「強制的な宿題はなし」でも自ら学ぶクラスへ〔子どもの主体性を信じた公立小学校教員の驚きの実践〕
現役教員に聞く 子どもが主体的になるヒント#3 宿題編
2024.12.10
「学習する意味」を子どもが理解できることが大切
──「宿題がないと勉強しなくなって困る」「自分でやる子はいいけど、うちはそれじゃダメ」といった声も多いですから、もっと保護者からの要望があるのかと思いました。
大窪先生:僕に直接、意見をしないだけで、「うちの子はある程度、強制しないとやらない」と思っている保護者の方はいるかもしれません。
宿題の有無ではありませんが、数年前にドリルの解答を配布することについて、意見をいただいたことはありました。
僕は基本的に、ドリルやプリントは子どもたちに解答を配って、自分で答え合わせをするようにしています。自ら間違いに気づいて修正することは、すごく大事だと思っているからです。学年問わず、1年生でも渡しています。
保護者の方からは、「うちの子は答えをもらったら絶対、丸写しをするから、渡さないほうがいい」と言われました。その際に、僕はこう話したんです。
「確かに最初はそうかもしれないですが、繰り返し伝えれば、子どももわかると思うんです。ただ早く終わらせるために答えを書き写すなら、そもそもやる必要なんてないよ、と話して、子どもが学ぶ意味を理解できるようにしましょうよ」と。
その保護者の方が納得してくれたかはわかりませんが、その後はそうしたことは言われなくなりました。
──そこまできちんと説明してくれれば、納得できる保護者も多いのかもしれません。
大窪先生:同じようなことを、子どもたちには授業をとおして常に話しています。
「漢字を学習するのは使えるようになるためだから、カンニングしてテストだけ良い点を取っても何も残らない。だけど、一生懸命覚えてその結果が50点だったとしても、間違えた部分を復習さえすれば100点と同じだよ」と伝えています。
小学生のうちは、宿題などで子どもに強制的に学習させることができるかもしれません。でも、この先ずっと「○○をやりなさい」と保護者が指示していくわけにはいきません。
子どもはどこかで自立しなくてはならない。だから、少しずつでもその力をつけていくことが、すごく大事だと感じます。
保護者の方には、「まずは子どもを信頼しましょう」と伝えています。子どもを信じていたら、悪い方向ばかりにいくことはないんです。もちろん、小さな裏切りはあるかもしれないですが、ちゃんと方向修正できる。実は僕自身も、そういつも言い聞かせていますね。
保護者も間違いを認め、反省する
──ここまでお話をお聞きして、保護者もまずは子どもを信頼すること、強制ではなく学習の意味を伝えることが大切なんだと、改めて感じました。
大窪先生:偉そうにお伝えしましたが、僕も親としての立場だと、宿題をしない子どもにヤキモキする気持ちは痛いほどわかります。
「これは大事だから絶対やったほうがいいと思うよ。でも○○(子どもの名前)の問題なんだから、自分で判断しなよ!」という言い方をしてしまうこともあります(笑)
──宿題や勉強を強制する言葉を口に出す前に、立ち止まる方法は何かあるんでしょうか。
大窪先生:それはかなり難しいですね。僕自身も、これをやれば絶対大丈夫、というようなノウハウがあるわけではありません。
親も完璧ではないですし、間違ったり失敗したりすることはあります。だから、まずは言ってしまったあとに振り返って、「あれはよくなかったな」「またやっちゃったな」と反省する。それを習慣にすることですかね。
これは第2回でもお伝えしましたが、口に出した内容が「子どものため」という仮面を被った「自分の願い・欲望」なのではないか、と気づくことが第一歩になると思います。それを繰り返していくうちに、口にする前に立ち止まれることが増えてきます。
そうやって、保護者も子どもと一緒に、ちょっとずつ成長していくのではないでしょうか。
第4回は、子どもが主体性を発揮するために重要となる「先生と保護者の連携」について、大窪先生と前任校の保護者3名に、座談会方式でお話をうかがいます。
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【大窪昌哉(おおくぼまさや) プロフィール】
大学卒業後、一般企業の経理部に7年間勤務し、小学校の先生になるため30歳で退職。通信大学で小学校の教員免許を取得して、逗子市内の小学校にて教員人生をスタート。2024年度から葉山町立上山口小学校に勤務。子どもたちと学びを楽しみ、みんながいきいきとした素敵な時間や場を共創するために、さまざまな学びの場へ参加している。
取材・文 川崎ちづる
【現役教員に聞く 子どもが主体的になるヒント】の連載は、全4回。
第1回を読む。
第2回を読む。
第4回を読む。
※公開日までリンク無効
川崎 ちづる
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。
大窪 昌哉
大学卒業後、一般企業の経理部に7年間勤務し、小学校の先生になるため30歳で退職。通信大学で小学校の教員免許を取得して、逗子市内の小学校にて教員人生をスタート。2024年度から葉山町立上山口小学校に勤務。子どもたちと学びを楽しみ、みんながいきいきとした素敵な時間や場を共創するために、さまざまな学びの場へ参加している。 ※写真:竹花康
大学卒業後、一般企業の経理部に7年間勤務し、小学校の先生になるため30歳で退職。通信大学で小学校の教員免許を取得して、逗子市内の小学校にて教員人生をスタート。2024年度から葉山町立上山口小学校に勤務。子どもたちと学びを楽しみ、みんながいきいきとした素敵な時間や場を共創するために、さまざまな学びの場へ参加している。 ※写真:竹花康