親子で幸せになれる「がんばりすぎない」子育てと4つの価値観

認定応用ポジティブ心理学プラクティショナー・松村亜里さんインタビュー 第3回 ママの心を軽くする幸せな子育てとは

認定ポジティブ心理学プラクティショナー:松村 亜里

認定応用ポジティブ心理学プラクティショナー・松村亜里さんのインタビュー連載。第1回では自分自身のストレスや幸せ度をチェックする方法、 第2回では「セルフコンパッション」で育児のストレスを断ち切る方法について学びました。第3回では日本のワンオペ育児の問題点と時代の変化に対応できる子どもの育て方について。松村先生の子育て体験談を交えながらお聞きします。

親子で信頼関係を築けていることがAI時代を生き抜くポイントになる。  写真:アフロ
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子育てはまわりに手伝ってもらい、みんなでするもの

私は日本とアメリカ、両方の国での子育てをした経験を持つ、いまも子育て中の母親のひとりです。だから、日本のママのワンオペの多さと、パパが育児に使う時間が他の国よりもかなり少ないことに疑問を感じてきました。

まず、“父親は何のために働くのか?”。私を例にお話しましょう。私はニューヨークで出会った夫と日本に帰ってきて、そして子どもが生まれました。当初は家事と育児を夫と2人で分担していたのですが、家族で再びニューヨークへ行ってから状況ががらりと大変化。夫は大学院に通いながら、フルタイムで大学で講義をして、さらに週に1回は論文のためにフィラデルフィアまで3時間かけて通っていました。

私はというと、仕事を辞めて家事をすべてひとりでやることに。はじめは「私が全部やる」と言っていたのですが、しばらくして「これは無理だ」、と判明。結局、夫に「家族との時間がないのなら何のための仕事なの?」と話し合い、そして家事と育児を2人でシェアすることにしたんです。こうして我が家はシェアすることでワンオペ育児を解決しました。

そもそも子育ては本来ママ1人でするものではなく、パートナーや祖父母、隣人や友達、みんなが助け合ってするべきもの。実際、ひと昔前はそうしていたのに、今は個々でやるものになって、まわりに頼れなくなってしまっています。本当はまわりに弱さを見せ、素直に「手伝ってください」と言えた方が子育ては上手くいくはずだと思います。

自分の弱さを見せて人と繋がると、子育てのコミュニティができる

私自身の子育ての失敗談もお話しますね。私の場合は“やればできる”という万能感と、“できるから愛される”という条件付きの自己肯定感が強かったんです。だから子どもが生まれて仕事のクオリティが下がり、子育ても満足にできないという状況は、自分を責め続けて、本当に辛く感じていました。

そんな辛い時期を乗り越えられたのは、第2回でも解説した「セルフコンパッション」です。私の場合は、“完璧じゃない自分”と“完璧じゃない子どもたち”にイライラしていました。でも、人は完璧でないことが当たり前。不完全が完璧なのです。セルフコンパッションができるようになったら、人との繋がりができて楽に生きられるようになりました。

例えば、隣に住む人に子どものお迎えをお願いしたり、できないことを頼んだり。できない自分を出せるようになると、私にも知人たちは頼んでくれるようになり、コミュニティができて、私の子どもをかわいがってくれる人が増え、みんなで子育てをしている感覚になったんです。

こうして人と繋がることでとても救われました。実際に「スキルがある人と、人との繋がりが多い人、どっちが幸せに子育てをしているか」という研究では、繋がりが多い人が幸せに子育てをしているという結果が出たんです。私は心理学が専門で、スキルはあるはずなのに子育てが上手くできていなかった。これはセルフコンパッションと人との繋がりがなかったことが原因ということが明らかでした。

弱さを見せることで人と繋がるということは、子育てにとってはとても大切なこと。最初は勇気がいりますが、弱さを見せれば見せるほど、人は自分を好きになってくれるんです。人は誰でも、人に親切にしたいと思っています。そして助け合っていくのは素晴らしいことだ、と。その姿は子どもへも自然と伝わっていくように思います。

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