子連れワーケーションは仕事・子ども・滞在先「三方よし」 

親子deワーケーション主宰・児玉真悠子さん「子連れワーケーションのはじめ方」#2

ワーケーションコンシェルジュ:児玉 真悠子

栃木県那珂川町での子連れワーケーションの様子。川で遊ぶ子どもを眺めながら仕事中。 写真提供:児玉真悠子
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親にとっても子どもにとっても充実したワーケーションにするためには、日中の子どもの預け先はもっとも重要です。

現地の小学校への体験入学や保育所等の一時保育の利用、キッズアクティビティへの参加など、さまざまな選択肢があります。

今回は、子連れワーケーションを企画・推進する、一般社団法人日本ワーケーション協会公認のワーケーションコンシェルジュ・児玉真悠子さんが、「想像以上に素晴らしい経験になった」という長崎県五島列島での体験入学のエピソードをご紹介します。
※全3回の2回目。#1を読む

「今後も、親子向けに特化したワーケーション先を開拓していきたい」と話す児玉さん。 Zoom取材にて

「体験入学」が子どもの世界を広げてくれた

九州最西端に浮かぶ、150もの島々からなる長崎県五島市の五島列島。児玉さんは、前回トライした山口県萩市でのワーケーションから半年後の2020年1月に、五島列島最大の島・福江島(ふくえじま)で開催された「GOTO Workation Challenge2020」に、小5の長男と小1の長女を連れて参加しました。

これは、観光閑散期である真冬に開催することで、地域の経済効果を上げたいという五島市が打ち出した企画で、開催期間中4週間のうち3泊以上滞在してワーケーションをするというもの。

滞在中は小学校での体験入学や、保育所等の一時保育を利用できるという、子連れ家族にとっては貴重なオプションが付いていました。

五島列島の一つである福江島までは長崎空港から飛行機で約30分。母子3人で出発した。 写真提供:児玉真悠子

「五島の話を子どもたちにすると、小1の娘は『東京に戻ってきた時に、知らない漢字があるのは嫌だ』と泣いてしまって。なので、国語と算数については、事前に不在期間中の進み方を先生に伺うことで、安心してもらいました。

一方、息子は『そこってWi-Fiあるの?』と(笑)。昼間は新しい環境で頑張る分、夕方はいつもより長い時間Switch(Nintendo Switch)をやっていいことにしました。

結果、福江島の子どもたちともオンラインゲームをするようになり、帰京後もしばらくはオンラインでつながっていましたね」(児玉さん)

児玉さんは東京の在籍校に連絡をした上で子どもたちを1週間休ませ、3人で福江島へと向かいます。

入学初日の朝はガチガチに緊張していたという2人ですが、「子どもは本当に慣れるのが早い」そうで、「楽しかった!」と笑顔で帰宅。

雨が続いていたため、室内でのカードゲームや、あやとりなどで子どもたちの距離はすぐに縮まっていきました。

子どもたちが体験入学をした五島市立福江小学校。宿泊先から徒歩5分。 写真提供:児玉真悠子
子どもの背中に緊張感漂う初日の登校風景。「生徒たちみんなが大歓迎してくれて、想像以上に素晴らしい経験となりました」(児玉さん)。  写真提供:児玉真悠子

子どもたちは毎日、「牛乳が瓶じゃなく紙パックだった」「給食に鯨の肉が出た」「給食後に歯磨きタイムがあった」などと、東京の小学校との違いを発見するたびに、目を輝かせながら報告してくれたと言います。

「東京の暮らししか知らない2人が福江島に来て、目に写る景色や学校生活の違い、漁師や農家としての暮らしがあることなどを知り、自分が所属している社会が全てではないと体感できたと思います。

子どもの世界はどうしても目の前の見えるものだけに偏りがちですからね。

親は仕事、自分たちは学校と、旅行とは違って暮らしの延長になるからなのか、世の中には『いろいろな日常があること』をより実感できたんじゃないでしょうか。

私自身、10歳以降大学生まで3年おきに父親の転勤で居住地が変わりつつ育ちました。そうした環境から新しいコミュニティに入ることに抵抗がなく、就職や転職、独立の時も恐れずに楽しむことができた。

これは人生を楽しむための1つのスキルではないかと思うんです。

異世界での体験が自分を成長させてくれたと思うので、子どもたちにも、どこかでアウトサイダー体験をさせたかった。その点でも短期体験入学はピッタリでした」(児玉さん)

「長男は思春期に入っていたのでうまくやれるか少し心配でしたが、お別れの際には涙を浮かべていました」(児玉さん)。 写真提供:児玉真悠子
「娘は『今日は◯人とお友達になったよ』と日に日にその数が増えていき、本当に楽しそうでした」(児玉さん)。 写真提供:児玉真悠子

帰京後に、長男が夫に話した言葉がとても印象的だったと児玉さんは続けます。

「『違う人の人生を生きたみたいだった』と言ったんです。すごく素敵な感想だなと思って。

自分自身を俯瞰(ふかん)して見ることができたこの貴重な体験は、この先、壁にぶつかった時にも近視眼的にならずに物事と向き合える、言わば生きる力につながるんじゃないかと思います」(児玉さん)

時間が限られているからこそ仕事の効率が上がった

気になる仕事はというと、「東京にいる時と同じようにできました」と児玉さん。

子どもたちが登校した7時30分から、下校する15時30分までがワークタイムです。滞在先ホテル1階のコワーキングスペースで、美味しいコーヒーを飲みながら机に向かいます。

環境が変わりリフレッシュできたこと、また時間が限られていることで、ダラダラと仕事をしなくなり効率もさらに良くなったと言います。

宿泊した「セレンディップホテル ゴトー」の1階にあるコワーキングスペースにはカフェも併設されていた。 写真提供:児玉真悠子
お昼はホテル前にやってくるキッチンカーでカレーをテイクアウトし調達。 写真提供:児玉真悠子

「学童には通えなかったので、下校後は思いきり子どもたちと遊ぶために、それまでは集中して仕事に取り組めました。持ち込んだ仕事を全て終わらせるべく、ミーティングを入れないよう事前に調整していたのもポイントですね」(児玉さん)

放課後は近くのビーチで子どもたちとプレイタイム。海を眺めることで心身ともにリフレッシュできる。 写真提供:児玉真悠子
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