世田谷区発・赤ちゃんが先生の“赤ちゃん授業“で中学生が気づいたスゴいこと
東京都世田谷区で実施「赤ちゃんとのふれあい体験授業」#1 ~活動の始まり編~
2023.03.06
編集者・ライター:関口 千鶴
他人事ではなく自分事として考えることから
また、参加するママパパだけではなく、この体験授業を通じて、中学生たちにも感じてほしいことがあると松田さんは続けます。
「中学3年生は最高学年で、進路を決めなくてはいけない時期でもあります。親からは『自立をしなさい!』といわれることも多いと思うのです。でも、私はきちんと人に助けを求められるようになることも大切だと考えています。
この先、生徒たちが子育てする年齢になったとき、困っていてもいなくても、誰かに助けを自然に求められるようになってほしいのです。そういうことも毎回お話ししています」(松田さん)
常日頃、松田さんはママパパに伝えていることがあるといいます。
「子育ては絶対に1人ではできない。いっぱい人に助けてもらいながらやっていくものですといつも伝えています。赤ちゃんだけでなく、ママパパも、誰かに支えてもらうことでよい環境で子育てをすることができます。
この体験授業で、中学生たちが、リアルに子育てしているママパパたちと話すことによって、そんなことも感じ取ってもらえるとうれしいですね」(松田さん)
さらに、同じ地域に住む人同士が交流するきっかけにもしていきたいと語ります。
「残念ながら、現代は『知らない人に声をかけられたら逃げなさい!』ということを子どもに伝えなければならない世界になってしまいました。
でも、せめて自分の住んでいる地域だけでも、周りの大人への信頼感や、みんなが自分を見守ってくれているのだという感覚をもってもらいたいです。
それを育むには、同じようにこの地域で暮らしている、いろんな世代の人がいるということを知ってもらうことからだと思っています。
だから、授業の中では、街で赤ちゃんやママパパを見かけたら、ニコッと笑顔を向けてあげてほしい、手を振ってあげてほしいと必ず伝えています」(松田さん)
あるとき、こんな感想をいった生徒もいました。
「僕らの中学校は災害時に避難所になります。なので、いざとなったら僕たちが子どもの世話をするかもしれないので、今日の経験はとても役立つと思いました」
松田さんは、「なんて立派な考えをもっているのだろう」と強く感心したといいます。
「こんなふうに、いろんなことを他人事ではなく、自分事に置き換えて考えられるようになれば、相手を尊重することもできるようになると思います。そして、その地域で暮らしていくことに希望が見出せるようになるかもしれませんよね」(松田さん)
“赤ちゃんと中学生”という、一見ミスマッチな組み合わせから生まれているあたたかな交流がそこにはありました。
気になる体験授業の詳細な様子は、次回お届けします。
取材・文・撮影/関口千鶴
【脚注】
※1=【妊産婦2000人大規模調査PART2】7割の母親が日本は産み育てにくいと実感。最大の理由は経済的不安。
※2=赤ちゃんとのふれあい体験授業「赤ちゃんを連れて学校へ行こう!」
関口 千鶴
大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon
大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon
松田 妙子
NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事。1998年、自身の子育て中に赤ちゃんサロンを開催したのをきっかけに、2004年にNPO法人「せたがや子育てネット」を設立。 以後世田谷区を中心に子育て支援活動を行い、その活動は全国に及び、現在は、子育てひろばの全国組織「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」の理事も務める。せたがや子育てネットが主宰する「ぶりっじ@roka」は、子育てひろばのモデルケースとして全国から多くの視察者が訪れている。 ●NPO法人せたがや子育てネット
NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事。1998年、自身の子育て中に赤ちゃんサロンを開催したのをきっかけに、2004年にNPO法人「せたがや子育てネット」を設立。 以後世田谷区を中心に子育て支援活動を行い、その活動は全国に及び、現在は、子育てひろばの全国組織「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」の理事も務める。せたがや子育てネットが主宰する「ぶりっじ@roka」は、子育てひろばのモデルケースとして全国から多くの視察者が訪れている。 ●NPO法人せたがや子育てネット