「子どもが文字を読む量」はスマホやタブレットで激増なのに「表現力や理解力が低下」する理由 専門家が対策を解説

文章の専門家・山口拓朗さんに聞く 小学校低学年の子の語彙力と表現力を上げるための親の取り組み #1 作文を書くことで得られる効果

インタビューするときに親が気をつけること

─────インタビューする親の語彙力も試されそうですね。どんなことに気をつけて、親は質問したらいいでしょうか?

山口さん:当然ですが、楽しくないインタビューは子どもも受けたくありません。

親がやりがちなのは尋問や詰問です。まるで取り調べのように「答えなさい」と強制されたら、子どもは答えるのが嫌になってしまいます。

親都合の答えを言わせようと、誘導尋問しないことが重要です。強制でも誘導でもなく、「自由に答えていいんだ!」と感じたとき、それはその子にとって楽しいインタビューです。

最初はざっくりと大きな質問をしていき、キラリと光る言葉(その子らしい言葉)が出てきたら、そのことについて深掘りしていきましょう。

親が興味を持って話を聞いてあげると、子どもも上機嫌で答えてくれるはずです。そのやりとりの中で、子ども自身が「(自分は)こんなことを思っていたんだ」と大きな気づきを得ることも珍しくありません。

なお、親によって添削された“妙に整った文章”が、おもしろい作文になることはほとんどありません。それに、親による過剰な「赤ペン先生」が、その子の自信を奪ってしまうリスクを秘めていることも知っておいたほうがいいでしょう。

インタビューをする親の役割は、子どもの強みや好きなこと、感情が強く動くほうに、さりげなく導くことです。

インタビューする機会が増えると、子どものことがよくわかるようになります。子どもが好きなこと、興味をもっていること、性格や特性、感性、感情、意見……など、それまで見えていなかった部分が見えてきます。

繰り返しになりますが、インタビューをするときの親の役割は「子どもを強制しない」こと、そこに尽きます。

─────インタビューはコミュニケーションの練習にもなりますね。

山口さん:インタビューは、親の「受け入れる姿勢」を試される場でもあります。子どもの答えには、マル・バツをつけず、「へえ、あなたはそう思っているのね」と、そのすべてをポジティブに受け入れましょう。

せっかく答えた内容を否定されてしまうと、子どもは「どうせ自分の意見はダメなんだ」と落ち込み、やがて本心を言わなくなることもあります。「どうせママ/パパに直されるから……」と考えるようになるからです。

インタビューは、子どもが頭の引き出しの中にしまっているものを引き出す、サポート作業にすぎません。親は自分がガイド役であることを心得ておきましょう。

「こんちきしょう」や「ムカつく」など、親がもみ消したくなるような乱暴な言葉も、あえて書くことで作文がいきいきすることもよくあります。

「そんな言葉は使わないほうがいい」と直してしまうと、子どもは自分を否定されたと思ってしまい、「自分の考えは書いちゃダメなんだ」「自分は文章が下手なんだ」と劣等感を抱く子もいます。

反対に、小さなころに「自分を自由に表現していいんだ」と思えた子は、作文を書くことがますます楽しくなっていきます。

もう一つ大事なことは、どんな種類のものであれ、親が子どもの気持ちを受け止め、そして受け入れることです。

親が子どものありのままを受容することによって、子どもは伸び伸びと自己肯定感の高い子に育ちます。

特に小学校低学年の間は、語彙力や表現力を高めて、アウトプットすることや自己表現することへの自信を深めていく時期です。

親が変に先回りをする必要はありません。子どもが「もっとインタビューを受けたい!」「もっと話したい!」と思う環境づくりに注力することが大事です。

─────インタビューを通して、親子ともども考える力がつくほか、コミュニケーションも円滑になり、親子の絆も強くなりそうですね。


次回は「親子インタビュー」についてもう少し詳しくお聞きします。

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山口拓朗(やまぐち・たくろう)
文章の専門家。伝える力「話す・書く」研究所所長、山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのち、ライター&インタビュアーとして独立。26年間で3600件以上の取材・執筆歴がある。現在は執筆や講演を通じて実践的なノウハウを提供。『魔法の質問で「コトバの力」を伸ばそう 親子で取り組む作文教室』(日本能率協会マネジメントセンター)のほか、『「うまく言葉にできない」がなくなる言語化大全』(ダイヤモンド社)にある言語化トレーニング法が話題になっている。

取材・文/石牟礼ともよ

文章の専門家・山口拓朗さんに聞く、小学校低学年の子の、語彙力と表現力を上げるための親の取り組み「作文のススメ」の連載は、全3回。
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