「小3までに生理を教えるべき」 娘への性教育とパパの関わり方とは? 専門家が伝授

親から子どもへ「令和の生理の伝え方」#2 生理の伝え方~女子編~

医師夫婦ユニット:アクロストン

「生理を伝えるとき、正確な知識を完璧に伝えるよりも、子どもと一緒に学ぼうとする姿勢のほうが大切です」と、医師夫婦ユニット・アクロストンのふたりは言います。  写真:アフロ
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親世代も、知っているようで実は知らない生理のこと。

前回は、子どもたちに性に関する授業やワークショップを行っている医師夫婦ユニット・アクロストンのみさとさん、たかおさんに、子どもに生理を伝える必要性と伝えるときのポイントをお聞きしました。

今回は「女子編」として、さらに具体的な方法を伺いながら、初潮を迎えた子、初潮がなかなか来ない子への対応なども解説していただきます。

※2回目/全3回(#1を読む

アクロストンPROFILE
産業医の妻・みさとさんと、訪問診療医の夫・たかおさんの性教育コンテンツ制作ユニットで、2018年より「アクロストン」として活動をスタート。公立学校の保健の授業で性教育を行うほか、各地の保育園・幼稚園などでもワークショップを開催。小学生と中学生、2児の親。

女子は遅くとも小3までに生理を伝えよう

──前回は、小さい幼児への生理の伝え方を伺いましたが、6~12歳の学童期にはどのように伝えるのがいいでしょうか。

アクロストン・みさとさん(以下、みさとさん) 学童期でも低学年と初潮を迎え始める高学年とでは違ってきますが、3年生までに一度、生理用ナプキンについて教えるといいと思います。実際にナプキンを広げて触ったり、ショーツに付けてみたり、確認するといいですね。

日本性教育協会が6年に一度行っている「青少年の性行動全国調査」の2017年の調査によると、初潮の平均年齢は12歳でした。大阪大学が行っている「日本女性の初潮年齢の推移」でも、最新のデータが2008年と少々古いものの、やはり12歳ごろ。ここ30年ほど、ずっと平均初潮年齢は変わっていないようです。

ただ、これは平均値で、早い子だと9歳、10歳に初潮が来る子も。小学校で生理の授業を行うのは、だいたいが4年生の冬なのですが、その前に初潮が来る子もいます。

学校でも教わっていない、親からも何も聞いていない、周りの子も知らない状況で、初潮が来たらビックリするし、病気じゃないかと思う場合もあり、ショックを受ける子もいます。

そうならないように、遅くとも3年生までには生理のことを伝えてあげてほしいですね。自分には来なくても、周りの子に来たとき「あ、それは生理だよ」と教えることもできます。

また、生理用品の付け方と合わせて教えたいのが、捨て方ですね。血液は感染症のもとになり得るので、きちんと丸めて捨てようねと。きれいに捨てれば、掃除の方の負担を減らすことにもなります。

あとは、「学校で困ったことがあったら、保健室に行けば大丈夫だよ」と、困ったときの具体的な対策を伝えるのも大切です。

都市部の小学校で性の授業を行っているアクロストンのみさとさん(左)と、たかおさん。年々、生理に対してオープンな女の子が増えていると感じているそうです。  オンライン取材より

シングルファザーはどうしたらいい?

──シングルファザーで娘さんを育てている男性もいます。子どもの生理について、どのように対応すればいいでしょうか。

みさとさん シングルファザーの方に関わらず、どの性別の保護者も子どもと一緒に生理の知識を学んでいくスタンスがいいと思います。

生理を経験したことのある人でも、生理は個人差が大きいこと、生理用品の豊富さ、婦人科受診のポイントについて知らないことはよくあります。

シングルファザーの方もできるなら、お子さんと一緒に生理について学んでいただきたいですね。初潮を迎える前のほうが、お互いに話しやすいかもしれません。

子どもと一緒に本を読んだりインターネットの動画を観たり、良質な情報が載っている生理用品メーカーのWEBサイトを見るのもおすすめです。ドラッグストアに行って、一緒に生理用品を買うのもいいと思います。

難しかったら、知り合いや親戚の女性、保健室の先生に相談するのもいいと思います。ただ、例えば生理用品が欲しいのに、お父さんに「買って」と言えない状況だと、子どもが困ってしまいます。「お父さんに何でも話して大丈夫だよ」「困ったことがあったら言ってね」ということは伝えておいてください。

アクロストン・たかおさん(以下、たかおさん) どうしてもお股の領域のことだし、いろいろな感じ方があるのはわかります。だからこそ、先ほどお伝えしたとおり、お父さんもお母さんも「一緒に勉強しよう」という姿勢でいいと思います。

生理の経血量や期間、生理痛の程度は、遺伝するものではないので、親子であっても個人差があります。お母さんの体験だけでは、すべてをカバーするのは限界があるので、一緒に学ぶのはとてもいいことですよね。

初潮が来た子に「大人になったね」はNG

──子どもが初潮を迎えたら、体調の変化や声掛けなどで注意することはありますか。

みさとさん 妊娠にからめて「これで赤ちゃんが産める体になったね」と言ったり、「大人になったね」などと言うのはNGです。

前向きな意味かもしれませんが、実際、生理が来たからといって大人になったわけではないですし、生理をプラスに捉えられる子もいれば、そうじゃない子もいます。

私たちが生理の授業を行った子どもたちの中には「生理が来るのが楽しみだ」という子もいて、そういうタイプの子には「おめでとう」と言ってもいいとは思います。

でも、個人的には「別におめでたいことではなく、当たり前の体の現象だよ」という感覚です(笑)。本人の希望を確認せずに、お赤飯を炊くこともおすすめしません。

初潮を迎えた以降は、気持ちが不安定になったり、体に不調が起きたり、子どもでもPMS(月経前症候群)になる場合があります。

心のことであれ、体のことであれ、「つらかったら言ってね」と伝えておくといいですね。生理周期は、初潮が来てしばらくは乱れることも多いので、さほど心配しなくて大丈夫です。

──お父さんの対応として、気をつけたいことはありますか。

みさとさん 例えば、子どもがお母さんに「初潮が来た」と話したとき、お母さんがお父さんに勝手に伝えていいわけではないです。

どこまで共有するかは、子ども本人が決めること。子どものプライバシーですから、許可なく共有するのはやめましょう。

ただ、お母さんがいないときや災害時など、お父さんも知っていたほうがいい状況はあります。お父さんしかいない状況で、生理に関する困りごとが起こるかもしれません。

そのため、子どもから初潮について教えてもらったら、「お父さんに言ってもいい?」と聞いてみてください。ダメだと言われたら一度はやめて、少し時間が経ってから、また相談してみてください。

隠れてこっそり伝えるのは、ナシです。一緒に暮らしているとバレる可能性は非常に高いですし、親子の信頼関係が崩れるきっかけにもなり得ます。

たかおさん 子どもの許可が出て共有してもらったとしても、お父さんは「おめでとう」など、特に何も声を掛けなくていいと思います。

父親にできる具体的なこととしては、生理についての基本的なことを学んだり、ナプキンがないときのために、ドラッグストアの生理用品売り場を確認しておくことですね。

15歳まで初潮が来なければ婦人科で受診を

──なかなか初潮が来なくて不安になる子もいるようです。何歳ぐらいまでに来なかったら、受診したほうがいいでしょうか。

みさとさん 「ひとりひとり違うので、気にしなくていいよ」と声を掛けていただきたいですが、15歳になっても来ないようなら、一度婦人科を受診したほうがいいと思います。

婦人科受診はハードルが高く感じる方も多いのですが、いちばんの不安は内診(器具を用いて膣の中を診察すること)だと思います。

基本的に初潮が遅いことを主訴に受診した子に対して、いきなり内診が行われることはありません。

もし内診を提案されても、嫌ならその場で断ることもできます。事前に病院についてネットで調べたり、電話で相談したり、診察内容を確認しておくのもいいと思います。

はじめは、血液検査でホルモンの値を測ったり、お腹の上からエコーを当てたりする検査が一般的です。その先、原因によっては内診が必要になる可能性はあるかもしれませんが、前段階でわかることもあるので安心して受診してほしいです。

たかおさん 初潮の相談に限らず、生理でつらいことがあるとき、婦人科は助けになります。婦人科の数が少なく、受診が難しいエリアもあるかと思いますが、お子さんにとってよい病院を見つけられるといいですね。

─・─・─・─

正しい知識を伝えることも大切ですが、親子で気軽に生理について話せる関係性を築くことのほうが、子どもの安心につながるのだと感じました。

また、家族間であっても子どものプライバシーは守るということ、心に留めたいと思います。

第3回は、引き続きアクロストンのおふたりに、男子への具体的な生理の伝え方と、生理の素朴な疑問について伺います。

取材・文/星野早百合

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アクロストン

医師夫婦ユニット

産業医の妻・みさとさんと、訪問診療医の夫・たかおさんの性教育コンテンツ制作ユニット。 2018年に「アクロストン」として活動をスタート。公立学校の保健の授業で性教育を行ったり、各地の保育園や幼稚園などでもワークショップを開催。小学生の子どもがふたりいる。 オフィシャルホームページでは、ワークショップで使用している工作ワークブックや絵本を無料でダウンロードできる。 ●アクロストン ウェブサイト acrosstone ●アクロストンnote 「子ども向け+家庭でできる性教育@アクロストン」 【主な著書】 『3〜9歳ではじめるアクロストン式 いま、子どもに伝えたい性のQ&A』、『思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!』(主婦の友社) 性教育シールブック『おうちせいきょういくえほん』(主婦の友社)

産業医の妻・みさとさんと、訪問診療医の夫・たかおさんの性教育コンテンツ制作ユニット。 2018年に「アクロストン」として活動をスタート。公立学校の保健の授業で性教育を行ったり、各地の保育園や幼稚園などでもワークショップを開催。小学生の子どもがふたりいる。 オフィシャルホームページでは、ワークショップで使用している工作ワークブックや絵本を無料でダウンロードできる。 ●アクロストン ウェブサイト acrosstone ●アクロストンnote 「子ども向け+家庭でできる性教育@アクロストン」 【主な著書】 『3〜9歳ではじめるアクロストン式 いま、子どもに伝えたい性のQ&A』、『思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!』(主婦の友社) 性教育シールブック『おうちせいきょういくえほん』(主婦の友社)

ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。