子どもとママの法律相談 SNSに書き込んだママ友の悪口は犯罪か? 弁護士が解説

こんな時、どうすればいい? 子どもとママに関わる法律相談〔第3回〕

弁護士:西田 穣

写真:アフロ

もはや生活のなかでなくてはならない存在といってもいいSNS。情報収集や息抜き、ママ友を含む友人・知人との連絡だけでなく、周囲には言えない気持ちをこっそり吐き出すツールとして活用している人も少なくないのではないでしょうか。「匿名の別アカウントをつくれば自分だってバレないし、みんなこれくらいのこと言ってるよね」。そんな軽い気持ちがきっかけとなったSNSトラブルは年々増加し、2022年には侮辱罪が厳罰化されています。いったいどういう行為が“犯罪”になるのか、西田穣(にしだみのる)弁護士に伺いました。

仲間内の噂話のつもりでもきっかけさえあれば炎上してしまう

ママ友とのトラブルの原因のひとつとして最近増えてきたのが、SNS内での会話をめぐるものです。

もちろんSNSがなかった時代でも、数人のグループ内での会話の「Aちゃんママはほんと空気が読めないよね。この間のアレはないわ」「Bくんママ、なんか最近服装派手じゃない? 不倫とかしてたりして」といった陰口とも噂話ともつかない会話は、いたるところで繰り広げられていました。時にはその話が巡り巡って本人の耳に入って揉めることもあったでしょう。

ただ、会話に参加していた本人たちの記憶もあいまいで、時間が経てば忘れ去られてしまうそれらの会話と違い、SNSでは文字で残ります。それだけに、陰口を言われていた側からすればショックも大きく、「許せない」という気持ちが長く続いて大きなトラブルに発展しやすいのだと思います。

ここで法律的な視点を少しお話しすると、SNSと一言でいっても、書き込まれたのがLINEグループのような閉じられた空間か、TwitterやInstagramといった不特定多数の人が目にすることができるツールなのかによって、事情は少し変わってきます。

LINEグループの場合、参加しているのはほとんどが顔見知りの人だと思われます。人数が4~5人であれば、先ほど一昔前の状況として例にあげたような「井戸端会議で話題に上った」のとほぼ同じ状況と言えます。もちろん言われている側としてはたまったものではありませんが、社会的影響としてはあまり大きくないと言えるでしょう。

問題が大きくなりがちなのは、FacebookやTwitter、Instagramなどに誹謗中傷を書き込んだケースです。こうしたツールでは、コメントはシェアやリツイートであっという間に拡散してしまいます。どこの誰だかわからない人たちにまで広く知れ渡ってしまい、事態に何の関係もない人たちから面白半分に攻撃的なコメントがつくようになる。そうすると、書かれた側は相当な心理的ダメージを受けるわけです。

いわゆる炎上と呼ばれるような状態になると、たとえ元のコメントを削除しても拡散先のどこかには残っていて、完全に消すことは事実上不可能です。また、「うちのクラスのあるママさん」など本人はボカして書いているつもりでも、話の内容や前後の投稿からその気になれば意外と簡単に特定ができてしまうのがSNSの怖いところです。

書いたことがたとえ事実でも「名誉毀損罪」になる!?

もうひとつ重要なことは、コメントの表現です。例えばママ友との素敵なランチの写真がアップされたInstagramの投稿があったとします。そこについたコメントとして「不倫女のくせに優雅なランチですね(笑)」と「良いママぶってるけど、▲月◆日に旦那さんじゃない男性とホテルに行ってましたよね」とでは、法的トラブルに発展した際にどちらがより重い処罰の対象となる可能性が高いと思いますか?

前者は「侮辱罪」、後者は「名誉毀損罪」に問われる可能性があります。この2つは、どちらも名誉に対する罪にあたります。違いは、具体的な事実内容を示しているかどうか。「不倫女」のような具体的事実を伴わないものは「侮辱罪」、「▲月◆日に旦那さんじゃない男性とホテルに」のような具体的事実を伴うものは「名誉毀損罪」となります。

写真:アフロ

以前は刑法では侮辱罪に適用される刑罰は「拘留(30日未満)または科料(1万円未満の金銭支払い)」、名誉毀損罪の場合は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」となっていました。しかし、SNSでの誹謗中傷が社会問題化したことなどを受けて、2022年に刑法が改正され、侮辱罪のほうは「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」と大幅に引き上げられました。

また、侮辱罪や名誉毀損罪は刑事事件としてだけでなく、民事で争われることもあります。誹謗中傷により名誉毀損罪が成立する場合、誹謗中傷を受けた側は精神的苦痛に対する慰謝料(損害賠償)を請求することができます。

では、現に不倫の事実があって、ホテルに行ったのが本当だったとしたらどうでしょう? 実は、事実かそうでないかにかかわらず名誉毀損罪は成立します。もちろん根も葉もないデマを流すことは悪質な行為ですが、事実を公にすることでその人の社会的評価を下げるおそれがある場合にも適用されるのです。

ここで、改めて整理してみると、
◆侮辱罪
公然(不特定多数が見聞きできる状況)と、相手が特定されうる状態で、その人の社会的評価を低下させるおそれのある行為をした場合。罰則は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料

◆名誉毀損罪
公然(不特定多数が見聞きできる状況)と、相手が特定されうる状態で、事実の摘示(具体的な事実内容を示す)をともなって、社会的評価を低下させるおそれのある行為をした場合。罰則は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金
※具体的内容は、真実であるかデマ・噓であるかは問わない。

たとえママ友の言動にむしゃくしゃしたからといって、軽い気持ちで「不倫女」などとコメントを書き込むのは、非常にリスキーな行為です。また、たとえ正義感や道徳心からだとしても、他人の不倫の事実を不特定多数の人の目に触れる可能性があるSNSに書き込むのはやめておいたほうが賢明ですね。

メディアで名誉毀損罪が成立する場合、しない場合

ちなみに、TVや週刊誌、ネットニュースなどはどうなのだろうと疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

名誉毀損罪には、示された事実が公共の利害に関していて、なおかつ真実であるときには問われない、という例外があります。例えば大企業のトップが禁止薬物に手をだしていたり、政治家が交通違反をしていたりといった場合などです。

たしかにこれらはプライベートな事実であり、記事に書かれたことで社会的な評価は低下します。しかし、それが真実であり、公共性の高い人物が行っていて、記事によって明らかにすることが社会のためになる場合は、名誉毀損罪は成立しない可能性が高くなります。

ただし、芸能人やスポーツ選手など有名人の私生活を面白おかしく暴くのは、この例外にはあたりません。また、政治家であっても、公共の利害に関するものではない場合、名誉毀損罪が成立することも十分ありえます。あること無いこと書き立てられても彼らが刑事告発に踏み切らないのは、いちいち対処していたらきりがないとか、訴訟することによるイメージ低下を避けたいという理由から、渋々がまんしているにすぎません。内心、とても傷ついたり怒ったりしているかもしれないのです。

「有名人だから何を言ってもOK」は通用しない時代に

記事だけでなく、そこにつけるコメントも同じ。有名人相手なら何を言ってもいいわけではありません。ネットニュースや本人のSNSについた誹謗中傷コメントが原因で自ら命を絶った女性プロレスラーの件では、何人か有罪判決が出て賠償命令が出ています。

最近では明らかなデマやフェイクニュース、度を越えた誹謗中傷に対して法的措置を求める有名人も増えてきました。また、先ほど説明した侮辱罪の厳罰化からわかるように、社会としても匿名で誹謗中傷することを許さないという風潮の高まりもあります。「そういう媒体だから」「これくらい有名税でしょ」「みんな言ってるから」と軽い気持ちで誹謗中傷コメントを書き込むと、ある日突然訴訟を起こされるかもしれません。

インターネットやSNSのように新しい技術やツールに対しては、法の整備が追い付いていないのも事実です。ただし、今後は徐々にそうしたことも解消されていくはず。一方で、使う側のモラルも大切です。SNSという正しく使えば便利で楽しいツールを悪用してはいけないという姿勢を、大人が示していかなければいけません。子どもが知識不足からそうしたことをしていたときにきちんと𠮟るためにも、SNSへの誹謗中傷コメントをストレス解消の手段にはしないようにしたいですね。

にしだみのる

西田 穣

Minoru Nishida
弁護士

慶應義塾大学文学部(史学科)卒業。西武鉄道株主訴訟弁護団(2004年~2016年)、日本弁護士連合会取調べの可視化本部事務局次長(20...