土屋礼央さん(RAG FAIR)「結婚して“仕事・家庭”への考えが180度変わった」

土屋礼央さんインタビュー「結婚10年目で夫婦円満」の秘訣#1〜家庭と仕事編~

ユーモアを交えつつ、自分の結婚生活と子育てについて語ってくれた土屋礼央さん。
写真:間野真由美
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4人組の人気アカペラグループ「RAG FAIR」の、リードボーカルを務める土屋礼央さん。2021年3月に『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』を上梓されました。著書では、自身と妻との関係、子どもとの関係をありのままにさらけ出し、夫として、父として悩みながら奮闘する土屋さんの言動がユーモアたっぷりに描かれています。
「結婚して、僕の考え方は180度変わった!」という土屋さんに、家庭より仕事に重きを置く夫はどう変えられるか、一緒に考えてもらいました。

僕の24時間は家族のためのもの

2012年に結婚し、現在、小学校低学年の息子を持つ土屋さん。“出来ました婚”で始まった夫婦二人での共同生活、当初は怒られることばかりだったと、苦笑しながら振り返ります。

「僕はもともと、家の中が散らかっていても、多少汚れていても、気にならないタイプ。対して妻はとてもちゃんとしていて、常にキレイに整えていたい人。ですから当時は、何をやっても怒られてばかりでした(笑)。

布団の敷き方から掃除、洗濯、料理まで、怒られていないカテゴリーなんてないんじゃないかな。なにせ僕がかなり雑なので、彼女が怒るのも当然なんです。夫婦のどちらかが“家の中がキレイな状態だと気持ち悪い”という場合は話し合う必要があったかと思いますが、キレイな方が心地いいという感覚は、ズボラな僕も同じです。ですから一緒に暮らし始めた序盤は、僕が彼女の“キレイ”レベルに合わせていきました。今はだいぶ怒られなくなりましたよ!」

二人で暮らし始めて数ヵ月後に、第一子が誕生。そこから、土屋さんの生活はガラリと変わりました。

「子どもが生まれたら、もちろん自分も家事をやる気持ちではいました。しかし今考えれば、子どもの出生という現実を、表層でしかとらえていなかったんだなと思います。子どもの誕生後は、そもそも僕が思い描いていたような時間の使い方はできない、ということに気づかされました。

僕の24時間は自分のものではなく、家族3人のための24時間になったのです。家は3人の空間だから、仕事から帰ってきた自分が休憩できる場所というわけではない。自分のワガママを言えるのは1/3で、2/3はサポートに回らなければならない。食事の量も洗う量もゴミの量も、3倍になり、正直、『こりゃ大変だぞ』と思いました」

父親ができるのは地球上で自分しかいない

子どもが生まれる前までは、「仕事中心で動いている自分の生活に、家事と育児が加わる」という認識だった土屋さん。でも、その考え方でいてはダメだと痛感します。

「“仕事と家庭の両立”という言葉をよく耳にしていましたが、2つを今までと同じように進めるのは無理だと思いました。出産前から妻に『仕事をするための家族じゃない。家族のために仕事がある』と言われ続けていたことも、大きかったと思います。

仕事では僕の代わりはいるだろうけれど、家族の父親という立場は替えがきかない。「地球上に生きる人間として、自分がまず守るべきは家族だ!」と、いきなり壮大なスケールの話になりますが(笑)、そういう心境に至ったわけです」

そこで土屋さんは仕事のスケジュールを、家庭中心に考えて調整。土日の仕事はできるだけ避けるという方向にシフトしていきました。

「土日の仕事オファーをいただくと、もう心臓が縮まります(笑)。マネージャーは、いただいた仕事の話は全部僕のところに持ってきてくれて『とりあえずお伝えします。判断は土屋さんにお任せします』と言うわけです。

最初のころは、土日の仕事の依頼があるたび、妻に『仕事、入れていいかな?』と聞いていましたが、お伺いを立てるのが毎回つらくて……。ですから、仕事をお受けするかどうかまずは自分で考えて判断し、『これはどうしてもやってみたい』という案件であれば、妻に相談するようにしました」

この体制は現在も継続中。週末と祝日はできるだけ仕事をせず、家にいるようにしようと思ってはいるものの、葛藤はまだまだあると、土屋さんは笑いました。

「魅力的なお仕事の話をいただけば、やっぱり『やりたい!』という気持ちも生まれますから、なかなかスパッと思い切れません(笑)。妻に相談すると『月1回くらいなら……』と了解を得られることが多いので、マネージャーもそこをわかっていて『月1回は大丈夫そうなので、ここに入れますね』とすかさず来る。

ただ妻から『月1回なら、必ずOKするよ』と言われているわけでもないので、相談するときは毎回ドキドキ。僕は、妻とマネージャーとの中間管理職状態です(笑)。ただ『家族のための仕事だ』とは、今も自分に言い聞かせ続けています」

「結婚も子育ても、想定していないことの連続! 大変だけど、一人で生きていたら決して味わえない楽しさがあります」(土屋さん)
写真:間野真由美

結婚して子どもを持ち僕は変われたし変わってよかった

もともと仕事が好きで趣味も多く、独身時代は自分一人の時間を謳歌していた土屋さんですが、結婚して子どもが生まれたことで、その考え方が大きく変わったと話します。

「独身時代は『仕事より大事なことなんてない』という考えで、仕事仲間などから『今日は家庭の事情で、お先に失礼します』と言われると、『えぇ~!?』と思っていました。でも妻から『あと40年近く生きると考えて、子どもが“もうお父さんとは遊びたくない”と言いだすまでは、それほど長い時間じゃない。そんなたった数年もガマンできないの?』と言われて、正論にぐぅの音もでませんでした(笑)。

子どもが大きくなるまでは、子どもと一緒にいる時間を優先しよう、優先したいと思ったんです。ラジオなどでこう話すと、『土屋さんもついに、そっち側の人間になってしまったか……』と言われたりしますが、気にしません! 結婚して、自分のやりたいことはやれなくなりましたが、妻や子どもと一緒にいれば、自分一人では知り得なかった刺激をもらえる。その刺激に、僕はとてもワクワクするんです」

一緒にお風呂に入ったり、遊んだりと、子どもと過ごす時間を楽しんでいるなかで、思いがけないことがあったと、土屋さんはうれしそうに目を輝かせました。

「先日、子どもが初めて『パパ、歴史っておもしろいね』と、自分から“おもしろい”と思うものを見つけてきたんですよ! 僕は今、そのことにものすごくドキドキしていて、『彼が“おもしろい”と興味を持ったものに対して、僕からも何か提示できないかな』と考えているところ。こんなふうに頭が子どもモードにシフトしていて、自分のことは二の次、三の次なんですよね。

『人間、バージョンアップはできるけれど、根本的には変われない』という考えを持っていた自分が、こんなふうに180度変われたことに、自分自身がいちばんびっくりしています。世の男性みんなが変われるかどうかはわかりませんが、でも、結婚して子どもを持ったことで僕は変われた。自分の人生を楽しむために、変わってよかった。それは、自信を持って言える事実です」

「妻に怒られ続けた僕の経験や考え方が、少しでも皆さんのヒントになれば光栄です」(土屋さん)
写真:間野真由美
土屋さんの新刊『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)。

取材・文/木下千寿


※土屋礼央さんインタビューは全4回。2回目は21年5月23日8:00〜公開です
【第2回】土屋礼央さんインタビュー「結婚10年目、話し合うほど“妻の価値観”をステキに思う」


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つちや れお

土屋 礼央

歌手・アーティスト

1976年9月1日生まれ。東京都出身。2001年、アカペラボーカルグループ『RAG FAIR』のメンバーとしてデビュー。学生を中心に人気を集め、全国各地でアカペラグループ史上最高の動員数を記録、アカペラグループの立役者に。 また軽妙なトークも注目の的となり、2002年から『土屋礼央のオールナイトニッポン』を3年半担当。現在、TBSラジオ『赤江珠緒 たまむすび』、NACK5『カメレオンパーティー』、NHKラジオ第1『鉄旅・音旅 出発進行!音で楽しむ鉄道旅』、YouTube『土屋礼央らくごチャンネル』、ニコ生『チャンネル土屋礼央』にレギュラー出演中。 人間関係を円滑にするためのヒントを記した著書『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)が大好評発売中。

1976年9月1日生まれ。東京都出身。2001年、アカペラボーカルグループ『RAG FAIR』のメンバーとしてデビュー。学生を中心に人気を集め、全国各地でアカペラグループ史上最高の動員数を記録、アカペラグループの立役者に。 また軽妙なトークも注目の的となり、2002年から『土屋礼央のオールナイトニッポン』を3年半担当。現在、TBSラジオ『赤江珠緒 たまむすび』、NACK5『カメレオンパーティー』、NHKラジオ第1『鉄旅・音旅 出発進行!音で楽しむ鉄道旅』、YouTube『土屋礼央らくごチャンネル』、ニコ生『チャンネル土屋礼央』にレギュラー出演中。 人間関係を円滑にするためのヒントを記した著書『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)が大好評発売中。