「強制的な宿題はなし」でも自ら学ぶクラスへ〔子どもの主体性を信じた公立小学校教員の驚きの実践〕

現役教員に聞く 子どもが主体的になるヒント#3 宿題編

──子どもたちの取り組み状況は、どの程度なのでしょうか?

大窪先生:やるやらない、提出頻度も含めて任意なので、毎日取り組んで提出する子、週に数回の子、もっと少ない子など幅があります。ただ、まったく出さない子はいないですね。

内容も子どもによってまちまちです。算数や漢字などの教科学習をする子もいれば、自分の好きなことを調べてまとめてくる子もいます。

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教室には自主学習を提出するかごが用意されている。  写真:川崎ちづる

──実は、授業の取材のときに自分の自主学習ノートを持ってきて、誇らしげに見せてくれる子がいたんです。ほかの子からも、「自分で内容を決められるからいい!」「好きなことを調べられてすごく楽しい」などの声を聞きました。一方で、「決まっていることをやったほうがラク」と話す子もいました。

大窪先生:当然、そういう子もいますよね。実際、自分で考えるのは楽しいばかりじゃなくて、しんどい面もあります。簡単ではないけれど、なにが自分の成長につながるのかを知る機会にしてほしいと思っています。

「自主学習はとても楽しい」と話す子のノート。  写真:川崎ちづる

──「自主学習」も子どもが「自分で決める」機会の一つなのですね。ただ、計算や漢字練習などの宿題がないと、子どもに基礎的な学力が身につくのか不安に思う保護者もいると思います。

大窪先生:漢字は毎週金曜日に小テストをしているので、それに合わせて自分で覚えておいてね、というスタンスです。書いて覚える子もいれば、見て覚える子もいます。何回繰り返せばいいかも、子どもによって違います。「自分がどのくらい見たら(書いたら)覚えられるかを学ぶこともすごく大事だから」と伝えて、各自で判断してもらっています。

算数の場合は、「今日は新しい単元に入ったから、できたら1回は問題を解いてみて」などの声かけはしています。

一律の宿題を出しても自分に合った方法はわかりませんから、自主学習で自分なりの学習方法を見つけてほしいと思っているんです。

強制的な宿題のデメリット

──「宿題」を出さないのは「自分で学ぶ力」を身につけるため、という意識からなのですね。

大窪先生:それに加えてもう一点、「強制的な宿題の負の側面を実感したから」という部分もありますね。これは、自分の子どもを見ていて痛烈に感じたことです。

僕の息子(小学校6年生)は、「やらされる勉強」が大嫌いです。宿題も嫌々やっているので、1枚のプリントを終わらせるだけでものすごく時間がかかります。

そんな彼の様子から、宿題の強制が「勉強・学習=嫌なもの」というネガティブな感情を植えつけていることに、改めて気がつきました。身につくものよりも、学習自体を嫌悪してしまう逆効果のほうが断然、大きいです。これは保護者、そして教員としての経験から、僕の中では確信に近いです。

──宿題について、保護者から「もっと出してほしい」といった要望はないのでしょうか。

大窪先生:前任校でも、僕のところに直接そうした意見が届いたことはありません。

自主学習については普段から、「こんな考え方でやっています」と学級だよりなどでも伝えていますから、応援や後押しをしてもらうことのほうが多いと感じます。

子どもが自主学習で取り組んだ作品。水に浮かべてろうそくに火をつけると鉄の棒に熱が伝わり、そのエネルギーで船のように進む仕組み。  写真提供:大窪昌哉氏
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