侵され、自分が望んでいなければ自分のバウンダリーも侵されてしまうのです。つまり、「どちらかが望んでいないことは、しない」ことが重要。
「もし、小中学生などの幼いころに『恋人というラベルがついた相手なら、自分が望まないことも受け入れなければならないんだ』と思ってしまうと、大人になったときに望まない性行為を引き受けることになりかねません。恋人同士だけでなく、自分より権威のある男性などからの要求に『NO』と言えなくなるリスクもあるでしょう。
男の子の中には、『女の子との行為は、どんなものでもうれしいはず』という刷り込みで苦しくなる子もいます。『男はこうあるべきだ』という誤った固定観念によって自分の気持ちを飲み込んでばかりいると、将来、望んでいない相手に性的な行為をしてしまう可能性もあります」(鴻巣さん、以下同)
バウンダリーは年齢とともに、調節機能が備わるようにもなります。「この人は、絶対に自分を傷つけないな」「この人には少しバウンダリーをゆるめても大丈夫」という相手にはふわっとゆるくなり、「この人は自分を苦しめてくる」っていう相手には厚めにガードを固めて自分を守るのです。
「相手によって調節できるようになるためには、周りにいる大人がその子との間に、きちんとバウンダリーを引くことが大切。日ごろから、『あなたはあなたよね』と境界線をきちんと引いて、子どもと接するようにしましょう。
そのうえで、『あなたが苦しむのは、どんなとき?』『どんなことをされると苦しくなる?』と問いかけて、子ども自身が少しずつ自分のバウンダリーを発見していく手助けができるといいですね」
子どもの意見が自分と違ってもあせらないで
子どものバウンダリーを育むために大切なのは、会話をすることと、意見をしっかり聞くこと。泣いたりイヤがったり、「わかんない」と明確な答えがないことなども、子どもの「意見」と考えたほうがいいようです。
「そうして、子どもの中で起きていることを『それが、あなたの気持ちなんだね』と認めてあげることが大事。子どもが転んで『痛い!』と泣いているときに、『痛くない痛くない』ではなく、『痛いよね。転んだんだもんね』と言ってあげましょう。子どもが言った気持ちが不適切でも、『あなたはこうしたいんだね』と、子どもの願いの存在は認めることです」
子どもが自分と違う意見を言うと、ついあせったりびっくりして、否定してしまう人もいるかもしれません。けれどもたとえ意見が違っても、どちらかが間違っているわけではないのです。
「バウンダリーがしっかり引けていれば、意見の違いはただの違いに過ぎない、と思えるはず。チョコレートが好きな人もいれば、クッキーが好きな人もいる。だからといって、どちらがおいしいか競い合って、ケンカしても仕方がないでしょう。自分と意見が違っても、『何とかしなきゃ!』と思う必要はないんです」
トラブルはパートナーと共有し子どもに確認しながら連携を
子どもの意見や願いは、親と同じではないと自覚し、しっかり話を聞くこと。そして、そこにあるものとして受け止め、親の不安は「自分の不安」として対処することが大切です。
「子どもがトラブルに巻き込まれた、恋愛をしているらしいとなると、親はなんかソワソワして不安になるかもしれません。でも、その不安は親のもので子どものものではない。自分の不安として、対処していくことが大事なんです。不安は夫婦で共有して、対処法を考えていくといいでしょう」
ただし、父親も母親も同じ濃度で子どもと関わっているという家庭は、日本ではまだ少ないかもしれません。まずは子どもと多く接しているほうが子どもの話を聞き、夫婦で共有するのが鴻巣さんがオススメする方法です。
「とはいえ、片方ばかりがずっと子どもと関わり続けると、どんどん負担の差が開いてしまいます。子どものトラブルや本音はパートナーでしっかり共有して、どちらかが無関心にならないこと。
『大事なことだから、これはパパにも話すよ。絶対に言ってほしくないってことはあるかな?』と、子どもとシェアしながら、わかちあっていくことが大事だと思います」