広島・小規模校「異学年探究学習」の成功事例 「イエナプラン」を参考に「主体性と学習意欲」が向上 

【小学校教育2.0】江田島市立三高小学校の挑戦#1 「探究学習が育む子どもの意欲」

体験から生まれる「生きた疑問」が探究学習のカギ

異学年探究の授業を立案した里岡靖彦先生は、「子どもたちが自分の興味や関心に合わせた内容で課題を設定できるよう、対話や体験を重視した」と話します。

「『地域を知る』というざっくりとした方向性は私たち教員で設定しましたが、具体的に何を調べていくのか、どんな課題に取り組むのかは子どもたちに委ねます。まずは子どもたちと話し合い、興味のある地域の場所について挙げてもらいました」(里岡先生)

2021年度に子どもたちから出てきたのは、三高の海、木下川、砲台山(木下川の上流にある山)の3つ。海については前年度すでに学習していて選ぶ子が少なかったため、木下川と砲台山をピックアップ。砲台山は春の遠足で訪れていたので、木下川に行ってみることにしました。

地域の自然と触れ合い、好奇心を膨らませる子どもたち。  写真提供:三高小学校

「教室のなかで話しているだけでは、“生きた疑問”はなかなか見つからないんですね。ですから本校では、『行ってみる』『子どもたちが体験する』ことを大切にしています。

実際に川に行って自然の様子を見たり、水や生き物に触ったり。そうした体験をすることで、子どもたちはより好奇心を膨らませ、あれは何かな、なぜこうなっているのかな、といった具体的な疑問が生まれます。

目を輝かせてフィールドワークに取り組む子どもたち。  写真提供:三高小学校

このような五感を通して生まれた疑問が、探究の課題設定につながっていくのです」(里岡先生)

フィールドワークで子どもたちが「もっと知りたい、調べてみたい」と感じたことを掘り下げていき、最終的に3つのテーマ(グループ)に分かれました。木下川の上流・中流を調べるチーム、木下川の下流を調べるチーム、そして砲台山について調べるチームです。

子どもたちは自分の興味のあるグループで探究学習に取り組みます。  写真提供:三高小学校

対話や体験から、子どもたちが自分自身で考えて課題を設定することで、その後の学習はとてもスムーズに進んでいくといいます。

「木下川にはどんな生き物がいるのかな?」「海と川の境目ってどこなのかな?」「砲台山は何のために作られたのかな?」など、子どもたちのなかに次々と疑問が湧き上がります。

こうした疑問を課題として調べていくことで、次のステップとなる新しいテーマ(疑問)にぶつかり、探究学習が進んでいきます。

子どもたちの「問い」は止まらない! “楽しくて仕方ない”探究学習

その後はグループでそれぞれ調査を行っていきます。

例えば、木下川の上流・中流チームは、主に蛍について調べていくことになりました。木下川には蛍はいるのか(自分たちは見たことがないけれど、本当にいるのか)、蛍はどんな生き物なのか、最初はこの2つの課題を設定し、書籍やインターネットなどを使って調べます。

そして、蛍の成長について模造紙にまとめたり、蛍の住む環境について「ホタル新聞」を作成したりして、調査結果をアウトプットしていきます。

子どもたちがまとめた蛍の成長の様子。  写真提供:三高小学校
「ホタル新聞」も作成しました。  写真提供:三高小学校

さらに、「木下川で蛍を見たことがある人はいるのか」という疑問を調べるために、子どもたちは校内でのアンケート調査を実施。その結果から、3年前に上流で見たことのある人がいたという事実や、自分たちが調べた蛍の生育環境と木下川上流の環境がよく似ている、というところまで探り当てます。

アンケート調査は、わかりやすいように表やグラフを交えて結果をまとめました。  写真提供:三高小学校
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