進学の選択肢「通信制高校」 生徒数は史上最多29万人超! リアルな実態と問題点を専門家が解説

認定NPO法人カタリバ代表理事・今村久美さんに聞く「通信制高校」 #1 ~通信制高校はどんなところ?~ 

認定NPO法人カタリバ代表理事:今村 久美

自分のペースで学べる

通信制高校の最大のメリットは、なんといっても「自分のペースで学べる」という自由度の高さでしょう。

通信制高校は、戦後に全日制・定時制の高校に通学できない働く若者に、通信の方法で高校教育の機会を提供する目的で設立されました。

かつては中学を卒業してすぐに働く勤労青少年の入学者が大半でしたが、現在ではその対象が大きく広がっています。

例えば不登校経験者や病気、ケガなどで通学が困難な人、芸能活動やスポーツなど学業以外の活動に専念したい人、高校卒業資格を取得したい人など、さまざまなバックグラウンドを持った人たちなど。

近年、社会の多様化するニーズに対応する通信制高校が増えており、その人気は年々高まっています。その結果、一部の学校では入学希望者の増加により入学が難しくなるケースもあります。

写真:アフロ
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現実のギャップに直面することも

通信制高校の人気が高まる中、今村さんは、次のような見解も示しています。

「明確な目標があって通信制高校を選択する場合、自分のペースで学び、学校生活を送れるというメリットは大きいです。

しかし、なかには通信制高校の性質や特徴を十分に理解しないままに、『自由な学校生活』『好きな時間に学習できる』といったメリットだけに目を向けて選択してしまう生徒が増えている印象も。そして実際、入学後にイメージと現実のギャップに直面し、継続することが難しくなるケースが多く見られます」
(今村さん)

今村さんがこのような懸念を抱く背景には、通信制高校を取り巻く現状にあります。

平成29年の文部科学省の調査によると、通信制高校の生徒の約2人に1人が不登校を経験しています。(広域通信制で66.7%、狭域通信制で48.9% 〔参考/『不登校の教科書』P237〕)

その一方で、現在、小・中学校の不登校の生徒数は過去最多の34万6482人となり、前年度と比べて15.9%の増加となっています。その状況を踏まえると、高校の不登校の生徒も同様に増加するのではないかと考えられるでしょう。
(参考/https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

しかし、今村さんが取材をもとにまとめたデータでは(2023年度)、小・中学生の不登校は全国平均1000人あたり37.2人に対し、高校生の不登校は全国平均1000人あたり23.5人と減少に。

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