「生理があるから女の子を守る」はNG 男子への生理を教えるときに大切なことを医師に聞いた

親から子どもへ「令和の生理の伝え方」 #3 生理の伝え方~男子編~と生理のQ&A

医師夫婦ユニット:アクロストン

「男子に生理を伝えるのは女子と同様、日常生活の中では母親が言いやすいけれど、知識として教えるなら父親と母親のどちらでもいい」と専門家は言います。  写真:アフロ

子どもたちに向けて性に関する授業やワークショップを行っている医師夫婦ユニット・アクロストンに聞く、子どもへの生理の伝え方。

前回までは、子どもに生理を伝える必要性、女子への生理の伝え方・教え方を伺いました。

最終回となる今回は、「男子編」。女子と違う伝え方のポイントと共に、生理を正しく伝えるための素朴な疑問にもお答えいただきました。

※3回目/全3回(#1#2を読む)

アクロストンPROFILE
産業医の妻・みさとさんと、訪問診療医の夫・たかおさんの性教育コンテンツ制作ユニットで、2018年より「アクロストン」として活動をスタート。公立学校の保健の授業で性教育を行うほか、各地の保育園・幼稚園などでもワークショップを開催。小学生と中学生、2児の親。

男子のほうが生理を知っている?

──アクロストンのおふたりは、都内の小学校・中学校で性教育の授業を行っています。生理の話を聞いた男子の反応は、どうでしょうか。

アクロストン・みさとさん(以下、みさとさん) 小学4年生に、性別に関係なく全員で一緒に授業をすると、生理の質問にポンポン答えてくれるのは、意外と男子のことがあります。「なんで知ってるの?」と聞くと、「お母さんが言ってたから」「お母さんが使ってるから」って。

アクロストン・たかおさん(以下、たかおさん) 小4の男子だと、女子がいても恥ずかしがらないですね。女子も男子をからかわないし、むしろ女子のほうが生理について知らない子が多くて「へ~、そうなんだ~」という反応のこともあります。

みさとさん 5年生になると生理になる子も出てくるので、自分ごととして話す子もいて、男子も多少気をつかった雰囲気になります。そういう意味でも、小3・小4は、性別に関係なく生理を伝えるチャンスだと思います。

男子だけの授業だとまた反応が違って、小5・小6の男子の中には「つけてみたいから持って帰ってもいい?」とナプキンを持って帰った子がいました。

中学生は、最初こそ「うわーっ」とふざけた反応をしますが、私たちの授業はクイズや謎解き形式で考えざるを得ないので、普通に取り組みますし、そのうち生理を特別視しなくなりますね。

──男子に生理を伝える場合、女子と違うポイントや注意点はありますか。

たかおさん 言わないほうがいいのは「生理があるから女の子を守ろう」とか「大事にしよう」というニュアンスの表現です。

そこに男らしさをのせて、上から目線で女の子を“守る対象”にすると、上下関係が生まれてしまいます。それは、ナシです。

自分は経験しないけれど、体のしくみとして生理を経験する人がいる。個人差はあるけれど、生理による困りごとを抱える人もいて、学校や会社、家庭の中で調整が必要なこともある。

だけど、それは生理だけが特別なことではなくて、体調不良や体の障がいなど、他のいろいろな困りごとと同じです。

あくまで知識としての生理のしくみや、生理によって困ることもある、と伝えるに留めたほうがいいですね。

みさとさん 私もそう思います。困りごとに対して手助けをすればいいだけで、頭が痛い人、お腹が痛い人がいたら「保健室に行く?」「ちょっと休もうか」と声をかけますよね。それとまったく同じでよくて、生理だけを特別視する必要はないなと。

生理でもまったく体調が悪くならない子もいますし、知識として知っていることは大事だけれど、必ず配慮しなければいけないわけではない。その認識で十分だと思います。

たかおさん あとは、生理のクラスメイトに対して「生理だ、生理だー」とか、からかうのは違うと伝えてあげたいですね。

お子さんがいつでも手に取って読めるように、自宅の本棚に性に関する書籍を置いているというみさとさん(左)と、たかおさんご夫婦。  オンライン取材より

子どもに正しく生理を伝えるためのQ&A

正しい知識を伝えるには、まず、自分自身が正しく生理を理解することが大切です。改めて知っておきたい生理の素朴な疑問について、アクロストンに回答していただきます。

Q.
子どものうちはタンポンの使用を控えたほうがいい?

A.
みさとさん 使ってもまったく問題ありません。うまく使えるのなら、小学生でも大丈夫です。処女膜が破れるのではないかと心配される方もいますが、処女膜は膣の奥に蓋をしているようなものではなく、ひだのような形状です。中央が空いていて、膣にタンポンを挿入するときに破れることはありません。

ただ、上手に使うには練習が必要なので、お子さんが「プールのときに使いたい」と言ったら、いきなりプールの前にトライするのではなく、経血量の多い2日目などに自宅で練習するのがおすすめ。経血が多く出ているときのほうが、スムーズに入ります。

また、タンポンを入れたら8時間以内で必ず出すこと。膣内に残したままにしておくと、雑菌が繁殖して感染症になるリスクも。お子さんが出し忘れていないか、親御さんも声をかけて確認しましょう。

Q.
生理中は激しい運動をしてはダメ?


A.
たかおさん 体調が悪くなければ、何の問題もありません。

みさとさん 激しい運動をするときは、生理用品について親も一緒に考えてあげられるといいですね。ナプキンよりも膣の中で経血を吸収するタンポンのほうがズレやヨレが気にならず、漏れにくいのが特徴です。高校生以上なら月経カップを検討してもいいでしょうし、経血量が少ない日なら吸水ショーツも快適だと思います。

Q.
生理中はバスタブに入ってはダメ?


A.
みさとさん 自宅のお風呂であれば、大丈夫です。水やお湯に入ると膣の入り口が閉まるので、生理中でも基本的に経血は出ません。バスタブに経血が浮くとしたら、膣の出口あたりに付いていたものだと思います。

ただ、バスタブはよくても、洗い場では経血が出てしまうので、温泉などの公衆浴場は衛生上、NG。タンポンや月経カップを使えば基本的には公衆浴場も入れますが、施設利用規約も確認してください。

Q.
痛み止めは、飲みすぎると効かなくなるってホント?


A.
たかおさん 箱に書いてある用法・用量を守っていれば、効かなくなることはありません。飲むタイミングは、痛くなり始めたころ。痛みが強くなってからでは抑えるのが大変ですし、がまんすることが多いと、痛みに対する感覚が強くなってしまいます。がまんしてもいいことはないので、早めに飲みましょう。

Q.
生理中のセックスは、妊娠しないってホント?


A.
みさとさん
 妊娠することは、あり得ます。生理期間中でも排卵する可能性はゼロではないので、妊娠を望まないのであれば避妊が必要です。

─・─・─・─

全3回のアクロストンのインタビュー、いかがでしたか?

母親が生理をタブー視していると、当然、子どもにも「生理は恥ずかしいこと」「オープンに話してはいけないこと」という感覚が引き継がれてしまうといいます。

ライターの私自身は6歳の娘に、まだ生理の“せ”も伝えられていませんが、おふたりの話を聞いていて「なぜ今まで話せなかったんだろう?」と不思議に思うほど、生理は体に起こる当たり前の事象なんだと改めて気づかされました。

まずは、自分の体に起きていることとして、娘に伝えることから始めてみようと思います。

取材・文/星野早百合

アクロストン

医師夫婦ユニット

産業医の妻・みさとさんと、訪問診療医の夫・たかおさんの性教育コンテンツ制作ユニット。 2018年に「アクロストン」として活動をスタート。公立学校の保健の授業で性教育を行ったり、各地の保育園や幼稚園などでもワークショップを開催。小学生の子どもがふたりいる。 オフィシャルホームページでは、ワークショップで使用している工作ワークブックや絵本を無料でダウンロードできる。 ●アクロストン ウェブサイト acrosstone ●アクロストンnote 「子ども向け+家庭でできる性教育@アクロストン」 【主な著書】 『3〜9歳ではじめるアクロストン式 いま、子どもに伝えたい性のQ&A』、『思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!』(主婦の友社) 性教育シールブック『おうちせいきょういくえほん』(主婦の友社)

産業医の妻・みさとさんと、訪問診療医の夫・たかおさんの性教育コンテンツ制作ユニット。 2018年に「アクロストン」として活動をスタート。公立学校の保健の授業で性教育を行ったり、各地の保育園や幼稚園などでもワークショップを開催。小学生の子どもがふたりいる。 オフィシャルホームページでは、ワークショップで使用している工作ワークブックや絵本を無料でダウンロードできる。 ●アクロストン ウェブサイト acrosstone ●アクロストンnote 「子ども向け+家庭でできる性教育@アクロストン」 【主な著書】 『3〜9歳ではじめるアクロストン式 いま、子どもに伝えたい性のQ&A』、『思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!』(主婦の友社) 性教育シールブック『おうちせいきょういくえほん』(主婦の友社)

ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。