小学生の「仲良くする技術」が「経営の第一歩」 話題の経営学者が「6歳からの経営学」で説く「子どもの生き抜く力」

経営学者・岩尾俊兵先生に聞く、「6歳から学べる経営」 #1 みんなと仲良くする技術が経営学につながる

慶應義塾大学商学部准教授:岩尾 俊兵

慶應義塾大学商学部准教授の岩尾俊兵先生。陸上自衛隊に入隊したことがある、異色の経歴をお持ちです。

「経営学」と聞くと、お金が動くビジネスを想像する人がほとんどかもしれません。

しかし、「『経営』は必ずしもお金にまつわるものではないんですよ」と話すのは、経営学者であり、慶應義塾大学商学部准教授の岩尾俊兵先生。

岩尾先生は、著書『13歳からの経営の教科書』(KADOKAWA)で、物語というスタイルをとりながら、子どもたちへ楽しく「ビジネス」と「生き抜く力」を、経営を通して伝えています。

そこで今回は特別に少し年齢を下げて「6歳から学べる経営」を教えてもらいました。

1回目は、小学生は「みんなと仲良くする技術」が経営につながることについてです。なんと小学生の経営の第一歩は、なんと「お友だち」から!? そのワケとは?


(全4回の1回目)

岩尾俊兵(いわお・しゅんぺい)
慶應義塾大学商学部准教授。平成元年、佐賀県生まれ。父の事業失敗のあおりを受け高校進学を断念。中卒で単身上京。陸上自衛隊、肉体労働等に従事した後、高卒認定試験(旧・大検)を経て、慶應義塾大学商学部卒業。東京大学大学院経済学研究科マネジメント専攻博士課程修了、東京大学博士(経営学)を史上初めて授与される。

人を幸せにすることが「経営」の目的

──「経営=お金儲け」と考えてしまいますが、そもそも「経営」とは何でしょうか。経営は、お金の話だけではないということですか?

岩尾俊兵先生(以下、岩尾先生):そのとおりです。そもそも経営の目的は、「人を幸せにする」ということ。だから、お金を稼ぐことは、そのために必要な一つの活動にすぎません。

例えば会社の経営なら、お金を稼がなくてはいけないかもしれませんが、NPOの経営の目的は違いますよね。「目の前の人を幸せにすること」。そして「その活動に周りのみんなを巻き込んでいくこと」。これこそが経営です。

そのためには、誰もが応援したくなる目標を立てることが必須になってきます。目標がなければ、会社なら社員や株主も、消費者もついてこないですよね。「みんなが応援したくなるものを見つける」ことが、とても大事なんです。

今回は、「6歳からの経営学」という視点でお話しますが、小学生時代はまず「みんなと仲良くする技術」が経営のカギとなります。

「自分も友だちも我慢せずにやりたい方法を考えることが経営へと結びついていきます」(岩尾先生)。

みんなと仲良く=対立解消の技術

──みんなと仲良くする技術が、どのように経営と結びついていくのでしょうか。

岩尾先生:「みんなと仲良くしようね」と子どもに言うと、自分だけが我慢して周りと仲良くしようとする子どももいます。でもそうではなく、自分も我慢せずにやりたいことをしつつ、相手の要望も実現させてあげるという道が必ずあります。その方法を、きちんと筋道を立てて考え出すということですね。この「みんなと仲良くする技術」は、大人の言葉で言い換えれば「対立解消の技術」です。

子どもがもっと大きくなって、部活や仕事で今よりもっと大きなことをやろうとしたとき、そこには観客を魅了する試合をするとか、世の中に必要なものを売るとか、誰もが応援したくなるような目的があり、人の力を借りなくてはいけなくなる場合があります。そして、多くの人を巻き込んでいけばいくほど、必ず人間同士の対立が起きるのですが、それを一つ一つ解決していくのが経営の定義なんです。

ご家庭によっては、たまたま、商売人の家庭で小さいころから家に大人の出入りが激しく、大人のやりとりを見ながら対立解消の技術を自然に習得しているお子さんもいるかもしれません。

しかし、「たまたま」や「なんとなく」ではなく、必須科目として誰もが学べるようにすべきではないかと僕は思うんです。「技術」なので、方法どおりにやれば、誰でも学ぶことができるのだから。

そして今回、なぜ6歳からといいますと、この時期に日本の子どもたちは小学校に入り、クラスメイトができるので、他者の存在を強く意識するようになるからです。不幸なことに、この時期から、対立解消の失敗例としての「いじめ」も発生します。「自分と現在だけで閉じていた世界」が、「みんなと未来を切り開いていく世界」へと目覚めていくときでもあります。

早い時期に「対立解消の技術」を身につけておくと、いじめたりいじめられたりしたときに助けになるかもしれません。また、この先、友人関係、受験や就職で悩んでも、どこかしら解決の糸口を見つけられるようになるはずです。大きく言えば、自分の人生を「経営」できるようになるのです。

「経営はお金だけではなく、学ぶことで自分の人生も経営できるようになります」(岩尾先生)

人間の寿命は伸び、社会の寿命が縮む時代がくる

──その「経営」が、これからの時代を生きる子どもたちには必須科目になるというわけですね。

岩尾先生:そうです。もうひとつ、経営学が必要になる理由として、これからの時代は「年功序列・終身雇用は終わる」のではなく、これらが復活すると私は思っています。今より人が大切になってきますから。ただ、別の側面からは、「年功序列・終身雇用は成り立たなくなる」だろう、とも思っています。

というのも、今後技術革新が進み、お客さんの需要が複雑化していきます。するとそうした社会変化に対応できない会社の寿命は短くなってきます。さらに、今の子どもたちは、医療と衛生技術の進歩によって平均的にみんな100歳まで生きるようになると言われているため、「会社の寿命は縮むけど、人間の寿命は伸びる」という、会社と人間の寿命関係の逆転化が起きます。

その結果、寿命の短くなった会社が終身雇用・年功序列をやったところで、人間の寿命が延びているので一生そこにはいられなくなってしまうんです。

こうなった場合、以下の3つを持っているかが大きなポイントになります。

1.いろいろな組織(会社)のどこに行ってもやっていく力があるか。
2.組織に属さず自分自身の力でやっていけるか。
3.入った組織の寿命を延ばせるか。


1つめと2つめは当然ながら経営の力が必要です。それだけでなく、3つめの、「組織の業績を伸ばしたいとき」にも、自分が所属している組織をよりよくしていくような経営マインドが必要になります。会社の仲間の力を借りる能力を身につけないと、組織を元気にすることはできないですよね。

だからこそ、人生100年生きるこれからの子どもたちには、特に「経営」を学んでほしいと思うのです。

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次回2回目では、具体的に6歳から「経営」を学ぶ方法を引き続き岩尾先生にお話ししていただきます。

撮影・日下部真紀
取材・文/浅妻千映子

岩尾先生の「6歳からの経営学」は全4回。
2回目を読む。
3回目を読む。
4回目を読む。
(※2回目は2023年10月21日、3回目は10月22日、4回目は10月23日公開。公開日までリンク無効)

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『13歳からの経営の教科書 「ビジネス」と「生き抜く力」を学べる青春物語』(KADOKAWA)著・岩尾俊兵
いわお しゅんぺい

岩尾 俊兵

Iwao Shumpei
慶應義塾大学商学部准教授

慶應義塾大学商学部准教授。平成元年佐賀県有田町生まれ。父の事業失敗のあおりを受け高校進学を断念。中卒で単身上京。陸上自衛隊、肉体労働等...