誰もが当事者になる「SOGI」
性的マイノリティを指すLGBTQ+とは異なり、誰しもが当事者であることを意味する「SOGI(ソジ/ソギ)」という言葉があります。
「SO=Sexual Orientation(好きになる性・性的指向)」と「GI=Gender Identity(自分の心の性・性自認)」の頭文字をとった言葉で、性自認や性的指向に関わらず、すべての性のあり方が含まれます。つまり、すべての人にSOGIがあるのです。
一人ひとりの性のあり方は違い、どの性を好きになるかも違います。また、他者に恋愛感情や性的欲求を抱かない人もいます。SOGIを起点に考えることで、性の多様性について誰もが自分ごととしてとらえ、個々を尊重することにつながります。
そしてもう一つ大切なのは、他人の性のあり方をからかったり、誰かに勝手に話す「アウティング」をしたりする「SOGIハラ」をしないことだと言います。
「男の子(女の子)だから~」というジェンダーバイアスがかかった価値観で育ってきた世代だから、ジェンダーを理解するのは難しいと感じる人もいるかもしれません。
しかし、「年齢は関係ない」と思わせてくれるエピソードを及川さんが話してくれました。
「本書を読んだ私の70代の母の話です。『感動した』と言っていたのでくわしく感想を聞いたところ、LGBTQ+やSOGIに関するページがとくに心に残ったそうです。
私の母は病気がちな父に代わって大黒柱として働きながら、家族を支えてきた人です。その母がよく『くやしい』と口にしていたのを覚えています。『仕事で結果を出しても、女性だから管理職になれない』などとこぼしていたので、ジェンダーについて不満を抱えていたのでしょう。
また、多様性について新聞などで目にする機会はあったけど、書籍を読んで深く理解することができたとうれしそうに話してくれました。母が住んでいる町の学校に書籍を寄付したいと考えているそうです」(及川さん)
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『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』の著者・及川夕子さんから、包括的性教育をベースにした価値観を全4回にわたりお届けしました。
最後に、及川さんからママパパへのメッセージを紹介します。
「お子さんのために本書を買われた場合も、まずは親御さん自身に読んでもらい、価値観をアップデートしてほしいです。読んだ内容をただ伝えるより、『こういうときはどうしたらいいんだろう?』と一緒に考えることで、お子さんとの絆も深まるのではないでしょうか。
お子さんが親御さんと性について話したがらない、反抗期を迎えているなど、一緒に考えることが難しい場合は『読んでみる?』とさりげなく本書を渡してもらうくらいで良いかも。それぞれ興味のあるところや必要だと思った箇所を読んでもらうといいと思います。
親御さんの価値観をお子さんに押し付けないことも大事です。無理やり押し付けても個人の心は変わらない、それは自分の経験からも実感しています」(及川さん)
自分の体に関する自己決定権や性的同意など包括的性教育を学ぶことで、自分はもちろん、他者を尊重する気持ちを育むことができるといいます。
まずは細胞たちと一緒に学ぶスタンスで手に取ってみるといいかもしれません。
取材・文/畑菜穂子
【脚注】
※1「SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」=基本的人権の一つで、性と生殖に関する健康と権利を指す。
※2「ジェンダー・ギャップ指数2022」=男女格差を測るもので、「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから作成される。https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2022/202208/202208_07.html
畑 菜穂子
1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona
1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona
及川 夕子
新聞社勤務を経てフリーランスに。新聞、雑誌、WEBメディアなどで、記事の企画、編集、執筆を手がける。近年は、女性の健康・美容、更年期のヘルスケア、医療分野の取材、執筆を中心に活動。 著書に『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』(講談社)。
新聞社勤務を経てフリーランスに。新聞、雑誌、WEBメディアなどで、記事の企画、編集、執筆を手がける。近年は、女性の健康・美容、更年期のヘルスケア、医療分野の取材、執筆を中心に活動。 著書に『365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』(講談社)。