「ChatGPT」が教育現場にも進出! 子どもが培っておきたい能力とは?〔専門家が徹底解説〕

次世代教育クリエイター・鈴木敏恵さんに聞く、子育て中の親が心得ておきたい「チャットGPTの使い方」 #2 自ら価値を生み出せる子どもに育てるために

次世代教育クリエイター:鈴木 敏恵

親世代が手間取っている間にも、子どもたちはすぐに新しいツールを使いこなします。 写真:アフロ

「意志ある学び」をテーマに、教育の未来について提言する次世代教育クリエイター・鈴木敏恵さんにお聞きする「ChatGPT」の利用の仕方について。
1回目では、ChatGPTのメリットとデメリットについてお話しいただきました。

2回目では、ChatGPTが当たり前になる世界で、これからのデジタル教育はどのように変わっていき、またどのように変わっていくのがいいのかを、鈴木さんにお話しいただきます。


(全3回の2回目。1回目を読む)

鈴木敏恵(すずき・としえ)
次世代教育クリエイター、一級建築士、「シンクタンク未来教育ビジョン」代表。国立大学法人北海道教育大学(教職論)PBL特別講師「意志ある学び─未来教育」をコンセプトに、プロジェクト学習、ポートフォリオ、対話コーチングなどを融合させた次世代教育の設計思想から実施を全国展開。AI(artificial intelligence)時代の教育、次世代プロジェクト学習の構想・提唱。

教育はAIが果たせないことに注力しよう

──鈴木さんは、ご著書『DXとポートフォリオで未来教育』(日本看護協会出版社)や講演で、「知識を正確に習得し、与えられた正解を導くことが重視されたこれまでの教育と受験システムが、ChatGPTの登場によって大きく変わろうとしている」とお話しされていますが、具体的にはどのようなことなのでしょうか。

鈴木敏恵(以下、鈴木さん):これまでの学校教育は、同じ教室で同じように学び、同じ評価の観点で子どもを評価し、「社会や組織」から求められる人材を育てるよう力を注いできました。

いわゆる「言われたとおりのことができる人」です。しかし、そうしたことは、AIが私たち人間よりもはるかに、上手に効率的に果たす時代がすでに始まっています。

これからの時代、価値を持つのは、「社会に求められる人」ではなく、自ら価値を創造する「未来の社会を生み出せる人」。

単に学校の成績が良い子よりも、とにかく植物に詳しく、例えばタンポポの種類を見極めて、種から繁殖させることが得意な子のような、他の人にはないオリジナリティが評価のひとつになると思います。

就職試験でも、どんな資格を持っているかではなく、その資格を使って「何を成しとげたか」が問われていくことになるでしょう。

つまり、現在重要視される偏差値だけでは、その子の素質やセンス(感性)、未来へのビジョン、可能性などは計れません。一人ひとりの違う才能や得意分野、価値観を大切にして伸ばす教育が必須です。

そのために、教師や保護者に求められるのは「指導」することではなく、一人ひとりと未来を志向しながら「対話」する能力です。

──生徒が自主的に課題を見つけ、対話をしながら解決する能力を育てる「総合学習」が科目に取り入れられて約20年。日本の義務教育も変わってきていると思いますが、いかがでしょうか。

鈴木さん:知識を現実と結びつける教育にようやく日本もシフトしてきましたが、そもそも「課題を発見しよう」という考え方に違和感があります。学校の用語で「課題」といえば「宿題」のこと。先生から与えられて、眉間にしわをよせてやるイメージですよね。

オンライン取材中の鈴木敏恵さん。

鈴木さん:あとは、日本の「課題」としてよく挙げられる少子化やシャッター商店街。「お年寄りが多くて、後継者もいなくて、今の若者は大変だ」と、課題と聞くだけで子どもを暗い気持ちにさせているのは問題です。

課題を解決すれば良い社会になるわけではありません。やってもようやく標準点をとれるだけですから。今の教育に欠けているのは、「目指すべき未来があって、自分も活躍できる」と子どもが思えるような、ワクワクする「ビジョン」だと思います。

「自分はこうしたい!」と意志ある子に未来は明るい

鈴木さん:どんな社会にしたい? どんな自分になりたい? 「未来にありたい」状態を頭に描いて、始める前からワクワクしてしまうもの。それが価値あるビジョンです。

ビジョンは、”何のために”という「目的」であり、こうなりたいという「願い」でもあります。

「いい大学に入りたい」はビジョンではありません。「何のために、何をやり遂げたくて入りたいのか」、「自分にとって、いい大学に入るということは、どういう意味を持つのか」と、深い部分まで問いを重ねていく。そして、そのあとに「じゃあ、今はどうなの?」と現状を把握して、「なりたい状態」と「現実」の間にギャップがあることを知る。そのギャップを埋めることが「課題」です。

そうやって考えを深めたり、解決のために必要な知識を得たりするために、ChatGPTは役に立つでしょう。

1回目でもお話ししましたが、AIから正確な答えが常に得られるわけではありません。自分もChatGPTも不完全であることがわかっていれば、大いに活用していいと思います。

お子さんが、もしタンポポに関心があり育てていたら、「タンポポどうだったらいいの?」とか「どうしたい?」と言葉をかけてみてもいいかもしれません。「もっとたくさん蕾をつけたらいいな」「来年も咲いたらいいな」とか未来への願い=ビジョンを口にしてくれるかもしれません。

「そのためにどうしたらいいかな?」と、ChatGPTに具体的にできることを教えてもらっても楽しいでしょう。もちろん、ほかの方法で確認しつつね!

──ChatGPTとの対話は、子どもにとって未来を考えるトレーニングになりそうですね。子どもが自ら「私はこうしたい!」と思えるようになるには、保護者はどのように導いてあげたらよいのでしょうか。

鈴木さん:わが子がふだん夢中になっていることは何か、時間を忘れるほどのめり込んでいることはないか。よく観察してみてください。すべての人にそういう「種」はあるし、特に小学生のお子さんには必ずあります。

中学生や高校生になると、先生や大人が喜ぶようなことも言いはじめるので、人の価値観をまだあまり知らない小学生のときだからこそ持っている、その「オリジナリティ」や、その子だけの「マイワールド」を、親御さんは大事にして応援してあげてほしいですね。

大事なのは好奇心 そして他者と生み出す「共創力」

──保護者も一緒になって面白がって未来を想像するということですね。

鈴木さん:そう思います。思考力を高めて「自分はこれをやりたいんだ」という意志のある子に未来は明るい。保護者も子どもと一緒に、未来に向けて心を立ち上がらせることが一番の教育でしょう。親や周りの大人を見て、子どもは無意識に模倣しますから。

ChatGPTがどれほど知識や情報を持っていても、実際に動いて何かを生み出すのは、人間の仕事です。いろいろな人と出会い、新しい考えや価値観に触れたり、互いに共感し、協力して何かを作り上げる熱意や誠実さが求められます。

今が「AI時代」だといっても、結局のところは人間性や、「人とつながる力」が大切であるということは、言うまでもありません。

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AIには果たせない、未来の社会を生み出せる子を育むためには、まず学校や親が価値観を変えていくことが必要であるとわかりました。

3回目では、実際にChatGPTに質問し、より精度の高い対話の仕方を、引き続き鈴木さんから教えていただきます。

取材・文/鈴木美和

鈴木敏恵さんのChatGPT連載は全3回。
1回目を読む。
3回目を読む。
(※3回目は2023年8月22日公開。公開日までリンク無効)

すずき としえ

鈴木 敏恵

Suzuki Toshie
次世代教育クリエイター

次世代教育クリエイター・一級建築士・architect・「シンクタンク未来教育ビジョン」代表。国立大学法人北海道教育大学(教職論)PB...