子育て中の親が心得ておきたい「ChatGPTの使い方」 教育的メリットとデメリット

次世代教育クリエイター・鈴木敏恵さんに聞く、子育て中の親が心得ておきたい「チャットGPTの使い方」 #1 使うための想像力を養う

次世代教育クリエイター:鈴木 敏恵

2023年7月4日、小中高生の生成AI利用の暫定ガイドラインが発表されました。  写真:アフロ

「ChatGPT」とは、アメリカの『OpenAI社』が、開発したジェネレーティブAI(生成AI)を使ったチャットサービスです。2022年11月にスタートし、2ヵ月で月間アクティブユーザーが世界で1億人を突破。2023年5月には、日本版アプリもリリースされました。

文章作成や添削、校正、調査、分析、プログラミングなど、さまざまなビジネスシーンで活用されていますが、教育現場においての活用も期待されています。

しかし、アメリカはChatGPTに対して「学校教育が機能しなくなる」と危惧する声が多く、一部の学校では利用を制限しています。

日本でも政府主催のもと、日本におけるChatGPTの規制を決めるAI戦略会議が開催され、2023年7月4日、文部科学省より「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が発表されました。


(引用元:「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」の作成について

文科省の考えとしては、

「子どもの発達の段階や実態を踏まえ、教育に効果的か否かで、生成AIの利用を判断する(特に、小学校段階の児童に利用させることは慎重な対応を取る必要がある)

とありますが、実際にChatGPTが子どもたちにもたらす影響とはどのようなものなのでしょうか? ChatGPTの教育的メリット、デメリットについて、次世代教育クリエイター・鈴木敏恵さんにお話をお聞きしました。


(全3回の1回目)

鈴木敏恵(すずき・としえ)
次世代教育クリエイター、一級建築士、「シンクタンク未来教育ビジョン」代表。国立大学法人北海道教育大学(教職論)PBL特別講師。「意志ある学び─未来教育」をコンセプトに、プロジェクト学習、ポートフォリオ、対話コーチングなどを融合させた次世代教育の設計思想から実施を全国展開。AI(artificial intelligence)時代の教育、次世代プロジェクト学習の構想・提唱。

「目的」を持って使えば学びをサポートする味方に

──「歴史上、最も急速に成長している消費者向けアプリ」と言われるChatGPTですが、一体どのようなツールなのでしょうか? まずは、ChatGPTについて教えてください。

鈴木敏恵さん(以下、鈴木さん):ChatGPTは、コンピュータープログラムの一種で、ユーザーがテキストで質問などを入力すると、まるで人間のように自然な会話ができる人工知能です。学習データとして膨大な数の単語や文章を読み込んでいて、それらに基づいたさまざまなトピックスについて対話することができます。

──高校生や、大学生が勉強のサポートに使うのはわかりますが、まだ基礎学力が身についていない小学生や、未就学児にはどんな影響があるのでしょうか? 

鈴木さん:例えば、ハサミや火、スマホやインターネットなどと同じように、どんな道具やテクノロジーにも、メリット・デメリットはあります。スマホに関しては、みなさんが一番そのメリット・デメリットがおわかりになるではないでしょうか?

いずれにしても、言えることは、とにかく使ってみないとわからないということ。そして、技術の進化は止められないし、私たちの生活が便利になっているのは否定できません。

「何だかわからなくて怖いから禁止する」のではなく、親も子も性質をわかったうえで、適切な使い方を学ぶことをおすすめしたいですね。

オンライン取材中の鈴木敏惠さん。

──かつて、テレビゲームやYouTubeが、子どもの生活に入り込んだときのように、1日の利用時間を決めたり、不適切な使い方をしないよう保護者が目を光らせたりするということでしょうか。

鈴木さん:「1日○時間まで」といった時間の問題ではないと思います。ChatGPTなど生成AIは、ゲームのように誰かが作ったもので楽しむ、といった受動的なものではなく、自分自身が何か「目的」があって活用するものですから、
「何のために使うのか」を、子どもに問いかけてみましょう。ChatGPTを使う「目的」や、それを使って成しとげたい「目標」を子ども自身に考えさせたうえで使うのはOKです。

例えば、工作や料理、音楽など、自分の手で何かを生み出すための知識や方法を知るために使うのか、それともAIが構成したものを単に受け取るだけなのか。どちらが面白いかといったら、圧倒的に前者のほうが面白いし、身につきますよね。

否定したり、避けたりするのではなく、個人情報は入力しないなど基本的なことを気をつけつつ一緒に試してみる、という姿勢で使ってみるのはいかがでしょうか?

ChatGPTの回答が多角的な視点を持つヒントになる!?

──実際に使ってみると、ChatGPTの文章は確信に満ちていて、どれも信じてしまいそうになりますが、なかには間違った情報もあるのでしょうか。

鈴木さん:ChatGPTは、インターネット上の無限に近いテキストや情報の組み合わせによって回答を出しますが、いつも正確な情報が返ってくるとは限りません。偶発的なミスもあります。

「必ずしも正確な情報とは限らない」という認識で、常に保護者がほかの方法でも確認する、という振る舞いを子どもに示すことは重要です。

大人でもネットに流れる情報を見極めることは難しい世の中ですから、気をつけたいポイントですね。

そんな親や周りの大人のふるまいを見て、子どもは自然とAIとの接し方を学んでいきます。
一方で、ChatGPTの回答は、自分ひとりでは思いつかなかったアイデアや視点を提供してくれるメリットもあるんですよ。自分の経験では得られなかった考え方や価値観に、ハッとさせられることもあります。

そういうときは、「その視点はなかった。なるほど!」と、謙虚な気持ちを持ってChatGPTの答えと向き合うことができれば、多面的・多角的に物事を見る力が養われます。幅広く物事をとらえる姿勢、新しいアイデアを取り入れてみようとする意識は、子どもの学びと成長につながりますよ。

そして何より、知識や情報を得るときは、ChatGPTなどAIだけでなく、他の手段でも確認すること。「根拠があることや事実こそ大事なんだ」という姿勢が大事と言えるでしょう。

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