広島・小規模校「異学年探究学習」の成功事例 「イエナプラン」を参考に「主体性と学習意欲」が向上 

【小学校教育2.0】江田島市立三高小学校の挑戦#1 「探究学習が育む子どもの意欲」

子どもたちが作成した「ホタル新聞」。  写真提供:三高小学校
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子どもたちが社会に出る10~15年後は、これまでのように「決まった幸せのかたち」がない時代。そんな世界を生き抜くために、義務教育でも「考える力」や「問題解決能力」を身につけてほしいと考える親が増えています。

新学習指導要領でも、これらの力を育む「主体的・対話的で深い学び」「探究的な学び」が謳われるようになり、「探究学習」が注目を集めています。

しかし、正解や決まったシナリオがないため、先生方の準備の負担が大きく、取り組みが難しい現状があります。

そんななか、広島県江田島市立三高小学校では、数年前から新たな授業方法を取り入れ、「探究学習」を実践してきました。その結果、子どもたちの主体性がぐんぐん伸び、自ら考え学びを進める姿が至るところで見られるようになりました。

参考にしたのは、ドイツ生まれオランダ育ちと称される「イエナプラン」。単にその手法を真似たのではなく、三高小学校の実態や子どもの様子に合わせて、「考え方」のエッセンスを取り入れてきました。

三高小学校の具体的な取り組みと成果を、連載3回を通してご紹介します。

第1回は、異学年での探究的な学習の実践と、子どもたちの変化についてうかがいました。

イエナプランを取り入れた授業で子どもたちが超意欲的に!

広島県江田島市立三高小学校が学校づくりに「イエナプラン」※を取り入れはじめたのは、2年前(2020年)。イエナプランは、子ども一人ひとりの個性を尊重しながら、自立と共生を学んでいく教育です。

※「イエナプラン」とは
オランダで広く普及しているオルタナティブ教育で、200校以上の小学校で実践されている。文部科学省の「新しい時代の学校施設検討部会」などでも話題に出るなど、日本国内でも注目が集まっている。

2019年、日本初のイエナプラン校である「大日向小学校」(長野県佐久穂町)が開校、2022年には公立で初となる「福山市立常石ともに学園」が実践を開始。その他の自治体でも、イエナプランを参考に教育改革を進める動きが見られている。

イエナプランでは、1~3年生、4~6年生の異学年グループを基本とし、教科ごとの時間割りではなく「ブロックアワー」(自立学習)「ワールドオリエンテーション」(協働学習)を中心に学びを行う。

また、「サークル対話」と呼ばれる円座での話し合いや、遊びも重視している。

ブロックアワー子どもたちが自分たちで1週間(場合によっては1ヵ月以上)の学習計画を立て、各教科の基礎的な内容を自立的に学習する。

ワールドオリエンテーション:グループで協働して、教科横断的な探究学習を中心に学びを行う。

小規模ながらも特色ある学校作りを目指していた三高小学校は、自校に合った「主体的な学び」が展開できないかを検討していました。広島県の「個別最適な学びに関する実証研究事業」※を活用しながら、教職員で対話を重ねて方向性を模索しているとき、イエナプランに注目が集まりました。

広島県・個別最適な学びに関する実証研究事業とは
広島県が2020年度からの2年間、県内4地域において、全ての子どもたちの「主体的な学び」の実現に向けて取り組んできた実証事業。

公立校でのイエナプラン実践といえば、同じ広島県内で2022年度に開校した福山市立常石ともに学園が有名です。

三高小学校は、常石ともに学園のように、全ての教育活動をイエナプランに沿って行っているわけではありませんが、その考え方を取り入れて、授業を展開しています。

異学年の子どもたちが一緒に探究学習に取り組む様子。  写真提供:三高小学校

例えば、3~6年生が学年の垣根を超えて一緒に探究学習に取り組む授業(以下「異学年探究」)。総合的な学習の時間を活用していますが、イエナプランの「ワールドオリエンテーション」を参考にした実践です。

みんなで意見を出し合って学習を進めます。  写真提供:三高小学校

具体的には、どのように授業を行っているのでしょうか。

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