「スマホを3時間以上使う子ども」成績は平均以下? スマホ利用が学力に与える悪影響を脳科学者が解説

子育て中の家庭が知っておきたい「スマホ利用のリスクとメリット」 #1 ~東北大学助教・榊󠄀浩平先生に聞く、スマホ利用が成績に与える影響編~

東北大学 応用認知神経科学センター助教:榊󠄀 浩平

脳は使わなければ衰える

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──榊󠄀先生のご著書『スマホはどこまで脳を壊すか』を読ませていただきましたが、タイトルがショッキングでした。今は子どもも毎日スマホを利用するような時代ですが、子どもの脳も壊れるのでしょうか?

榊󠄀浩平先生(以下、榊󠄀先生):「脳」とひと言で言っても、場所ごとにさまざまな機能を担っています。なかでも、今回は脳の前側「前頭葉」の一番前にある「前頭前野」という場所に関して主にお話をしていきますね。

前頭前野は、「考える」「理解する」「覚える」といった知的な活動の他、「言葉を話す」「感情をコントロールする」「相手の気持ちを推し量る」といったコミュニケーションにかかわる働きを担っています。まさに人間を“人間たらしめている”機能が詰まっている場所です。

前頭前野は、脳の中でも比較的ゆっくり発達するので、小学校高学年~高校生、いわゆる思春期の過ごし方が大きく影響すると言われています。詳しくは2回目で説明しますが、脳は筋肉と同じで、使えば使うほど育つし、使わなければ衰えます。

例えば、スマホなどを見ている間は、前頭前野が活動をサボってしまうため、長時間利用することで“筋力”が落ち、スマホを見ていない時間も十分に“運動”ができなくなると考えられるからです。また、海外の研究では、オンラインへの依存度が高くなるほど、前頭前野の働きが衰えると明らかになっています。

スマホの利用時間が長いほど成績が低くなる

──子どものスマホ利用時間は、学力に影響するということでしょうか?

榊󠄀先生:そうなんです。そこで私の研究グループでは、子どもたちの学力への影響を研究するため、スマホなどのデジタル機器(スマホ、タブレット、音楽プレーヤー、ゲーム機など)の利用時間と学力の関係を調べる調査を行いました。

下のグラフは、2017年に行った、小学校5年生~中学校3年生の児童・生徒4万1084人を対象とした調査結果です。

スマホ等の使用時間と学力の関係(2017年小学校5年生~中学校3年生の児童・生徒4万1084人対象。成績:4科目〔国語、算数・数学、理科、社会〕の偏差値)。  資料提供:榊󠄀浩平

榊󠄀先生:このグラフを見るとおわかりのように、スマホ等の利用時間が長くなるほど、テストの成績(偏差値)が低い傾向があることがわかります。

──「持っていない」「全く使わない」子どもより、「1時間未満」の子どもの成績が良いのが面白いですね。

榊󠄀先生:そうですね、「1時間未満」のグループには、スマホ等を使いすぎないように、コントロールできる自己管理能力の高い子どもが一定数含まれているのではないかと考えられます。そういう子は、勉強にも自律的に向き合えるのかもしれません。

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