再生数900万回超! 78歳が作る“ティッシュアート”に子どもも大人もビックリ!

ティッシュアートおじいちゃん・藤田孝士氏インタビュー#1~活躍編~

ライター:佐藤 美由紀

ティッシュアートで花を作る藤田孝士さん。その姿はまさに“花咲かじいさん”だ。  写真:佐藤美由紀

ようやく秋の気配を感じられるようになった今日このごろ。秋、と言えば……芸術、アートですね。ということで、“ティッシュアート”なる芸術!?で、世界中の人から称賛されている“すごいおじいちゃん”を紹介します。広島県福山市在住、年金暮らし、78歳の藤田孝士(ふじた・たかし)さんがその人です。

動物、植物、建造物……。ティッシュペーパーから生み出したさまざまなアート作品を動画でインスタグラムに投稿していますが、それが昨今、大バズり。再生回数が900万回を上回る動画もあるのですから、あっぱれ!!

※1回目/全2回

インスタグラムの動画再生数が900万回超え!

細長い松の葉を繊細に表現した盆栽、どう見ても本物にしか見えないバラや蘭などの花々、石垣の上にそびえる天守閣……。年金で生活しながら、ティッシュアートを趣味としている藤田孝士(ふじた・たかし)さんのアトリエ兼ギャラリーには、これまでに手がけた作品がずらり。

「ここにあるもんは、すべてティッシュでできとるんじゃけど、みんなびっくりしてんですよ。『へぇー、こうなもんまでティッシュでできるんですか?』言(ゆ)うてね。

いやいや、ティッシュじゃけぇこそ、できるんです。ほかのもので作ろう思うても、なかなかできんけど、ティッシュじゃったら、水と糊さえあれば、おもしろいほど、どんなもんでもできてしまうんよ」

松の幹や枝などの芯には新聞紙などを用いるため、この程度の大きさの作品なら、使うティッシュは1箱弱、要する時間は1週間ほど。「これなんか、ちょっと本物みたいでしょう?」  写真:佐藤美由紀

現在78歳の藤田さんがティッシュアートを始めたのは70歳のとき。誰に教わるでもなく、本を参考にするでもなく、独学で試行錯誤を重ねながら創作活動を続け、気がつけば、これまでに手がけた作品は1000点以上に。

お孫さんの勧めで2年ほど前(2021年)からインスタグラムに作品を紹介する動画の投稿を始めましたが、今年(2023)に入って大バズり。フォロワーは14万人(2023年9月現在)、再生数が900万回を上回った動画もあるというから驚きです。

「たくさんの人が見てくれちゃって、ありがたいことです。私はよう見んのじゃけど、娘がいちいちチェックしてくれて、『誰それさんも見てくれとってよ、あら、誰それも……』言うて教えてくれるんです。

それによると、有名な俳優さんたちやプロのアーティストも見てくれとってみたいなんですわ。ほんまにうれしいことです」

お年寄りから子どもまで楽しく作れる!

緻密さに圧倒されるものあり、思わず頰が緩んでしまう素朴なものあり、カラクリに驚かされるものあり……。「よくもまぁ、ここまで作れるものだ」と感心すると同時に、さぞかし苦労も多いだろうと思いきや、「大変なことはありません。楽しいばぁ(楽しいばかり)です」と藤田さんは即答。

「ティッシュアートのええとこは、見ても楽しいけど、自分で作っても楽しいとこなんよ。私は、その楽しさをたくさんの人と共有したいと思うとります」

そうは言っても、ティッシュという身近な材料を使うとはいえ、アートはアート。誰にでもできるわけではないような……。才能、の2文字が頭をよぎったりして。

「いやいや、70歳までアートとは無縁で生きてきた私が、たかだか8年でここまでできるようになったんじゃけぇ、誰にでもできます。『私はようせん』言うて人が多いけど、やってみもせんで言うたらいけん(笑)」

コロナ禍で中断したものの、かつて藤田さんは、小学校や商業施設のイベントなどで子どもたちに、敬老会や高齢者施設などでお年寄りに、それぞれティッシュアートを教えることもありました。

そんなとき、“生徒さん”たちはみんな、ちゃんと作品を完成させて持ち帰ったということです。その中には、「私にはできない」と言っていた人も含まれていました。

「みんなやればできるんよ(笑)。ティッシュアートは、何千万円、何百万円もするような、一部の人にしかできんもんじゃのうて(できないものではなくて)、みんなのアートなんですわ。

子どもからお年寄りまで誰でもできる。認知症の人でも、手が多少不自由な人でもできます。

普通、アート言うたら、高い教材買うて、専門の先生について、10年も20年もかかって、やっと、なんとかものになる感じじゃろう? けど、ティッシュアートは違うんですわ。

手軽に始められて、誰でも楽しめて、独学でも数年で私くらいのレベルにはなれる。こうなええアートは、他にないと思うんじゃけどね(笑)」

ティッシュアートで世界中の子どもを笑顔に

ティッシュアートの魅力を多くの人に知ってもらい、創作の喜びを共有したい。これが、藤田さんの願い。インスタグラムで作品を披露しているのも、小学校や高齢者施設で作品の作り方を教えるのも、そんな思いがあってのことです。

「ティッシュアートが広く浸透するとええなぁと思うとります。町中の人が作るようになって、例えば、みんなが作った花を市役所に飾ったら圧巻じゃろうし、病院に展示してもええよね。今、病室には本物の花を飾ることができんじゃろう? じゃけぇ、ティッシュでできたリアルな花を飾るゆうのもええよねぇ」

こんなふうにして、少しずつ、少しずつ、ティッシュアートが日本の隅々まで浸透し、さらには世界中に広まることが、藤田さんの夢。

「私が住む福山の市花はバラ。つまり、福山は“バラの街”なんですわ。じゃけえ、観光なんかで福山に来ちゃった人に、ティッシュ製のバラの花の作り方を教えてあげたら、『いい思い出になったわ』と喜んでくれてと思うんじゃけどね。外国の人ならなおさら。最高のおもてなしになるんじゃないですかね。

作り方を覚えたら、その人が帰ってからまた別の人に教えて、どんどん広まっていきますよね。バラの花の作り方なんか簡単なんで、ボランティアさんが教えてもええんじゃないんかね。子どもさんでもええ。バラの花は小学生くらいだったら作れますから。国際交流にもなると思うんじゃけど」

藤田さんの夢は、どんどん膨らみます。

「実は私の究極の夢は、世界中の子どもたちをティッシュアートで笑顔にすることなんです。今、戦争や紛争などで世界の子どもが難民になったりして危険にさらされとります。もちろん、いちばん必要なのは、子どもたちを、そうした環境から救い出すことです。でも、アートも必要なんじゃないかと思うとります。

食べ物も十分じゃないような劣悪な環境でアートなんか……と思われるかもしれんけど、アートは、束の間でも、子どもたちの心を癒やして、笑顔にすることができるんじゃぁないでしょうか。NGOの人たちがティッシュで花や動物を作るのを、難民の子どもたちに教えてくれたらええなぁ、と」

こんな究極の夢を叶えるために、これまでにも増して活発に活動していこうとしている藤田さん。創作と並行して、「教えて広める」ことを積極的にやっていきたいと意欲を語ります。

「未来を担う子どもたちにティッシュアートのおもしろさを伝えていきたいんよ。小学校で教えとったんも、そうな思いがあったからなんじゃけど、コロナで全部中断したけぇね。

じゃけど、これからまた教えることにも力を注ごうと思うとります。小学生もええんじゃけど、今後は、園児にも教えたいと思うて、今、『何を教えようか』と研究しとるところです。楽しみで仕方がありません」

ティッシュアートのおもしろさを知って笑顔になる子どもが一人増え、二人増え……。こうして“ティッシュアートのおじいちゃん”の夢は実現に近づいていくのでしょう!

ギャラリーは入場無料。  写真:佐藤美由紀

アトリエ兼ギャラリー『ティッシュアート 紙の城』
住所:広島県福山市新市町新市628‐4
※開館日時、休み等は不定期

次のページへ ティッシュアートの見ごとな作品photoは次ページへ
26 件