レ・ロマネスクTOBIが明かした “型破りな父”に育まれた自立心

レ・ロマネスクTOBIさんインタビュー#1~幼少期編~

ドライな親子関係が育んだ自立心

彼を突き動かした外の世界への憧れ。それを育んだのは、先に紹介した父親とのドライな関係だったといえます。

「小さい頃から、深夜にスナックや賭場(とば)へ連れて行かれたし、博打(ばくち)の負債を持って来るよう呼び出されたことも。子どもに悪影響なんじゃないかって、普通なら考えますよね(笑)。それってある意味で、父が僕を対等に見ていたんだと思います。

父とは親子という枠組みではあるものの、べったりの関係ではない。親に依存する気持ちがないから、父に対して『お前のせいでこうなった』とか思わないし、進学など将来を見据えた選択を自分で考えることが多かった。

ありがたかったのは、そのうえで僕の考えは肯定してくれたことです。それって父が僕を一人の人間として接してくれたからで、それが子どもの目線からだとドライに映っていたんだと思います」

フミャアキとのエピソードを語る中、思わず笑ってしまうTOBIさん。
写真:水野昭子

「理想の父親像」は特になし

TOBIさんは現在、2人の小学生の父親です。自身の経験を踏まえ、子どもたちにどう見られたいかを聞いたところ、特別好かれたいという気持ちも、「理想の父親像」も特にないと話します。

「世のお父さんの多くは『理想の父親像』をお持ちなんですかね? どんな性格だろうが父であることは変わらない。僕にとっては、ひょうきんそうでいて家ではおとなしいフミャアキが、当たり前の父なんです。

人それぞれ個性があるし、子どもだって性質がバラバラ。だったら、子どもによって『理想の父親像』も違うでしょう。それを一括りにして最適解を見つけるのは難しいと思います」

TOBIさんは「理想の父親像」に縛られすぎると、親自身が人生を楽しめなくなる可能性や、子どもに対して過度にレールを敷くことでそれ以外の可能性を奪うことを危惧している。
写真:水野昭子

「型破りなフミャアキに育てられたって、僕は今を楽しく生きられている。親としては、子どもが幸せであれば過程にこだわる必要はないんじゃないでしょうか? だから僕は、親になっても気負わず楽しく生きて、その姿を子どもに見せたい。

例えば趣味や遊びで『子どものためになるもの』を探すんじゃなくて、自分がいいと思うものを子どもと一緒にやってみて、2人とも楽しければさらにラッキーというか。一緒に楽しめるものがなくても別に気を落とす必要はない。だって親と子どもは違う人間なんですよ。ずっと一緒にいるから、よく話をするからといって、いい親子関係とは限らないですよね。

とはいえ、うちの父に関しては、家庭内の“そとづら”をもう少し気にしてくれてもよかったんじゃない?とは思いますが(笑)」

独特な親子関係は、小説に書いたことで好意的に受け止められるようになったそう。しかし、父親の“そとづら”については思うところがあるようです。

第2回では、その経験から自身の子どもとどう接しているのかを伺います。

TOBIさんの作家デビュー小説『七面鳥 山、父、子、山』。自身の幼少期を舞台に、父親との関係を描いている。

取材・文/井上良太(シーアール)


※TOBIさんのインタビューは全4回。
次回(#2)は21年10月28日公開予定です(公開日までリンク無効)。

22 件
れ・ろまねすくとび

レ・ロマネスクTOBI

アーティスト

●レ・ロマネスクトビー  広島県比婆郡(現在の庄原市)出身。フランスで結成された音楽ユニット「レ・ロマネスク」のメインボーカル。相方・MIYA(ミーヤ)と、ピンク色のコスチュームで歌い踊るキッチュな楽曲とパフォーマンスで人気を集め、2008年春夏パリコレでのライブをきっかけに、世界12ヵ国50都市以上で公演。09年、フランスの人気オーディション番組に出演した動画のYouTube再生回数がフランスで1位を記録し、「パリで最も有名な日本人」となる。 2011年のフジロック出演を機に日本に拠点を移す。精力的にシングル・アルバムをリリースし、2013年には『お伝と伝じろう』(NHK Eテレ)のメインキャストに抜擢(2022年現在も放送中)。2018年には、自らの稀有な体験をまとめた書籍『レ・ロマネスクTOBIのひどい目。』(青幻舎)が話題になる。 近年は、ラジオパーソナリティ、『仮面ライダーセイバー』(テレビ朝日)のタッセル役をはじめとする俳優業、自伝小説『七面鳥 山、父、子、山』(リトルモア)の刊行など、ますます活動の幅を広げている。2児の父。 「キューブ」オフィシャルHP 「レ・ロマネスク」オフィシャルHP レ・ロマネスク公式Twitter レ・ロマネスクTOBI 公式Twitter

●レ・ロマネスクトビー  広島県比婆郡(現在の庄原市)出身。フランスで結成された音楽ユニット「レ・ロマネスク」のメインボーカル。相方・MIYA(ミーヤ)と、ピンク色のコスチュームで歌い踊るキッチュな楽曲とパフォーマンスで人気を集め、2008年春夏パリコレでのライブをきっかけに、世界12ヵ国50都市以上で公演。09年、フランスの人気オーディション番組に出演した動画のYouTube再生回数がフランスで1位を記録し、「パリで最も有名な日本人」となる。 2011年のフジロック出演を機に日本に拠点を移す。精力的にシングル・アルバムをリリースし、2013年には『お伝と伝じろう』(NHK Eテレ)のメインキャストに抜擢(2022年現在も放送中)。2018年には、自らの稀有な体験をまとめた書籍『レ・ロマネスクTOBIのひどい目。』(青幻舎)が話題になる。 近年は、ラジオパーソナリティ、『仮面ライダーセイバー』(テレビ朝日)のタッセル役をはじめとする俳優業、自伝小説『七面鳥 山、父、子、山』(リトルモア)の刊行など、ますます活動の幅を広げている。2児の父。 「キューブ」オフィシャルHP 「レ・ロマネスク」オフィシャルHP レ・ロマネスク公式Twitter レ・ロマネスクTOBI 公式Twitter