子どもに“生理“をいつ教えるの? 幼児から生理を伝える必要性がある理由を専門家に聞いた

親から子どもへ「令和の生理の伝え方」#1 生理を伝える必要性

医師夫婦ユニット:アクロストン

近年のフェムテックブームもあり、生理への理解を深めようという流れがある反面、科学的証拠のない怪しい情報が増えているのも事実。正しい情報を見極めて伝えることも大切です。  写真:アフロ

女の子の成長過程でいつか訪れる生理。

私たち親世代が子どものころ、小学校で行われる性教育は男女別が当たり前でした。それが、最近では生理を正しく理解しようという動きが社会全体に広がりつつあり、女子だけではなく、男子にも生理の授業を行う学校も出てきています。

では、家庭での生理の教育は、何歳ぐらいから始めればいいのでしょうか。子どもに生理を伝える必要性について、子どもたちに性の授業やワークショップを行っている医師夫婦ユニット・アクロストンのみさとさん、たかおさんに伺います。

※1回目/全3回

アクロストンPROFILE
産業医の妻・みさとさんと、訪問診療医の夫・たかおさんの性教育コンテンツ制作ユニットで、2018年より「アクロストン」として活動をスタート。公立学校の保健の授業で性教育を行うほか、各地の保育園・幼稚園などでもワークショップを開催。小学生と中学生、2児の親。

産業医のみさとさん(左)と、訪問診療医のたかおさんご夫婦。中学生と小学生の2児を育てるママとパパでもあります。  オンライン取材より

ママの約5割が生理の教育に不安

電気機器メーカー・オムロンが2020年に行った『母親1,000人に聞いた「月経」の教育に関する意識調査』(※注1)によると、5歳から19歳の娘をもつ1109人の母親のうち、67.6%が母子間で生理の話をしているものの、2人に1人が「月経に関する教育に不安を感じている」と答えました。

また、生理の教育に不安を感じる理由は「教育の仕方がわからない」との回答が54.9%で1位となり、次いで「知識不足と感じる」が39.6%という結果に。母親自身が、生理の教育方法や知識不足に不安を感じていることがわかります。

その一方で、近年、駒場東邦中学校(東京都世田谷区)、正則学園高等学校(東京都千代田区)、湘南学園高等学校(神奈川県藤沢市)など、男子生徒に向けて生理の特別授業を行う学校が出てきました。

これからの時代、生理はタブー視するものではないと言われ、小学校の保健の授業へ異議の声も出ています。

では、女子も男子も、家庭では何歳ごろからどのように生理について教えていけばいいのでしょうか。アクロストンのみさとさん、たかおさんに聞きました。

生理は特別なことではない〈体の話〉

──娘を持つママたちの中には、子どもへの生理の教育方法がわからずに不安を感じている人が多いようです。どんな理由があるのでしょうか。

アクロストン・みさとさん(以下、みさとさん) 今の親世代は、小学校で生理の教育を受けてはいるのですが、決して「しっかりと学びましょう」といった内容ではなく、仕組みについて少し話を聞いたぐらいで、親からも生理用ナプキンの使い方を教わる程度。生理の話題はタブーとされていたり、“ナプキンは隠すもの”と教わってきたりした世代です。

社会全体で「子どもに生理について教えましょう」という流れになっても、自分たちは教わっていないわけですから、戸惑いを感じるのは当然です。子どもにどう伝えたらいいのか不安な気持ちは、よくわかりますよね。

──そもそも家庭で生理について教えるのは、女子も男子も何歳くらいからがいいのでしょう。

みさとさん スタートは幼児で、小さければ小さいほどいいと思います。女の子にも男の子にも、まずは“毎月、お母さんの体に起こる現象”として、「生理っていうものがあるんだよ」と伝えるので十分です。

子どもが小さいほどいいと言ったのは、生理や性に対する偏見が生まれないうちのほうが、抵抗なく受け入れられるから。

「このお花はピンク色だね」「虫の足は6本なんだね」などと同じように、〈科学的な話〉として生理を捉えられるようになります。

重要なのは、何度も繰り返し伝えること。生理の話がタブーとされてきた世代だと最初は抵抗があると思いますが、「今日は生理だから、パパとお風呂に入ってほしいな」「生理で体調が悪いから、ちょっと横になるね」などと日常的に伝えていると、子どもはもちろん、親もだんだんと慣れてきます。親側のメリットも大きいですね。

──男子にも小さいうちに伝えたほうがいいんですね。

アクロストン・たかおさん(以下、たかおさん) そう思います。生理を経験しない人も、自分の体には起こらないことだけれど、「そういう現象があるんだな」と、当たり前のこととして生理を捉えられるようになります。

みさとさん 個人差はありますが、生理前や生理中に体調不良になるなど、いろいろな困りごとがありますよね。人口の約半分の人は、人生の中で一定期間、みんな生理を経験するわけです。

同じ体調不良でも、風邪やインフルエンザなど病気の知識はある程度あるのに、生理について知らない人がいると、一緒に社会を築いていくうえでマイナスではないかと。

生理についての知識があることで、学校も会社も家庭の中でも、困りごとについて調整を必要とするときにうまくいきますよね。社会全体にそうした流れがあるように感じますし、そうであってほしいなと思います。

生理と妊娠をつなげて説明する必要はない

──子どもに生理を教えるときのポイントを教えてください。

みさとさん 幼児のうちは、体に起こる現象のひとつとして「生理といって、毎月お股から血みたいなものが出てくるんだよ」と伝える程度でいいと思います。

ただ、「お股から血が出てくる」と言うと、ケガをすると血が出ると認識している子は、「生理ってケガなの?」「痛いの?」と怖がってしまう場合があります。ケガではなく、血が出ることそのものが痛いわけではないというフォローは必要ですね。

「赤ちゃんを産むための準備」という説明は、最初はいらないのかなと。赤ちゃんを産む・産まないに関係なく、生理は体に起こることですし、生理と妊娠の関係を強調するのは避けるべきだと思います。

生まれたときに性別を「女の子」と判定されたけれど、自分の性別に違和感を持っているときは、将来的に生理になることへの抵抗感を抱いていることがありますし、安易に妊娠と結びつけることで、自分の体への嫌悪感を強める可能性があります。

また、これはもう少し大きくなってからの話ですが、生理から妊娠の話をすると、そこからセックスにつながり、生理を「エロいもの」と勘違いしてしまう子もいます。セックスや妊娠の話を子どもに伝えることは重要ですが、まずは生理について、体の仕組みを中心に伝えていけばいいと思いますね。

──ユネスコが刊行した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(※注2)によると、性教育は5歳から始めることが推奨されていますね。

たかおさん オランダでは0歳から性教育を開始していますし、私たちも子どもの理解や興味に合わせて小さいうちから始めるのがいいと考えています。性教育って“教育”という言葉がついているから、正しい方法があるような印象を受けますが、性や体の話は、ごはんを食べることや寝ることと同じレベルの、生活の一部。赤ちゃんから高齢者まで、みんな関係することなんですよね。

みさとさん 生活の一部だと思えたら、子どもと生理の話をするのも難しいことではなくなります。「性教育をしなきゃ」と身構える必要は、まったくないですね。

──ちなみに、おふたりは2児のママとパパですが、お子さんたちにはどのように生理について伝えましたか?

みさとさん 日常生活の中で、あまりにも普通に話していたので、覚えていないのですが……。小さいころ、子どもってトイレの個室にもついてきますよね。

そういうとき、「ママは生理だから、これを取り替えなきゃいけないんだ」と、子どもが言葉を話す前から伝えていたので、改めて教えることはなかったと思います。

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お話を聞いていて印象的だったのは、おふたりの「生理は特別なことではない〈体の話〉」「ごはんを食べることや寝ることと同じ、生活の一部」という言葉です。

生理の教育に不安を感じているママにとって、伝えることのハードルをぐんと下げてくれたのではないでしょうか。

第2回は、引き続きアクロストンのおふたりに、女の子への具体的な生理の伝え方について伺います。

取材・文/星野早百合

※注1=母親1,000人に聞いた「月経」の教育に関する意識調査(オムロン)

※注2=ユネスコを中心に、セクシュアリティ教育に関わる世界の国々の専門家の研究と実践を踏まえて作成された手引書

あくろすとん

アクロストン

医師夫婦ユニット

産業医の妻・みさとさんと、訪問診療医の夫・たかおさんの性教育コンテンツ制作ユニット。 2018年に「アクロストン」として活動をスター...

ほしの さゆり

星野 早百合

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名...