SOGIってなに? 親がジェンダー観をアップデートすると子どもがラクに生きられる

10代の子と親が知っておきたい「性」の新知識 #4~ジェンダー編~

医療ライター:及川 夕子

「女の子は心配だから」と、男女のきょうだいで接し方を変えるなど、ママパパがジェンダーの固定観念を無意識のうちに子どもに押し付けてしまう可能性もあります。  写真:アフロ

SDGsの目標の一つとして掲げられている「ジェンダー平等」。言葉そのものを耳にする機会も増えていますが、ママパパがジェンダーを学ぶ意味や必要性はどこにあるのでしょうか。

『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』著者で医療ライターの及川夕子(おいかわ・ゆうこ)さんに聞きました。

※4回目(#1#2#3を読む)

及川夕子(おいかわ・ゆうこ)PROFILE
医療ライター。新聞社勤務を経て、記事の企画、編集、執筆を手がけるフリーランスに。近年は、女性の美容&ヘルスケア、医療を中心に活動。

一つひとつの質問に真剣に考え、答えてくれた医療ライターの及川夕子さん。  Zoom取材にて

「困っていない」は見えていないだけ

「ジェンダーの知識が必要」と言われてもピンとこないママパパもいます。自分ごとと、とらえるにはどう考えるべきなのか。医療ライターの及川夕子(おいかわ・ゆうこ)さんは「ジェンダー平等の実現は誰しも必要で身近なこと」と語ります。

「ジェンダーに関する知識は人によってさまざまですし、『自分は困っていない』と感じている人もいるでしょう。しかし、勇気を出して声を上げる人たちによって、ジェンダーに関する課題が明るみに出ています。『関心がないから見えていないだけ』ではすませられないほど、誰にとっても必要なのです。

先日、元自衛官の女性が告発したことで、自衛隊の性暴力が表面化し、女性への性暴力を行った自衛隊員が懲戒免職になりました。ジェンダーに基づく暴力や自分で決められる権利『SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)』(※1)について知らないままだと他者を傷つけてしまいかねません。

そしてそれは自分に跳ね返ってきて、自衛隊員のように職まで失うリスクが生じる可能性もあるのです」(及川さん)

大人がジェンダーについて学んでいないと、「男の子(女の子)だから~」と固定観念にとらわれた発言をしてしまう可能性もあるといいます。

「たとえば、親御さんが『女の子は理系が苦手』『男の子だからスポーツをさせたい』と決めつけることで、その子が本当に興味や才能のあることができなくなるなど、可能性をつぶしてしまいかねません」(及川さん)

本書では、ジェンダーの固定観念がジェンダー不平等や個人の生きづらさにも通じていると言及します。男女共同参画局が公表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」(※2)によると、日本の順位は146ヵ国中116位。先進国では最下位であり、男女格差の度合いが大きいことが明らかになりました。

「親御さん自らが『多様な考え方や自分が知らない世界はまだまだある』と思って発言するのと、『これが全てだ』と思って発言するのでは、まったく違います。お子さんのためはもちろん、親御さん自身のためにも、まずは大人がジェンダーについてしっかり学び、目を向けるべきだと思っています。

私たち一人ひとりが性暴力の被害者にも、加害者にもならないように考えたいですよね。そして、傍観者にもならないための教育も必要だと感じています」(及川さん)

本書に掲載されている「ジェンダー・ギャップ指数ランキング」。日本の男女格差の度合いに驚くと同時に「家庭内のジェンダーバイアス」に気づくきっかけにもなりそうです。  引用:『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』(講談社)より
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