広島・小規模校「異学年探究学習」の成功事例 「イエナプラン」を参考に「主体性と学習意欲」が向上
【小学校教育2.0】江田島市立三高小学校の挑戦#1 「探究学習が育む子どもの意欲」
2022.10.29
学校外の方の協力を仰ぐこともあります。このときは、蛍を見たことがある地域の方にインタビューしました。すると、3年前に豪雨災害があり、それ以降蛍の姿が見られなくなった、ということがわかりました。
こうした調査を経て、新たなテーマ「3年前の豪雨災害で何が起きたのか」「木下川の上流に蛍の幼虫はいるのか」が設定されたのです。
筆者も探究学習の様子をまとめた動画を拝見しましたが、「本当に、子どもたちのなかからこんなにたくさんの疑問や、それを紐解くアイデアが生まれたの?」と驚いてしまいました。
「子どもたちから、『これをやってみたい』『あれを調べてみたい』といった意見は活発に出されます。自分たちでテーマを設定し、興味や関心を抱いたことを調べているので、前のめりに学習に参加しますし、調査やフィールドワークが楽しくて仕方ない、といった感じですね。
もちろん、疑問や問いを深めて課題解決していくために、担当教師が適宜サポートします。地域に詳しい人がいるよ、ミュージアムに行けばわかるかもしれないね、など、ヒントになることを伝えています。
しかし、私たちが『先導している』というわけではなく、『教師も子どもたちと一緒に調べながら進めていく』というのが一番しっくりくる説明かもしれません。
教師も三高の地域についてそれほど詳しいわけではないので、『教える』という立場ではなく、『共に探究していた』という表現が正しいと思います」(里岡先生)
先生たちが誘導したり指示したりすることはなく、子どもたちと同じ目線に立って「探究」を進めていることがよくわかります。
正解がないからこそ、子どもも先生も「試行錯誤」が大切
1年間の学習の締めくくりには、各グループが探究した内容を発表し合います。調べた内容、分かったこと、感想などを自分たちの言葉で資料にまとめて貼り出し、それらを子どもたちが説明。お互いに学んだことを共有していきます。
子どもたちと先生が共に探究して「自分たちなりの問いと答え」にたどりつき、地域の魅力を知ることができた異学年探究。結果的には大きな成果を生みましたが、授業を行う際、進め方や方向性などに不安はなかったのでしょうか。
「初めての取り組みだったので、難しい面はたくさんありました。でも、学習について『絶対にここまではやるべき』『しっかり(見栄えよく)まとめなくては』という考えはありませんでした。
それぞれの子どもやグループに合った学び方や進め方があり、それらを経験的に学べればいいかな、というぐらいの気持ちで授業を行っていましたね。
探究学習を続けていくうちに、最初は3年生だった子どもが4年生、5年生と上級生になっていき、その体験や実践方法を下級生に伝えていけるようになる。そんな経験が子どもたちのなかに積み重なってくれれば十分だと考えていました」(里岡先生)