【中学入試に出る】国語入試に出題される作品の特徴5選!〔中学受験の専門家が解説〕

夏休みに読んで差をつけろ! おさえておくべき本を首都圏中学受験塾・教室長が回答

akira

写真:アフロ

首都圏中学受験塾の教室長をしています。akiraと申します。

私の教室では保護者会でおすすめの本を毎回紹介しています。これが意外に好評で生徒たちも楽しみにしてくれています。すすめた本は全部読んでいますという声もよくいただきます。親御さんも興味を持っていただき親子で読んでいるご家庭もいらっしゃいます。読書が苦手な初心者の方から図書館にいるのが幸せというマニアまで満足いただける本を紹介します。今回は、2025年入試に出題されるかもしれないという視点でも選んでいます。

気になる本があれば手に取って読んでみてください。そのときには読んでみたいという自分の感覚を大切にしましょう。

今年(2024年)の入試でも昨年12月に私のおすすめを聞いて冬休みに読んでくれた子もいました。(SNSで年末に例年おすすめ本を記事にしています)実際に自分で考えて行動することが大切です。

活字に触れる時間が少なければ国語の成績はなかなかあがらないものです。初歩の段階では塾のテキストの読み込みでもかまいませんが、読書は一生の財産です。読書をすること自体がとても良い影響があるので塾のテキストを読むにとどめるのではなく、読書自体を楽しみ、ぜひ習慣化してほしいのです。寝る前の10分でもかまいません。

最近の本は章ごとに分かれている短編集が人気です。読書が苦手な子には章の終わりに付箋をつけてあげて「ここまでまずは読んでごらん」というアプローチをおすすめします。

今回は、「入試に出題される作品の特徴」5選を解説します。

①主人公は悩み多き子どもたち

“ぼくが思っているほど、人は気になんかしないってことがわかった。”(『ぼくの色、見つけた!』p.79より)

中学受験の世界の内側にいると当たり前なことですが、改めて強調しておきます。入試問題のほとんどは受験生と同世代の子どもたちの心の成長が描かれています

最初に紹介するのは、色覚障がいが発覚し苦しむ主人公の物語『ぼくの色、見つけた!』です。登場人物たちが自分の弱みに向き合っていくお話です。

『ぼくの色、見つけた!』作/志津栄子、絵/末山りん、講談社

色覚障がいと聞くと一見感情移入しづらそうですが、普通の小学生たちの話なので小学生の皆さんには読みやすい本だと思います。

主人公は、色覚障がいという共感されにくい悩みを、どのように克服していくのか考えながら読んでみてください。今、人には言えない悩みがある人も勇気がもらえます。そして家族の大切さに気づくでしょう。

この作品は、第24回ちゅうでん児童文学賞で大賞をとった『雪の日にライオンを見に行く』(桐朋、横浜共立で出題)の志津栄子さんの最新作です。前作のファンの方にもおすすめします。

『雪の日にライオンを見に行く』作/志津栄子、絵/くまおり純、講談社

②新作からの出題(2023年8月~2024年7月)

多くの中学校の先生は夏休みに入試問題を作成します。ですから7月発売までの作品から出題されることが多いです。じっくり読んで検討するとなると4月、5月発売の本が選ばれやすいようです。実際に書店に足を運んでもよいですし、模試で出題された本の出版時期を調べるだけでもよいでしょう。今回いくつかの本を紹介しますが、基本的には最近出版された本から選んでいます。

次に紹介するのは、2023年10月26日発刊の『ルール!』です。こちらは校則がテーマの小説です。

『ルール!』著/工藤純子、講談社

最近話題になったのがブラジル出身マルケス校長の西武文理中の「アクセサリ、ピアスOK」という自由な校則でした。体育の時間は安全面を考慮してはずすそうですが、世の中が多様性を認めるようにルールが変わってきているので校則も同様に変わっていくのでしょう。スマホ使用や頭髪の校則など、学生なら一度は不満に思ったことがある、身近な、感情移入しやすいテーマです。工藤純子さんは『あした、また学校で』(駒場東邦、関東学院で出題)という作品で中学入試では、おなじみの作者です。

③表紙が魅力的

この切り口で中学受験本を語る人はめずらしいかもしれません。『きみの話を聞かせてくれよ』や『成瀬は天下を取りにいく』、『ハーベスト』など私がジャケ買い(表紙買い)した本は多いです。

YouTubeではサムネイルが命と言われますが、本にとっては表紙が命です。入試に出題される前に学校の先生の手にとってもらう必要があります。私個人の感覚だとかわいい表紙、おしゃれな表紙、インパクトのある主人公が表紙の本を手に取ることが多いです。

2025年に出題されそうなジャケ買い商品は『彼女たちのバックヤード』です。かわいいイラストの表紙ですよね。手触りも独特のザラザラした感じです。ぜひ書店で手に取ってたしかめてみてください。

『彼女たちのバックヤード』著/森埜こみち、講談社

“「しんどいときってさ、言いたくもないことを言ったり、したくないことをしちゃったりすんの。あたし経験者だから、そこんとこは、よくわかる」”(『彼女たちのバックヤード』千秋 p.70より)

3人の中学生(詩織、璃子、千秋)が何とも不思議な空間(レゴの塔)でおたがい別の方向を見ている表紙に魅力を感じてしまいます。3人ともめちゃくちゃ悩んでいます。章ごとに主人公が変わる短編集というのも入試では狙われやすい要素です。ネットフリックス、モラハラ、ヘアドネーション、ライン、スタンプなど今どきの言葉も出てきます。女の子が主人公の本ですが、ぜひ男子にも手に取ってほしいです。自分とは異なる性別の主人公の本を読むと経験が広がります。入試頻出のちゅうでん児童文学賞を受賞した作家の作品でもあります。

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