「子どもが文字を読む量」はスマホやタブレットで激増なのに「表現力や理解力が低下」する理由 専門家が対策を解説
文章の専門家・山口拓朗さんに聞く 小学校低学年の子の語彙力と表現力を上げるための親の取り組み #1 作文を書くことで得られる効果
2023.12.07
作文を書くことで養われる力
─────確かに、作文がスラスラ書ける人は、本をたくさん読んでいるイメージがあります。でも本を読むのが好きな子は、放っておいてもいくらでも本を読みますが、好きでない子に無理やり本を読ませるのは難しい気がします……。
山口さん:そこで作文です。「作文」というと勉強っぽいですが、はじめは日記でも手紙でも、メモでも走り書きでも、「書く」ことであればOKです。
「書く」ことは、アウトプットすることですが、実はそこにはインプットの要素も含まれます。
例えば、「楽しかった」ばかりの文章ではつまらない、と感じたときに、「楽しかった」に代わる言葉を探し始めます。
パッと思いつくこともあるかもしれませんが、思いつかなければ、持っている本や辞書から見つけてくる。あるいは、親に聞くという方法もあります。
いずれにしても、「他の言葉で表現できないかな?」と考えることによって、その子の語彙力が伸びていくのです。
─────子どもに作文に取り組んでもらうのは簡単ではないと思います。何かいい方法はありますか?
山口さん:小さな子どもさんには、「インタビュー」がおすすめです。インタビューといっても、マイクを持って録画・録音するような「かしこまったもの」ではありません。会話の延長として親が質問していくスタイルです。
スラスラ書けないお子さんの場合、自分の中に言葉を持っているけど、すぐに取り出せない、うまく表現できないケースが少なくありません。
そこで親の登場です。親が質問すると、子どもは一所懸命に考えて言葉にしようとします。自分ひとりでは思いつかなかった言葉が出てくることもよくあります。
ぴったりな表現やありきたりの言葉しか出てこないときには、細かなニュアンスを確認する質問をしつつ、親のほうから「そんなときは◯◯という言葉もあるよ」と、さり気なく言葉を教えてあげることもできます。
親の質問に答えようと「考えること」によって、語彙力や文章力が自然と鍛えられていきます。
頭の中から言葉を取り出すときには、どうしても質問が必要です。大人は自問自答ができますが、子どもは「自問自答しましょう」と言われてもピンと来ません。
質問は「引き出しチケット」のようなものです。親の質問によって、子どもは頭の中から言葉を取り出すことができるのです。
「知っている言葉」を「使える言葉」にしていくことがインタビューの役割です。