なぜ小学校低学年でもできた? 名古屋発「自由進度学習」の具体的実践法とは

【小学校教育2.0】名古屋市立矢田小学校の挑戦#3「低学年の自由進度学習」

自由進度学習では、友だちと話し合って学習することも当たり前です。  写真提供 矢田小学校

「自分で考え、人と学び合い、わくわくしながら進めよう!」というテーマを掲げ、低学年からプロジェクト型の学習を実践している名古屋市立矢田小学校。

1~2年生というと、小学校に入ってまだ間もなく頼りない印象がありますが、子どもたちは自分で計画を立て、周りの友だちと助け合いながら、いきいきとプロジェクト型学習に取り組んでいます(詳細は#1#2を参照)。

矢田小学校ではこの他にも、子どもたちが楽しみながら、確実に学ぶ力を身につけられるよう、さまざまなアプローチを行っています。

その一つが、「(単元内)自由進度学習」です。低学年でも教科の一部に自由進度学習を取り入れることによって、子どもたちは日々の学習により意欲的に向き合うようになりました。

その具体的な実践と成果、子どもたちや先生の変化についてうかがいます。
※全3回の第3回(#1#2を読む)

自由進度学習は低学年にも有効

矢田小学校では、学校全体で単元内自由進度学習に取り組んでいますが、導入する時期や教科、方法などは、クラスによって異なります。

子どもたちの様子を見ながら担任の先生が判断し、臨機応変に実践しています。

2022年度、2年生の担任である中川大輔先生は、年度当初から算数の授業で自由進度学習を取り入れ、年間を通して実践してきました(その他の教科でも一部の単元で実施)。

過去には、高学年のクラスで自由進度学習を行った経験もありますが、その効果は、高学年だけでなく、低学年の子どもたちにも有効だと話します。

「自由進度学習は、学年を問わず、子どもの学習への意欲を大きく高めると実感しています。

『自分で決めて、自分のペースで学習する』というサイクルを繰り返していくと、子どもたちはのびのびと楽しそうに取り組むだけでなく、自分の学びに責任を持つようになります。

友だちと関わりながら、子どもたちは自分のペースで学習を進めます。  写真提供 矢田小学校

それまで算数が苦手であまり意欲がないように見えた子も、自由進度学習では自ら積極的に学習を進めるようになりました。

最初はうまく進められない子も出てきますが、教員が声をかけたり、子ども同士をつなげたりすることで解消できます。

今では、2年生でもそれぞれしっかりと学習のペースを見つめながら、友だちとも支え合って学習を進めていくことができています。

算数は自由進度学習が『当たり前』となっていますね」(中川先生)

自分で選び、決めることがモチベーションアップに!

中川先生の算数の授業では、冒頭に10分程度ポイントなどを説明する時間を設け、その後は子どもたちが自分のペースで学習を進めていきます。授業の最後には毎回振り返りをして、計画を見直すというサイクルです。

単元の開始時に、学ぶ内容や教科書の該当ページ、時間数など、全体像が把握できるプリントを配布。

自由進度学習で使用しているプリント(算数)①  写真提供 矢田小学校
自由進度学習で使用しているプリント(算数)②  写真提供 矢田小学校

子どもたちはそれを見ながら、教科書などを活用して学習を進め、早く終わればドリルやプリント、AIドリルなどの教材からやりたいものを選択して取り組みます。

「『自分で選ぶ』ことは、モチベーションを持って学習する上ですごく重要だと、ことあるごとに実感しています。教材を選べるだけで、子どもたちの学習に関わる姿勢は大きく変わりました。

また、自由進度学習の授業では、友だちと一緒に学んでも一人で学んでもOKということにしていますので、自然と友だちとの関わりも増えていきます。

それがより、子どもたちの学びへのモチベーションアップにつながっていると感じます」(中川先生)

友だちと一緒に学ぶのも自然なことです。  写真提供 矢田小学校
話し合うことで新しいアイデアが浮かぶこともあります(国語での様子)。  写真提供 矢田小学校

自分のペースで学習を進められる安心感。友だちと一緒に学ぶ楽しさ。こうした心地よさを感じながら学習できる環境が、子どもたちの主体的な姿勢を生み出しているようです。

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