「スマホを3時間以上使う子ども」成績は平均以下? スマホ利用が学力に与える悪影響を脳科学者が解説

子育て中の家庭が知っておきたい「スマホ利用のリスクとメリット」 #1 ~東北大学助教・榊󠄀浩平先生に聞く、スマホ利用が成績に与える影響編~

東北大学 応用認知神経科学センター助教:榊󠄀 浩平

スマホを手放すだけで学習効果がアップ!

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󠄀榊󠄀先生:次のグラフは、スマホなどを利用した“ながら勉強”と学力の関係を調べた結果です。

ながら勉強と学力の関係を示したグラフ(2017年度、スマホを持っている小学校5年生~中学校3年生2万6081人が対象)。  資料提供:榊󠄀浩平

榊󠄀先生:このグラフからわかるのは、スマホをいじりつつ2時間、3時間と“ながら勉強”をしている子どもと、30分だけ集中して勉強する子どもの学力がほとんど変わらないということです。

──“ながら勉強”はタイパとは相反するわけですね。

榊󠄀先生:3時間も机に向かっているのに成績が伸びなければ、「どうせやっても無駄」と諦めてしまいますよね。でも本当は、その子の能力に問題があるのではなく、“ながら勉強”に問題があるのかもしれません。勉強中にスマホなどを手放すだけで、学習効果が高まるということもこのグラフは示しているのです。

ただ気を付けなければならないのが、実際にスマホなどをいじらなくても“集中力は削がれてしまう”ということ。

例えば、SNSや好きなアーティストの新着情報の通知の音が鳴るだけで、スマホが気になってしまいますよね。通知の音にいちいち反応してしまうのは、脳の条件反射です。SNSで人と繫がったり、新しい情報を得られたりするのは、脳にとって「快楽」であり「報酬」。スマホの通知は、それらに直結しているので、気になって仕方がないんです。

さらには、通知音が鳴らなくても、スマホなどが視界に入っている、または体に触れているだけで注意が向けられてしまうことが海外の研究でわかっています。

お子さんが勉強をする場合は、勉強をする部屋にはスマホを持ち込まない、あるいは通知をオフにして見えないところに置いておくようにするなど、家庭内で相談したうえで、保護者の方が管理するのもいいかもしれません。

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今回の榊󠄀先生のお話で、スマホの利用時間と成績には想像以上に密接な関係があることがわかりました。次回2回目では、このような結果が表れる理由について、引き続き榊󠄀先生に教えていただきます。

取材・文/北 京子

スマホと学力に関する連載は全4回。
2回目3回目4回目を読む。

「スマホはどこまで脳を壊すか 」著・榊󠄀浩平(朝日新書)
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さかき こうへい

榊󠄀 浩平

Kohei Sakaki
東北大学 応用認知神経科学センター助教授

1989年千葉県生まれ。東北大学 加齢医学研究所 応用認知神経科学センター助教。医学博士。 認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させるなど、人間の「生きる力」を育てる脳科学的な教育法の研究、開発を行う。 主な著書に『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)、共著に『最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる』(青春出版社)。

1989年千葉県生まれ。東北大学 加齢医学研究所 応用認知神経科学センター助教。医学博士。 認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させるなど、人間の「生きる力」を育てる脳科学的な教育法の研究、開発を行う。 主な著書に『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)、共著に『最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる』(青春出版社)。

きた きょうこ

北 京子

Kyouko Kita
フリーライター

フリーライター。 藤沢市在住。食の月刊誌の編集者を経て独立。食を中心に、SDGs、防災、農業などに関する取材・執筆を行う。 3児の母。自然の中で遊ぶこと、体を動かすこと、愛犬とたわむれることが好き。

フリーライター。 藤沢市在住。食の月刊誌の編集者を経て独立。食を中心に、SDGs、防災、農業などに関する取材・執筆を行う。 3児の母。自然の中で遊ぶこと、体を動かすこと、愛犬とたわむれることが好き。