土屋礼央さん(RAG FAIR)「結婚10年目、話し合うほど“妻の価値観”をステキに思う」

土屋礼央さんインタビュー「結婚10年目で夫婦円満」の秘訣#2〜会話とケンカ編~

「妻はこれからの長い人生、ずっと一緒にいる相手。だったら、共に過ごす時間は楽しいほうがいい」(土屋さん)
写真:間野真由美

4人組の人気アカペラグループ「RAG FAIR」のリードボーカルで、2021年3月に『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』を上梓された土屋礼央さん。著書では、自身と妻との関係、子どもとの関係をありのままにさらけ出し、夫として、父として悩みながら奮闘する土屋さんの言動がユーモアたっぷりに描かれています。
「結婚して、僕の考え方は180度変わった!」という土屋さんに、“夫婦円満”でいるための秘訣を一緒に考えてもらいました。

妻とどう幸せに生きていくかが僕の命題

著書の中で「自分の中で結婚前の僕を前世と呼んでいます。もしくは今が来世です」と語るほど、結婚を機に価値観が大きく変わった土屋さん。

「結婚すれば、確かに自分がやりたいこと全部はやれなくなります。しかしそれと引き換えに、妻と一緒に過ごすことで2倍、子どもがいれば3倍、4倍、一人の人生では決して知り得なかった刺激をもらえるという生き方に、興味が湧いたのです。結婚も子育ても、わからないことだらけでしたからね。ただし結婚生活は、ほかの個人的な趣味と違って『自分には合わないから、やーめた!』と途中で投げ出すわけにはいきません(笑)。

結婚生活に不満が出たときに、離婚という選択肢を考える人もいると思いますが、僕は子どもが生まれた時点でもう自分だけの人生ではないと思っているので、離婚という発想はまったく持たず、『妻と、どう幸せに生きていくか』を人生の目標に掲げて、日々を過ごしています」

土屋さんは「今の自分の家庭生活に欠かせないのは、妻の愛情です」と、キッパリ言い切りました。

「子どもはもちろん大切ですが、僕は妻から愛されなかったら、楽しいことなんてひとつもありません! わざと妻や夫のことを悪く言い、笑いをとる人がいますが、僕はそういうことをするために妻と結婚したつもりはない。せっかく夫婦になったのなら、二人の仲がいいほうがいいに決まっていますし、「この人と一緒になってよかったな」と思いたいじゃないですか。とくに子育て世代のご夫婦は、今はお互いに余裕がなく、いっぱいいっぱいかもしれません。しかし子育て期間よりも、子育てを終えてから夫婦二人で過ごす期間のほうが圧倒的に長いのです。だから結婚している男性には『ぜひ、妻を大事にしてください!』『妻への愛情は年金と同じですよ』と声を大にして言いたいですね。

妻からの愛情は、子育てが終わった後、もしくは老後に還付されます。今のうちからちゃんと妻を大事にし、愛情を持って接することで、楽しく心安らぐ老後が待っていますよ」

またご自身の実体験を踏まえて、妻である女性にお願いしたいこともあると言います。

「ぜひ、たまには夫に愛情表現をしてください。意外かもしれませんが、男性も愛されたいんです! 僕の場合で言うと、我が家に子どもが生まれてからは妻が子ども最優先、僕への眼差しがそこらにある日用品を見るような目でとっても寂しいです……。

毎日、妻に『今日は僕の目を見てくれるかな?』と思いながら『行ってきます!』と声をかけるのですが、そこで目も見ずに『いってらっしゃい』と言われると、朝から落ち込んでしまうんですよ(笑)。ちゃんと目を見て言ってもらえるように、僕ももっと頑張らないとね!」

「ぶっちゃけて言うのは恥ずかしいですが、今でも妻から『好き』と言われたいです!」(土屋さん)
写真:間野真由美

お互いリスペクトするところがあって結婚したはず

土屋さんの妻への深い愛情は、どういったところから生まれているのでしょうか。

「前提として、僕が妻の価値観や考え方をステキだと思っている、というのが大きいと思います。妻は僕から見ると、人として正しく落ち度がなくて、『妻の言うとおりに生きていれば、道を誤ることはない』と信頼しています。目指すべきは妻だと。家を建てる時も、室内の設えを考えるにも、子育てにしても、彼女のアイディアは『いいな』と思えることばかり。彼女のことを、とても尊敬しているんですよね。

妻も僕のことをそういうふうに言ってくれています。お互い、足りないところを補っているんでしょう。ただこれは僕ら夫婦に限ったことではなく、世のご夫婦もきっと、それぞれにリスペクトするところがあって結婚したはず。ですから、その根っこを思い出してみるといいのかな、と思います」

また、日ごろからたくさん会話を交わすことも夫婦円満には欠かせない、と土屋さん。

「もともと、僕ら夫婦はよく話をする関係性でした。今、僕はわりと家で仕事をしていて、妻もリモートワークで家にいることが多いので、会話の機会はさらに多くなっていると思います。子どもを学校に行かせた後、お昼ごはんを一緒に食べたりしていますよ。何か起きたとき、すぐにお互いの考えをすり合わせることができるという環境はいいなと思います。言い合いになることもたまにありますが、お互いの考えや思考回路がだいぶ分かってきているので、大ゲンカというのはもうないですね」

実のある夫婦ゲンカにするため勝ち負けにこだわらない

夫婦ゲンカというとイヤな印象が付きまといがち。ですが土屋さんは、「必要な夫婦ゲンカは、少しでも早いうちにしておいたほうがいい!」と言葉に力を込めました。

「ウチは昔から、話し合いや夫婦ゲンカを大事にしていました。お互いの考えや価値観を、率直にぶつけ合うのです。もちろん、夫婦ゲンカは本当にイヤなもの。僕は夫婦ゲンカしているときが、人生で一番イヤな時間です。せっかくこんなにツラいことをするのなら、実のあるものにしなければもったいない。

実のある夫婦ゲンカとは、『どうやったら夫婦が良好な関係でいられるか』を探ること。お互いに今思っていることを言い合えば、改善の糸口だって見えてくるはずです。“言い負かした”など表層的な勝ち負けにこだわらず、どうしたらお互いに歩み寄れるかを考える。それが、賢い夫婦ゲンカのやり方だと思います」

とくに夫婦間では知らず、お互い勝手に期待している部分がある、と土屋さんは分析します。

「夫や妻に対して、『こうあってほしい』『普通、こうするでしょ』など、伝えてもいないのに“くんでくれる”ことを期待しがち。でも、夫婦だってもともとは他人同士なのですから、“自分の気持ちをすべてくんでくれ”はムチャな話なんです。言いたいことがあれば、言葉にして伝える努力をしないと。“わかってくれていると思ったら、相手は全然わかっていなかった”というパターンは、普段の人間関係でもよくある話でしょう?

期待をするから、イラ立つ。だったら、最初からあまり期待しないほうが心穏やかにいられます(笑)。とはいえ、距離が近ければ近いほど、やってほしいことやわかってほしいことは出てきます。そのときは話し合いをいとわず、夫婦ゲンカをしてでも伝えてください」

相手が「仕事で疲れている」「明日も朝が早い」などを言い訳にして話に向き合ってくれない場合は、どうすればいいのでしょう?

「夫婦ゲンカとは、家庭という小さな“国”をよくするための議論です。生まれも育ちも違う二人が一緒に生きるのですから、節目で話し合いをしないと前には進めません。そういうときは仕事と同じように、『◎◎◎について話がしたいから、●日の▲時から、時間を空けてください』と相手にアポイントを取りましょう! 

直接言いづらいのであれば、メールやSNSを活用してもいい。そしてミーティングまでは、その話題に触れることを禁止する。そうすれば、話し合いをする前から家の中が気まずい空気になることもありません。そしてミーティングがどんなに苦しい時間になっても、決して途中で投げ出さないこと。我が家も結論が出るまで、休憩を挟み、朝まで話し合いを続けたことがあります。『夫婦ゲンカより優先される事項は、この世にない!』。お互いがこの気持ちを持っていれば、必ず結論を導き出せるはずです」

「前向きな夫婦ゲンカは、“人生の予防注射”。二人の関係性が本格的にこじれてしまう前に、向き合いましょう」(土屋さん)
写真:間野真由美
土屋さんの新刊『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)

取材・文/木下千寿


※土屋礼央さんインタビューは全4回。3回目は21年5月25日8:00〜公開です
【第3回】土屋礼央さんインタビュー「パートナーを変えるには相手をどれだけ思いやるか」


【第1回】土屋礼央さんインタビュー「結婚して“仕事・家庭”への考えが180度変われた」

つちや れお

土屋 礼央

歌手・アーティスト

1976年9月1日生まれ。東京都出身。2001年、アカペラボーカルグループ『RAG FAIR』のメンバーとしてデビュー。学生を中心に人気を集め、全国各地でアカペラグループ史上最高の動員数を記録、アカペラグループの立役者に。 また軽妙なトークも注目の的となり、2002年から『土屋礼央のオールナイトニッポン』を3年半担当。現在、TBSラジオ『赤江珠緒 たまむすび』、NACK5『カメレオンパーティー』、NHKラジオ第1『鉄旅・音旅 出発進行!音で楽しむ鉄道旅』、YouTube『土屋礼央らくごチャンネル』、ニコ生『チャンネル土屋礼央』にレギュラー出演中。 人間関係を円滑にするためのヒントを記した著書『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)が大好評発売中。

1976年9月1日生まれ。東京都出身。2001年、アカペラボーカルグループ『RAG FAIR』のメンバーとしてデビュー。学生を中心に人気を集め、全国各地でアカペラグループ史上最高の動員数を記録、アカペラグループの立役者に。 また軽妙なトークも注目の的となり、2002年から『土屋礼央のオールナイトニッポン』を3年半担当。現在、TBSラジオ『赤江珠緒 たまむすび』、NACK5『カメレオンパーティー』、NHKラジオ第1『鉄旅・音旅 出発進行!音で楽しむ鉄道旅』、YouTube『土屋礼央らくごチャンネル』、ニコ生『チャンネル土屋礼央』にレギュラー出演中。 人間関係を円滑にするためのヒントを記した著書『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』(KADOKAWA)が大好評発売中。