小学校お受験の模擬試験「行動観察」対策とは?

庶民嫁が見た! 受験本ではわからないTOKYOお受験の裏側④

ライター:華子

写真:アフロ

中流家庭からプチセレブ一家へ嫁いだライター・華子。愛娘は自分と同じ普通コースで育てようと思っていたものの、義母の一言から、小学校受験への道が始まりました。
まったく未知だった東京のお受験は、庶民にはわからないことだらけ! 受験マニュアルには決して書かれていない(書けない)、お受験の赤裸々な裏話をお伝えします。

第4回は「小学校お受験の模擬試験:行動観察編」です。

模擬試験はトイレの中まで!?

「小学校受験の模擬試験」といえば、どのようなものを想像しますか?
大学受験の模試は大きな会場でいっせいに行う筆記テストですが、小学校受験の模試は未就学児が相手なだけに、ちょっとそれとは様子が違うのです。

統一模試のように大学を会場にした大規模なものから、各お教室が開催する小〜中規模、志望小学校別に受験層を絞ったものまで幅広く、試験内容もペーパー試験もあれば、運動、集団考査、面接などさまざま。さらに親の模擬面接試験まで用意されています。お受験未経験者にとっては未知の世界。初めてその地に足を踏み入れた私自身も興味津々でした。

まず、模擬試験当日は子どもがご機嫌でなければいけません。その日その時に向けてなんとかご機嫌を保ち、「これから楽しいところに行くよ〜」という雰囲気を醸し出して連れて行くのが最初の課題です。なんとかだましだまし会場に連れてきても、やはり大人数がいる場では、小さい子どもは圧倒されてしまいます。

気持ちを落ち着かせるために入ったトイレでは、個室から何やらママと子どもの声がゴニョゴニョと聞こえてくる。どうやら、これまでお勉強した内容を復習させているらしい。

こ、こんなところでまで!?

と誰もが思うでしょう。そう、模試であっても開始直前まで、まさに「寸暇を惜しんで」お勉強していたのです。まだ本番の試験は1年先だというのに、皆さんすごい意気込み。「ちょっと体験してみよう」などと好奇心半分で足を運んでしまうと、とんだ場違いな空気感になってしまうので要注意です。

「行動観察」は子と親のミッション・インポッシブル

数ある試験科目の中で、もっとも厄介なのが「行動観察」です。これは試験会場で初めて会ったばかりの子どもたちとグループを組まされ、挨拶もそこそこにいきなりチームのみんなで「仲良く協力しあって」課題を成し遂げなければいけないという、まさに“幼児版ミッション・インポッシブル”。集団行動の様子を見る試験なのですが、出題される課題は毎回違うし、そのとき組むメンバーのキャラもわからない。

ともすれば、ゴジラのごとく破壊行動にはげむ子や、最初から最後までギャン泣きする子がいる阿鼻叫喚グループに入る場合もあるのです。そうでなくとも幼児とは予測不能な行動をするもの。それだけに突発的アクシデントばかりで、対策を立てるなんて到底できない。親にとってもそれは“ミッション・インポッシブル(=不可能な指令)”だったのです。そもそも、

・「行動」に点数をどうやってつけるの?
・どんな行動をすると満点なの?
・だいたい「満点」なんてあるの?
・努力次第で何とかなるものなの?

などなど、採点方法もナゾだらけのこの試験。ペーパーと違って正否がハッキリしないうえに、学校によって好まれる子やチェックポイントが異なるという話を聞いたり、模試を主催するお教室によっても評価基準が違ったりするとか。何もかも曖昧すぎて正解がよくわからないだけに、混迷を極めがちなのがこの行動観察の対策なのです。

さらに恐ろしいことに、この試験ではお行儀や躾けはもちろんのこと、それ以上にその子の性格が良くも悪くもバッチリわかってしまうのです。生まれ持った性格はそう簡単には変えられません。だからこそ、この試験においてマイナスと思える部分が見つかったとしても、それをなかなか矯正することができず、対策を立てるのが非常に困難なのです。

目が死んでるといわれた娘の短所を最大のプラスに!

我が娘も最初、もっとも苦手だったのが「行動観察」でした。
おそらく個性や協調性を見る目的なのでしょうが、人見知りの私にとってもやりたくない試験です。だから私の分身と言われる娘=“ミニ華子”が、この試験会場に放り込まれるたびに、戸惑い、尻込みしてしまっていたのも非常によく理解できたのです。

もちろん、そんな娘の評価が良いはずはありません。届いた試験結果を見てみると、案の定、かなり厳しい講評が目に飛び込んでくる。その内容は、試験中の行動が項目別に5段階評価されていて、補足のコメントが添えられています。娘の試験評価は、ザッとまとめるとこんな感じでした。

・覇気がない
・イキイキとしていない
・お友達に指示されたことは聞くが、積極的に動いていない
・みんなが仲良く課題を作っている間、傍観している
・最後の方はさりげなくサボっているようにも見える

以上の結果から全体評価は5段階評価中2点でした。

……わかる。娘の気持ちが非常にわかる。きっと私もそうだから。
だから当然叱ることなんてできません。だけど、このままでは到底合格点にとどかないので、何とか娘のキャラをいかせる方法を見つけ、さらに「映える」ように見せる作戦を考えなければいけない。つまり、娘のマイナス点と思われる部分を、逆に長所にみせる手段はないか探ることにしたのです。

そこで、まずは「行動観察」模試の採点ポイントを、自分なりに分析してみることにしました。
そうして改めて採点表を見てみると、驚いたことに、なんと細分化された評価項目には「目の輝き具合」まであるではないですか。「それって試験官の主観じゃないの!?」と思いつつ見てみると、

エッ!? 5点満点中0点!!

……それって、つまりは「目が死んでる」ってこと?

確かに、模試の会場に入る娘のテンションは低かった。だけど「本当にこんなことまで小学校の試験官は採点するの?」「このナゾの査定基準は何?」等々、娘の目の輝きに0点を付けられたことにかなり戸惑いましたが、でも確かに目がイキイキしている子は好感度が高い。しかし、そうはいっても「もっと目をキラキラさせて」という指導はできないので、まずはより修正可能なところを探すことにしました。

なんでも、採点者いわく高評価なのは、「元気でハキハキしていて明るく、課題の成功に向けてみんなを導くリーダーシップが取れる子」なのだとか。これは娘とは真逆なタイプ。初対面の集団には気おくれしてしまう娘にリーダー的ポジションを取るよう指導するのは、間違いなく無謀です。

では、逆にもっともダメなのは何かというと、「激しく輪を乱す行為」らしい。小心者の娘はその点は安心。なので、間を取って、さりげなくみんなをゴールに導けるような「潤滑油的存在」を目指すことにしました。

具体的には、課題の始めに皆でする“作戦会議”のときに何とか話の輪に入り「うん、うん、それいいね!」などと声を出して相槌を打つように教えました。とにかく協調性をアピールするには「仲間に加わっている感」をわかりやすく表に出すことが大切だと思ったからです。

しかも、その肯定的に後押しをする役目=ヨイショ的ポジションは、運が良ければ「言い出しっぺにOKを出す控え目なリーダー」に見えるかもしれない……という淡い期待も抱きつつ、「ポジティブなサブキャラ」を目指すことにしたのです。これだったら、グイグイ引っ張っていく積極的キャラではない娘もできそうです。

さらに「チームの役に立っている感じ」を出すために、ボーッとせずに最後までとにかく動き回って何かやることを見つける、もしくは、何かしている風を醸し出せるように指導。これがなんと功を奏し、それ以降の行動観察の点数が少しずつ伸びていったのです。

この体験からわかったのは、どんな性格でも“見せ方”次第ということ。性格そのものを変えるのではなく、性格のマイナスに見える点を覆い隠し、美点によせることが出来ればいいだけなのです。それが出来るのは、実はお教室の先生や模擬試験のアドバイザーではなく、ずーっと一緒にいて我が子の性格を熟知している親なのではないでしょうか。

あと、模擬試験の試験官の評価を深刻に捉えず「参考程度」にすることも大切です。なぜなら、行動観察の場合、お題も組む人間も一期一会。その場限りの評価になるし、そのときの子どもの機嫌や体調といった状況がかなり評価に影響を与えるからです。

行動観察で見るポイントは各学校のカラーによって違うでしょうし、何より模試では子どもの評価しかないけど、試験本番では親がリカバーすることだってできます。
「自分勝手な行動をしがち→みんなを引っ張っていこうとする気持ちが大きすぎて気が急いてしまう」、「引っ込み思案→相手の気持ちをおもんばかるあまり一歩踏み出すことに躊躇してしまう」など、行動観察で現れるであろう子どものマイナス的な行動を、逆に長所と捉えてもらえるような願書を書いたり、面接でフォローを加えたりするなど、親の機転次第でいくらでも印象が変えられるからです。

長所と短所は表裏一体。
だからこそ、マイナス点を美点のように伝えることも可能なのではないでしょうか。

次回は引き続き、模擬試験対策「面接」についてお伝えします。

【1回目】小学校合格の下準備「お教室面接」には高級果物と身上書!
【2回目】小学校合格を握る「生まれ月」と「紺スーツ」とは!?
【3回目】小学校お受験で身につく“子どもの品格”とは?

※この記事は、ライター華子の個人的体験及び感想に基づくものです。私見のため、一般的な見解とは異なる場合があります。また、一部については創作的表現が含まれております。

はなこ

華子

ライター

ライター。一般的なサラリーマン家庭で育ち、公立で小・中・高を過ごす。都内の大学卒業後、プチセレブな夫と出会い、結婚。女児の母。庶民との差に日々驚きつつも、平然なふりを装ってアセアセと暮らしている。 TOKYOお受験の裏側

ライター。一般的なサラリーマン家庭で育ち、公立で小・中・高を過ごす。都内の大学卒業後、プチセレブな夫と出会い、結婚。女児の母。庶民との差に日々驚きつつも、平然なふりを装ってアセアセと暮らしている。 TOKYOお受験の裏側