「子どもが文字を読む量」はスマホやタブレットで激増なのに「表現力や理解力が低下」する理由 専門家が対策を解説
文章の専門家・山口拓朗さんに聞く 小学校低学年の子の語彙力と表現力を上げるための親の取り組み #1 作文を書くことで得られる効果
2023.12.07
小学校低学年の子どもは、文字を習い、言葉を獲得していく段階です。そのため、子どもの語彙力や表現力を伸ばすには「読書」が効果的といわれています。
しかし近年は、読書離れが進み、紙の本を読まなくなった子が増えました。
その代わりに、学校ではパソコンやタブレットを使い、家でもスマートフォンを手にする機会が増えた小学生。デジタルデバイスを通して、実は文字を読む量はむしろ増えているのに、言葉で表現する力や理解力は落ちているといわれています。
それは、チャットやLINEスタンプ、絵文字の台頭で、多くを語らずとも表現できる方法が増えたことが原因です。
主語や述語が抜けた文は、受け手が補って考えなければならないケースがほとんどです。文脈を読み取る力は、より高度さを求められているにもかかわらず、理解力が低下をたどると、やがてコミュニケーションのつまずきを起こします。
適当に使った言葉で簡単に人を傷つけることもあれば、微妙なニュアンスが伝わらず、誤解を招くこともあります。相手の言葉を正しく理解できないことが、人間関係をより複雑にしてしまうのです。
言葉を習得していく段階の子どもが「コトバの力」を育むために、家庭でどのように取り組めばいいのでしょうか。文章の専門家・山口拓朗さんにお話を伺いました(全3回の1回目)。
◆山口拓朗(やまぐち・たくろう)
文章の専門家。伝える力「話す・書く」研究所所長、山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、ライター&インタビュアーとして独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴がある。現在は執筆や講演を通じて実践的なノウハウを提供。『魔法の質問で「コトバの力」を伸ばそう 親子で取り組む作文教室』(日本能率協会マネジメントセンター)のほか、『「うまく言葉にできない」がなくなる言語化大全』(ダイヤモンド社)にある言語化トレーニング法が話題になっている。
なぜ作文が子どもの言語能力を伸ばすのにいいのか?
山口拓朗さん(以下、山口さん):語彙力を伸ばす方法として真っ先に浮かぶのが読書です。
本を読むという行為はインプットです。本には、自分の生活圏以外のたくさんのことが載っていて、普通に生活していたら知りえない、情報や言葉に触れることができます。
本を読むと、宇宙飛行士について知ることもできますし、動物園の飼育員さんの気持ちを味わうこともできます。
本を読んで、いろいろな言葉や表現方法に触れることで、その子の語彙力はぐんぐん伸びていきます。言葉をスポンジのように吸収する小学生時代だからこそ、読書を通じて、さまざまな言葉や表現に触れることが重要なのです。
一方で、作文を書くことは、アウトプットです。自分の中から言葉を絞り出して、表現していく作業です。当然、語彙力が低い人はもたついて書けないし、高い人はスラスラ書けます。
作文を書くような、アウトプットをするには「中身」が必要です。
中身の「素材」は、料理でいう「材料」です。冷蔵庫の中に卵が一つしかなかったら、大した料理が作れないように、材料がなければ、バラエティーに富んだ料理(=表現力が豊かな作文)を作ることができません。