秋の味覚といえば……
干した椎茸に含まれるグアニル酸は、昆布のグルタミン酸や、かつお節のイノシン酸にならぶ、三大うまみ成分のひとつ。生の椎茸にはほとんどないというグアニル酸は、干したからこそ生まれる、うまみなのです。
若い世代の椎茸ばなれ
その大分県の椎茸農業共同組合も、特に若い世代の椎茸ばなれを深刻に受け止め、もっと家庭で干し椎茸に親しんでほしい! と、目をつけたのが絵本『ほしじいたけ ほしばあたけ』でした。
しいたけ王国・大分県では『ほしじいたけ ほしばあたけ』は、みんなが知ってるポピュラーな絵本なのです。
水戻しってなに? の衝撃
『ほしじいたけ ほしばあたけ』は、その水戻しがお話しの大きなカギになっているので、そのことを知らないと面白さも半減してしまうというわけです。
「なので、読み聞かせをする時には、できるだけ干し椎茸を持参して、水戻しをする実験をしてみせてから、読むようにしています」と石川さん。
そういう経験もあり、絵本のカバーの袖には毎回、生の椎茸の絵と、干し椎茸の絵を添えて「水につけてやわらかくして、りょうりにつかいます」と、さりげなく水戻しに触れています。
もっと家庭に椎茸を!
水嶋さんいわく、「石川先生の描く椎茸は、本物の干し椎茸の質感がすごくよく出ています。マニアックな話ですが、ほしじいたけは『香信』とよばれる、傘がひらいた状態の椎茸で、ほしばあたけは『どんこ』とよばれる傘が肉厚なタイプ。
ほしじいたけの方は、特に傘のフチの部分が擦れて白っぽくなったところや、傘の反りまで本格的。椎茸への愛情を感じます!」と、リアル干し椎茸の本家本元から、その絵の精緻さにお墨付き。
新型コロナ対策としても、ヨーロッパで大人気
椎茸には、免疫活性効果が高いビタミンDが豊富に含まれることもあり、とくに2020年は、新型コロナの影響もあってか、干し椎茸の海外への出荷数が伸びたということです。
「しいたけ農業は、無農薬・有機栽培で、環境に優しいSDGsな産業でもあります。作る人も、食べる人も増えていってほしいので、こうやって、きのこの世界を楽しく絵本で描いてもらえるのは嬉しい」と、水嶋さんは石川さんにエールを送ります。
3年ぶり、待望のシリーズ最新刊!
そのコラボから数ヵ月。3年ぶりの新作『ほしじいたけ ほしばあたけ おにたいじはいちだいじ?』が刊行されました。
著者の石川さんは、「くしゃくしゃに縮んだ乾燥キクラゲは、なかなか絵にしにくいきのこですが、いつか登場させたいと思っていました。ほしじいたけの宿命のライバルとするか、はたまた竹馬の友とするか……。数々の没ラフを経て、今回のような役回りとなりました」とのこと。時間をかけただけのことはある、気合が十分につまった絵本です。
きのこを特に身近に感じる季節。ぜひ絵本でも、きのこたちが繰り広げるユーモラスなお話を味わってみてはいかがでしょうか。
幼児図書編集部
絵本をつくっている編集部です。コクリコでは、新刊の紹介や作家さんのインタビュー、イベントのご案内など、たのしい情報をおとどけします! Instagram : @ehon.kodansha Twitter : @kodansha_ehon
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